異分子マンション

カナデ

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【side.テツジ】5

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 窓の外を見ながらスケッチブックに向き合うこと約一時間。図書室に人が入ってくる足音に気付き、振り返った。

 相手と目が合う。
 入ってきたのはハルくんだった。
 手にしていたスケッチブックを閉じ、彼に向かって頭を下げる。

「ごめん、すぐ片付けるよ」

「構いませんよ。続けてください」

「でも、ここは絵を描く場所じゃないから……」

「住人の皆さましか来ない図書室ですし、道具を広げて通路を塞いでいなければ大丈夫ですよ」

「……ごめん」

「謝らなくていいですよ。……ところで、何を描いていらっしゃるのですか? 外には駐車場しかないと思いますが」

「それは、その……花を」

「駐車場横にある花壇の?」

「……うん。ペチュニアが綺麗だから……」

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