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しおりを挟む「今のリツコさんは悲しい顔をしているように見えます。でも僕には、その理由が思い当たらない。失恋や死別などは〝悲しい出来事〟だと理解できるのですが、今の状況で何が悲しみを生むのか……。自分の痛みが分からないということは、他者の苦しみを察してあげられないことにも繋がるんです」
「そんなの……あたしだって、何がどう悲しいのかなんて説明できないよ。でも、分かってほしいなんて思ってないから。気にしなくていい」
「リツコさんの苦しみを理解できないだけじゃありません。僕はあなたを傷付けていることに何の罪悪感もない……どんなに注意されようが叱責されようが、そういう感情は抱けないんですよ? あなたの痛みに共感することもできない人間に、優しさを注ぐ必要はありません」
「それは管理人さんが決めることじゃない。大体あたしは、罪悪感を抱いてほしいなんて思ってない」
「リツコさんの優しさがあれば、いくらでも素敵な恋ができるはずです。僕のことなど忘れてください」
「別に片想いでもいいよ。でも、管理人さんの思考が人に制御されたものになるなんて……今までの〝月下ハル〟じゃなくなるなんて絶対に嫌。あたしの身勝手だとしても、それだけは譲れないよ」
「管理人としての仕事が変わるわけではありませんから。お気になさらず」
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