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しおりを挟む「こんな時間からお出掛けですか?」
「うん。スケジュール手帳をバイト先に忘れちゃったんだよ」
「歩いて行かれるのですか?」
「まだバスがある時間だからね。帰りはタクシーを使うことになるかもしれないけど」
「それなら僕が車を出しますよ。バス停まで五分程度とはいえ、女性一人で夜道を歩くのは危ないと思います」
「あたし、女扱いされるようなキャラでもないんだけど……。まぁいいや、お願いするよ」
ハルとは何度も食事に行っているため、彼の車の助手席にも慣れてきた。しかし今回はあたしの用事に付き合わせるだけ。ありがたい気持ち半分、申し訳ない気持ち半分といったところだ。
「管理人さんがプライベートでも仲良くしてる住人はいるの?」
「皆さん親しくさせていただいていますよ。食事のお誘いを受けて出掛けることもあります」
「住人以外で付き合いのある人は?」
「取引関係の方くらいですが。どうしてそんなことを訊くんですか?」
「あたしを美味しい店に案内してくれたり、こうして忘れ物に付き合ってくれたりしてるけど、それは管理人としての仕事の一環でしょ? そうじゃなくて、いわゆる〝友達〟はいるのかなと思ってさ」
真面目に訊ねたのだが、何故か笑われてしまった。
運転しているハルの横顔を睨みつけ、無言で抗議する。
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