魔法犯罪の真実

水山 蓮司

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第1章 始まりの壁

1-14:オフタイム

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 翌日、朝早くにメンバーは研究所に集まり絵実の協力によって本部に送られてきた野口の取り調べと脳指紋による照合を行っている。
 昨日の大山の様子と同様に態度や雰囲気が違い、大山ほど丁寧な口調ではないが言葉遣いが整っていた。
 入院していた恵も退院出来てメンバーと合流している。
 ただ、昨日のダメージの影響を受けないためにも半日程度、魔法の使用の禁止を診断された。
 それを踏まえて恵も野口の取り調べと脳指紋の照合に立ち会った。
 結果、大山に見せたサンプルのものと同じものが一致したことがわかった。
 取り調べと照合が終わり真奈が口を開く。
「これでようやく総監に報告出来るけど、異論はないわね?」
 メンバーの顔を見て確認を取ると、
「大丈夫だよ真奈、ここまでやったんだから後は話を受けてそれからにしよう」
 舞香がやんわり言うと、
「そうね、それじゃあ皆行きましょう」
 一旦、肩の力を抜いて真奈は鉄茂のもとにメンバーを誘導する。


 歩いてすぐ、警視庁のエントランスに入り受付でIDカードを見せ最上階にある警視総監室に辿り着いた。
 ドアをノックして「どうぞ」と部屋の奥から声が確認出来たところでメンバーが入室する。
「失礼します」
 真奈が代表して告げる。
「皆が揃ってくるということは新たな発展があったのかな?」
「はい。工場を荒らしまわっていた大山と野口から共通して重要な証言と脳指紋による照合データがとれました」
 真奈が昨日から今朝に至るまでわかっていることを全て報告した。
 口だけでは説明し切れない照合については綾菜がタブレットを用いて実際に研究所で照合した服装の画像と声のサンプルを見せて報告した。
 報告を聞いた鉄茂はまず労いの言葉をかける。
「昨日から今朝に至るまで改めてお疲れ様。数少ない手がかりからここまで割り出してくれたことについて本当に助かった。ありがとう」
 ここで言葉を区切り本題はここからである。
「今の報告を聞いて大山と野口、それぞれの証言と照合から皆が思い浮かべているであろう第三者に関してだが、私の方で心当たりがある」
 その言葉にメンバーは驚き、その様子をわかりつつ鉄茂は話を続ける。
「だがその人物は警視庁の中では機密資料扱いとなっていて階級関係なく資料要請の手続きが必要になる。通常は3日程度かかるところを今回は緊急ということで1日でその資料を引っ張り出せるように申請してくるから時間をいただきたい」
 メンバーにその念を伝え更に話を続ける。
「それに、その人物について私よりも詳しく知る人が警視庁にいるから明日の朝にてJSIA本部の会議室に集まるように」
 話が終わったと見て時光が一歩前に出て話を切り出す。
「総監、それに皆、今回の事件で野口の取り調べと照合を遅らせてしまったこと本当に申し訳ございませんでした」
 時光が頭を下げると鉄茂とメンバーは驚き、息を詰まらせた。
 このままでは話が進みそうにないと思った鉄茂は立ち上がって時光の方をポンっと叩き頭を上げるように促す。
「状況は夕里さんから聞いたよ。何も自分を責める必要はない。私も森園君と同じ立場ならそうしたであろうし、これ以上自分を追い込んではいけないよ」
「はい…」
 鉄茂に説得されたが、それでも時光の表情が晴れることはなかった。
「気にするなと無責任なことは言えない。ただまだ自分の中で納得出来ないことがあれば今日一日ゆっくり考えて過ごすのも悪くない。皆も森園君と同じようなことを抱えているのであれば今日は自由時間として体を養うように。改めて昨日から本当にお疲れ様。質問があれば遠慮なくどうぞ」
 そう告げられたメンバーから手を挙げることはなかった。
「質問はありませんが、お言葉に甘えて今日一日ゆっくりさせていただきます。私たちはこれで失礼します」
「ああ。ゆっくりな」
 真奈が代表して告げ総監室を後にした。


 普段集まる会議室に戻って来たメンバー複雑な顔して黙ったままでいた。
 それを見た志穂と美穂はムッとした顔で訴える。
「ねえ、いつまでもそんな暗い顔しても良くないよ」
「そうだよ。こんな時だからこそ難しいことをなしに休もうよ。それからまた考えればいいんだからさ。ね?」
 2人の発言に舞香がお手上げとばかりに気を緩めて口を開く。
「そうだね。ゆっくり休んで体を養わないと身が持ちそうにないね」
 そこからメンバーも少しずつ気が緩み、肩の力が抜ける様子が見られる。
「それじゃあマイカちゃん遊園地行こう」
「久々にジェットコースターに乗ろうよ」
「2人ともいくつだい?」
「「22歳」」
「そういう人たちが真っ先に選ぶ場所がそこなのね」
「「さあマイカちゃんレッツゴー」」
「はいはい、そう急かすものじゃないよ」
 急かされる舞香だが満更でもないようである。
 3人の足元に魔法陣が展開されると「雷瞬線」であっという間にその場からいなくなった。
「それじゃあ真奈ちゃん、私たちも何処か出かけよう」
「えっ⁉よりにもよって貴女と⁉」
 綾菜が真奈の腕をガシッと掴み、真奈が慌てる。
「私と行くのがそんなに嫌なの?」
「だって貴女と出かけるといつも露出度ろしゅつどの高い服装で来るから見ているこっちが恥ずかしくなるのよ!」
 そう反論するも、綾菜は目を細めて楽し気に切り出す。
「ふ~ん。それなら前に真奈ちゃんの言っていた「えっちでも何でもする」という件に関してのえっち権を行使こうししてもいいのかな?私としてはどちらでもいいんだけどね」
 ほぼ脅迫に近い勝ち誇った綾菜の台詞が真奈にたたみかけるように炸裂さくれつする。
「い、一緒に出かけるからそれだけは勘弁してよ!それにえっち権って何よ!」
「聞きたい?」
「言わなくていいわよ!」
「それじゃあ気を取り直して、しゅっぱ~つ」
 真奈と綾菜のやり取りに時光、恵、修助、若弥は苦笑いするだけでツッコめずにいた。
 残った4人は改めて顔を合わせて若弥が口を開く。
「それじゃあ僕も今日はのんびりするよ。それじゃあ」
 そう言って部屋を後にした。
「俺は寄りたいところがあるからこれで」
 続いて修助も部屋から出て行った。
「後は俺たちだけか」
「え、ええそうなりましたね。もしよろしければ私たちも何処か出かけませんか?」
「あ、ああ別に構わないよ」
「では行きましょうか」
 特に断る理由はないが時光の気はあまり乗っていないことはわかっていても、恵は少しでも気が晴れてくれればと時光を誘うのであった。
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