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しおりを挟む「シュンスケが辛いのは分かるよ。でも……ごめん、あたしには気の利いたことを言えそうにない」
「気にしないで。恋愛は上手くいかなかったけど、案外すっきりしてるっていうのもまた事実というか……。自分の気持ちに正直になって、十五年越しの想いを伝えることができたからかもね」
シュンスケはニッと歯を覗かせた。
その表情は先ほどまでと違い、どこか吹っ切れたように爽やかだった。
「しっかし、優しくて大好きな子をあそこまで怯えさせちゃったことは悔しいかな。ファミリアの住人が平然と異彩を受け入れてくれることで、外での普通を忘れかけていたことに気付かされたよ」
どんなに心根が優しい人でも、やはり普通と違うものは受け入れがたいのだ。
それは仕方のないことだと何年も前に諦めがついていたはずなのに、何故か無性に心苦しく感じた。
「つまんない話に付き合ってくれてありがとね。これから心機一転、頑張るよ」
「仕事はどうするの? コンビニに戻る?」
「さっきハルと話して、コンビニには戻らないことにした。オレ……あんなことがあっても人が好きなんだよな。気持ちが昂らないよう細心の注意を払いつつ、外で自分のやりたい仕事に就こうと思う」
今後は料理の腕前を生かした仕事を探したいとのことだ。シュンスケが作った料理はどれも美味しかったし、あたしと違い社交的だからいい仕事が見付かるだろう。
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