異分子マンション

カナデ

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【side.アンズ】3

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 ユイカちゃんと二人でファミリアの外へ。バス停まで五分ほど歩くことになる。ファミリアの駐車場を通過して公道へ出ようとした――直後。確かな声が私の耳に届いた。

『――助けて』

「え?」

『痛い――助けて――』

「どこにいるんですか?」

 間違いない、動物の声だ。
 当然ユイカちゃんには何も聞こえておらず、「どうかしたの?」と訊ねられた。

「助けを呼ぶ動物の声が聞こえるのです。痛い……って」

「すぐ近くかな?」

「そのはずです。探してみてもいいですか?」

「もちろん。わたしも手伝うよ」

 手分けして付近を捜索すると、ファミリア駐車場の片隅で倒れている小鳥を発見した。青い羽の小鳥……おそらくインコちゃん。インコちゃんはぐったりしており、右側の羽が毛羽立っていた。両手で優しく抱き上げ、「大丈夫ですか?」と話し掛ける。

「どうしてこんなことに?」

『大きな黒い鳥に襲われたの』

「カラスでしょうか」

『おうちに帰りたいのに帰れない……痛くて飛べない……』

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