異分子マンション

カナデ

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「先日は素っ気ない挨拶になってすまなかったね。ちょっとのことで急いでいたんだ」

「もしかしてデイ・トレーダーとかいうやつですか?」

「いや。これでも一応、医療従事者だよ」

「お医者さんなんですね」

「医者だったのは昔の話さ。今はあくまで医療関係……とでも言っておこうか」

「……何ですか、それ」

「素人さんに詳しく話すことはできないが、主に開発関係の権利でメシを食ってる感じだ。あとは投資でちょっとした利益を得ている」

 医療や投資に関することはよく分からないが、マンションの管理費用を出しているくらいだし、それなりに儲かっているのだろう。もちろん頭もいいはずだ。

「リツコちゃんのことは姪のユイカから聞いたよ。あの子は気難しいところもあるが優しい性格だ、仲良くしてやってくれるかい?」

「はい。あの子にもそう言われたので」

 ノブユキは無精ひげをさすりながら満足げに頷いた。
 以前シュンスケが、ノブユキに対し「排他的なオーラを感じることがある」と言っていた。しかし、今のところそんな雰囲気はない。印象としては〝人当たりのいいおじさん〟といったところだ。

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