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しおりを挟む「オレの代わりにコンビニの仕事を始めたリツコちゃんとテツジ君には、本当に申し訳ないけど……」
「あたしのことは気にしなくていいよ。テツジも人見知りを克服しようと頑張ってるみたいで、あたしにも毎日挨拶してくれるようになったから。大丈夫なんじゃない?」
「ありがとう。……これからも仲良くしてね」
右手を差し出される。
「馬鹿馬鹿しい」とあしらいたいところだが――今日は特別、彼の手を握り返すことにした。
「……あのさ。シュンスケが嫌でなければ、ひとつ訊かせてもらってもいい?」
「何でも訊いちゃってよ。今のオレ、リツコちゃんのおかげでホント元気になったって感じだからさ」
「じゃあ遠慮なく。十五年も一途に想い続けるくらい人を好きになるって、どんな感覚なの?」
「どんな、って訊かれても……『とにかく大好き!』って感じ? っていうか、そんなの考えたこともなかったな」
「ふーん……」
「もしかしてリツコちゃんも片想いしてる相手がいるの?」
「逆だよ。あたし、そもそも人間がそんなに好きじゃなくて、恋愛もしたことないから……単純に疑問に思っただけ」
「そうなんだ。でもリツコちゃんみたいなモデル系美女なら絶対――」
「見え透いたお世辞は結構」
「そりゃちょっと大袈裟だったかもしれないけど、百パーセントお世辞ってわけじゃないよ。たまーに見せてくれる笑った顔、最高にキュートって感じだからね」
「……まったく。調子いいんだから」
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