魔法犯罪の真実

水山 蓮司

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第1章 始まりの壁

1-19:過去に起きた悲惨な事件

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 今朝早くに本部の会議室にメンバーが集まり、鉄茂が真剣な面持ちで話を始める。
「皆、朝早くから集まってくれて本当にありがとう。昨日言った通り、第三者の資料を引っ張り出すことが出来て、その人物を明らかにするため、私よりも詳しく知る人をこの場に呼んでいる。入ってきてどうぞ」
 鉄茂が言い終えたところで呼ばれた人物が入室する。
 スラッと背が高くボディーガードのような黒いスーツの格好で背中あたりまで伸ばした黒い髪に吸い込まれそうなパッチリした目の女性である。
 その女性は鉄茂のところまで行き自己紹介する。
「皆さん初めまして、村富良歌むらとみりょうかと申します。今は警視監をやらせていただいています。警視監の前は組織犯罪対策部の長を経験して今に至ります。よろしくお願いします」
 言い終わり礼をすると、メンバーも立ち上がり礼をして着席する。
 良歌の地位は警視総監の次に高いところの役職で2番目である。
「では早速ですが、ここにいる皆さんが集めた証拠を元に第三者であろう人物のプロファイルを映像としてお見せするので少しの間お待ちください」
 良歌は断りを入れて椅子に座ると懐から赤外線キーボードを取り出した。
 真奈が使用するものとは違った上級者モデルで宙に画面をいくつか展開させて閉じては展開と繰り返し素早く丁寧にプロファイルのパスワードを解除している。
 メンバーはその様子を見ていて、その中でも真奈は驚きを隠せなかった。
「凄い…」
「珍しいね。真奈の口からそんな言葉が出るなんて」
 小声で舞香が言うと真奈もその声量で簡潔に述べる。
「時間にして3分弱、これだけの複雑なパスワードを解く人なんて多分、警視庁でも片手で数えられるくらいの人しかいないわよ」
「そんなに高い技術なんだ…」
 その間にパスワードが解き終わり、いつでも映像を流せるようになり、ここで良歌が確認する。
「では今から映像をお見せしますが、心の準備はよろしいですか?」
 そう問われ、ここで代表して時光が答える。
「はい、いつでも大丈夫です。お願いします」
「わかりました。途中で酷い表現も含まれておりますが、気持ち悪いと思ったら無理せず途中で退室されても構いませんので」
 念のためそう告げエンターキーを押して映像を流す。
 これから時光たちが戦うであろう人物の姿がここに。

 ♦

――S5エスファイブプロファイル教会惨殺事件きょうかいざんさつじけん――
『ここがその教会ですか…』
 一人の色白の男性が目の前の教会を見てポツリと呟いた。
 その一種の城とも言えるところに踏み込み周囲を警戒して安全が確認出来たところで教会の扉を開ける。
『っ⁉』
 その瞬間、男性は思わず目を見開き息を止めた。
 理由は教会内の至るところに、かなりの量の血で染まっていたからである。
 幼い子どもから女性の身体中が切り刻まれたり、弾丸で打ち抜かれたりと人によって傷の程度に差はあるが、少なくとも穏やかな状況ではないことは確かである。
『これは酷い…』
 苦い顔して周囲を見渡し少しずつ歩く。
 物音を立てずに歩いているとかすかな気配があったので慎重にその方向に進む。
 男性が目にしたのは小柄な女性で幸いにも外傷はなく気を失っているだけである。
 男性はそっと女性を抱き起して意識を回復させるために所持していた「意識蘇生薬いしきそせいやく」を服用させ回復を待った。
 服用させてから数分、女性の身体がピクッと反応して目がゆっくり開いた。
 今の状況が上手く把握出来ず声を上げそうになるが、男性が人差し指を口元にあてているところを見てようやく事態を知ることが出来た。
 それから女性の様子が安定してきたところで男性が尋ねる。
『この場所から極めて強い魔導波が確認出来たのですが一体何があったのですか?』
『あの、その前に貴方は一体…』
 女性が言いづらそうな様子から自分が名乗ることを忘れていた男性は訂正して女性に答える。
『申し遅れました。私は日本捜査連合にほんそうされんごう権藤達人ごんどうたつひとと申します』
 警察手帳とは異なるIDカードを女性に見せて自分が怪しい者じゃないことを明かす。
 それが確認出来た女性は自分も名乗る。
『権藤さんですね。私は和矢里実わやさとみと申します。この修道院の者です』
『では和矢さん、改めてここで一体何があったのですか?』
 達人が尋ねると離れた場所からドアが開く。
『なんだ、気のせいか』
 見知らぬ男が軽く周囲を見回し、すぐにドアを閉める。
『このままでは見つかってしまいますので目のつきにくい位置まで案内お願い出来ますか?』
『わかりました。こちらです』
 達人に促された里実は了承し、物音を立てないようにその場所まで移動した。
『ここです』
 案内された場所は先ほどいた場所と変わらず安全というにはほど遠いもの。
 しかし里実は何も言わず黙って右手で壁を押した時だった、壁が反転して中は広々とした部屋だった。
『さあ今のうちです。中へどうぞ』
『ありがとうございます』
 2人は部屋の中に入り身を隠し、里実は部屋の中にあるモニターの電源を入れ、これからやろうとする作業の準備に取り掛かる。
『まさかこんな隠し部屋があるとは思いませんでした』
『驚きましたか?この場所を知っているのは私だけなんです。それに防音性も優れているので大きな音をいくら出しても外には響きません』
『それは何とも素晴らしいですね』
 達人は本心からそう思った。
『話が変わりますが、改めて教会内で起きたことについてお伺いしたいのですがよろしいですか?』
 敵のちょっとした妨害もあり、ようやく尋ねることが出来て、里実はその質問に答える。
『そのことですが語るよりは、私が見たものをご覧いただいた方が早いので少し協力願えますか?』
『私に出来ることがあれば是非』
 2人はモニターの前に立ち里実は暗唱番号を入力し「記憶観測きおくかんそく」というプログラムをタップする。
 すると2人の目の前にあるボードから手形が浮かび、その周囲に魔法陣が展開された。
 お互いの身体に負荷がかからないようにするためのものと推測出来る。
『では権藤さん、ボードに手を置いてください』
『わかりました』
 里実に言われた達人はボードに手を置く。
 里実も目の前のボードに手を置き今まで自分が見た現場を達人に見せる。

 
 
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