魔法犯罪の真実

水山 蓮司

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第1章 始まりの壁

1-20:犯行の一部始終

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 達人が教会に到着する1時間半前のこと、教会内はいつも通り聖母の像の前で祈りを捧げるため席に着いて時間がくるまで静かに待つ。
 幼い子どもから高齢の女性までいて最前列に教会を統べる長であろう女性もそこに座っている。
 最前列になるにつれて年上の女性がその位置に座る形をとっているようである。
《では皆様、本日も聖母に祈りをお願い申し上げます》
 長である女性が座る修道者たちに一言述べ礼をする。
 その言葉に修道者たちも立ち上がり黙って礼をして着席する。
 それが確認出来たところで長である女性は前を向き聖母の像に向かって手を組み祈り始める。
 それに習って修道者たちも祈り始める。
 祈りを始めてから数分経った時だった、地鳴りのような音が響きその場にいた修道者たちに不安が募る。
《一体何事ですか⁉》
《まさか大地震ですか⁉》
 次第にザワザワと声が大きくなると、
《皆さん落ち着いてください。ゆっくり立ち上がって移動しますよ》
 長である女性が説得すると修道者たちはそれに従い移動する時だった。
 バンとドアが勢いよく開き、数十人の男の集団が侵入してくる。
《騒ぐな!動いたり声を出した瞬間に殺す!》
 数十人の男の集団の中のリーダーが脅すと修道者たちが次々と悲鳴を上げる。
《きゃああああ》《やめてええええ》《助けてええええ》《いやああああ》
 この瞬間、無情にも男の集団が次々と修道者に襲い掛かる。
《ようやくあんたの場所を突き止めることが出来たよ》
《一体何を言っているのですか?》
 リーダーの男性は別の目的があり、長である女性に問い詰めるが、一方で女性は何を示されているかわからず返答すると、
宮城佳代みやしろかよ
《っ!》
 リーダーの男性が女性の名前を口にすると、長の女性は驚き何も言えずにいた。
 リーダーの男性は構わず話を続ける。
《あんたの政治資金問題で濡れ衣を被せられた俺の母親だ》
《それじゃあまさか!》
《俺はその息子の宮城純平みやしろじゅんぺいだ》
 口調こそ静かなものの確かな怒気が込められていた。
《あんたの名前は昔働いていた役所の人から話は聞いている。草津理沙くさつりさ、警告する今から大人しく当時の政治資金問題の資料をこちらに渡せ》
 純平が圧をかけて追求するが、
《残念ながら私はもう資料を持っていませんよ。それに持っていたとしても既に解決されている問題に誰も見向きもしませんよ》
 何でもないふうに装って言うと、
《それはないな。用心深そうな人間がみすみす手放すはずがない。それにこの資料は当時関係していた人間に対して脅しをかけ、金を奪うことにも活用出来る起爆剤にもなっているはずだからな》
 その言葉に草津が反論する。
《そんなことをしてしまったら私はただじゃ済みませんよ。一部分とはいえ私のことも記載されて自爆することになりますから》
 隙のなさそうな答弁に純平が切り返す。
《確かにそう見えなくはないが、あんたはそこまで見通して資料には一切自分は関わっていない上、問題を起こしたのは宮城佳代であると細工した。実際に世間ではそう記憶されているからな》
 今にでも殺しにかかりそうな勢いを必死に堪える。
《たとえあなたの言う通りだとしてその証拠は何処にあるのでしょう?捜査官ではないあなたがこんなことをして、ただで済む――」
 純平はとうとう痺れを切らして草津の間合い詰めてナイフで腹部を刺す。
《喋らないのであれば徹底的に探すだけだ》
 言い終えたところでナイフを抜き取り冷たい目で草津を見下して、死んだことを確認する。
 その場から離れ目的である資料を探す時だった、人の気配がして慎重にその場まで行ってみる。すると、
《っ!》
 驚いたのか一瞬だけ目を見開き里実を見る。
 気持ちを落ち着け焦りを悟られないようにゆっくり話す。
《ごめん。事態を片付けたら出頭するからそれまで眠っていてくれ》
《えっ?》
 純平は懐からお守りみたいなものを取り出してそれを里実の前にかざした。
 里実はなす術なく意識を失ってしまった。


『私が見たのはここまでです』
 里実が見た出来事に最後ブラックアウトしたところで2人はボードから手を離した。
『お守りのようなものを翳されましたがまさか…』
 言いづらそうに言葉を伏せ、達人は里実の様子で判断する。
『はい、権藤さんが思っている通りの催眠香さいみんこうです。私が翳されていたものは医療用のもので約3倍の効き目のものかと』
 里実は達人の様子を察した上で実際に自分がくらった効力まで話した。
 催眠香は不眠症の者に対して処方されたり、手術する際に麻酔が駄目な患者に対して用いられたり、使われるところは限られていて日常で使う機会はあまり見られない。
 効力の方は2~10倍であり、その数値以上のものは違法薬としてカテゴリーされている。
 理由としては人が死んでしまうほどの効力を持っているからである。
『その宮城という方が最後に謝っていましたが、お知り合いですか?』
 達人の質問に難しい顔して答える。
『それですが、考えても何処かで会ったような、なんとなくの記憶で今はハッキリと覚えていないです』
『そうでしたか。無理に思い出さずとも、宮城という方の話で思い出していただければよろしいのでは?』
『まさか⁉』
『直接その本人に会って話をつけに行きます』
『だったら私も――』
 里実が焦ってその先を言い出しかけると、
『それは駄目です。戦闘になったことを想定して貴女を守りながら戦うのは難しくなります。だから和矢さんはここで待機していただけますか?』
 達人の発言にハッとさせられて後のことを考えずに先走ったことを謝る。
『わかりました、ごめんなさい。ではせめてこれをつけてください』
 里実から渡されたのはインカムである。
『教会内は広く迷路のような構造なので私がオペレートします』
『ありがとうございます。ではお願いします』
『はい、全力でサポートします』
 こうして達人は純平に話をつけに本人の元へ向かう。

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