魔法犯罪の真実

水山 蓮司

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第2章 血の追求者

2-06:捜査・吉祥寺エリア

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『時光くん、さっきはありがとう』
「礼には及ばないさ。こちらとしても自分の力がどれほどのものか知ることが出来たからさ」
 自分が巡回する現場に着いて早々、オペレート室から修助から感謝の言葉が送られて来る。
 現場に向かう前に自安壁の強度を確かめておきたくて地下トレーニング室で実際に魔法による襲撃を受ける想定で自分がどれだけその攻撃を防げるか確認したところ、時光の魔法で5回程度であれば許容範囲で防げることがわかった。
 ただし時光は7割の力でぶつけていたため本気になればまた条件が変わっていたことも同時にわかった。
『これが時光じゃなくて怜司だったらどうなっていたんでしょうね』
『真奈さんそれは…』
 念話越しから察するに、真奈の顔がニタッと悪戯っぽく修助が苦笑いして言う顔が容易に想像出来た。
『まあ冗談はこれくらいにして現場に着いて早々確認するようだけど時光、今回も権藤さんの捜査の時と同じ要領で、もし万が一に相手から何を仕掛けられても怯ませる程度にとどめておおくようにね』
「わかっているよ。俺そんなに信用ない?」
『ないわね』
 釘を刺すように注意を入れる真奈に確認をとる時光に、短く辛辣な言葉を投げかける。
『まあ真奈ちゃんそこまで厳しく言わなくてもいいんじゃない?嫌われ者になっちゃうかもしれないけどそれでもいいのかな?私とあんなことやこんなことが出来なくなってもいいの?』
 恐らく綾菜が真奈の背後に立って耳元で囁いていることが想像出来る。
 頭でわかっていても背筋がゾッとすることには変わりなかった。
『ちょっと綾菜⁉貴女が割り込んで来ると調子が狂うからやめて!』
『え~そんなつもりないのに。それにそこまで意地悪言わなくても…。気が張った状態だからこそ攻め入る隙が出来て襲撃されでもしたらどうするの?』
 少し寂し気に言ってみせて真奈を黙らすと、
『わ、悪かったわよ。ちょっと言い過ぎた、ごめん時光』
「いやいいさ。気を取り直して歩き回るけど支援具の機能に不具合はないかな?」
『問題ないよ。制度がどれほどのものか始めのうちは時光くんの視野と同じくらいに観測してそこからギリギリのところまで視野を拡大して索敵してみるよ』
「わかった。俺の方も今こうして声に出して話をしているけど、状況によって真奈さんの念話に切り替えて話をさせてもらうことがあるからよろしく」
『ご丁寧に。そこのところは充分に理解しているから大丈夫よ。自分のやりやすい方法で構わないから無理しないでね』
「言われずとも」
 長年の付き合いがあってこそ言える台詞である。
 しばらくのやり取りを終えて歩き始めてから周囲を見まわる。一見して極端に様子がおかしい人はパッと見ただけでは判断が難しい。
 オペレート室から何も言ってこないというのは数値上では水色で10%以下の数値を示していることが想像出来る。
 歩いている途中で時光がピタッと足を止めると、
『どうしたの時光、何があったの?』
 真奈が問うと、時光は念話で答える。
『後方1~2km、この場所からでも聞こえないだろうけど会話を傍受ぼうじゅされる危険を考えてこちらに切り替えて言うけど、僅かながら忍び寄って張り付いて来る気配があった。修助君、索敵お願い出来るかな?』
『わかった。ちょっと待ってて』
 そう言って時光の位置から索敵をかけて何者なのか追跡してみる。
 人が多いということもあってか、なかなか特定することが出来ない。
 自分自身で如何に力を隠し持っていようとその力も目に見えて判別出来るように索敵を施しているのだが、
『お待たせ時光くん』
『ああ、それでどうだった?』
 その問いに修助は苦い口調で答える。
『それがどうにもこれといって怪しい人物の特定が出来なかった。探し出しているうちに逃げられてしまうのもそうだけど、その間に何の罪のない人に何かよからないことが起きたらそれもいけないから』
『そうだな。俺の杞憂であってくれればそれでいいんだけどね』
 不確かなことに気を取られて被害を出してしまうのも問題だと思い、今は追求しないようにした。
 少し集中が途切れてしまい近くのカフェで休憩して巡回を再開しようと考えている時だった。
「時光ちゃん、今のラベンダー色のカーディガンを来た女性を追って話かけてみて!』
 真に迫る勢いで綾菜が言うと、時光は急いで女性を追って話かける。
「あの、すいません今お時間よろしいですか?」
 すると女性はボーッとしていたのか、ワンテンポ遅れて返事する。
「あ、あの私ですか?」
「ええ、そのつもりで声をかけたんですが気付きませんでしたか?」
 それを知って女性は時光に謝る。
「ごめんなさい。考えごとをしていてボーッとしていたものでつい…」
 そう言った後にオペレート室にいる綾菜からの通知が来る。
『その女性だけど医療機関で検査を受けるように説得お願い出来るかな?ちなみに数値としても15・5%と注意レベルを示しているから』
 時光は黙って頷き女性の説得に入る。
「あの、もし今お時間に融通が利くようでしたら医療機関で検査していただきたいのですが可能ですか?」
「は、はい大丈夫です。お願いします」
 頬をほんのりと赤く染め時光の要求に応じる。
『綾菜さん救急の手配を』
『大丈夫だよ。もうそちらに向かわせる手配は済んでいるよ』
『ありがとう』
 先々に手を回したおかげがあり、ものの数分で時光の居場所に救急隊員が来て女性を医療機関まで運んだ。
『まだ情報が限られている中で申し訳ないけど、皆は今回の件どう見ている?』
 時光の問いに真奈が切り出す。
『様子見じゃない?ハッキリしていないことだらけで、ここで議論しても相手の思う壺だし、ギリギリまで引っ張り出して見ないことには何とも言えないわ』
 続いて修助が答える。
『様子見ということには真奈さんと同意見だけど、他にも注射の持続時間とその副作用、性別問わず適正を見て判断しているんじゃないかな?』
 最後に綾菜が複雑な心境で語る。
『2人の意見を含めて何か達成したい目的があるように感じるよ。なんかこう他の人が成し得なかったことが自分であれば達成出来るよといった要領で。ただそれに至るまでに必要なものを探しているようにも思えてならないよ』
 3人の意見がまとまった中で綾菜の意見を取り上げ本人に質問する。
『綾菜さん、医療において新薬しんやくが開発され、それが実用された時ってどれほどの快挙なのかイメージで構わないから聞かせてくれるかな?』
『その類の話なら絵実先生の方が詳しく知っていると思うんだけど聞いたことない?』
 逆に質問されたことに苦く答える。
『それが本人はあまりそういう話をしたがらないし興味もなさそうだから。そこで同じ医療という拡大解釈のもと綾菜さんはどう見ているのかなと思って聞いてみたんだけど、どうかな?』
 少し考えるように、やがて答え出す。
『う~ん…。私個人は新しい薬の開発というより医療で支援系統を専門としているから専門的な知識は全くないよ。ただもし、新薬が実用化され周りからの評価が良ければ半永久的に仕事せずに生活出来るだけの環境になるんじゃないかなと思うよ』
『そこまでとは…』
 開発面で専門性がないとはいえ医療に携わる人にそこまで言わしめることに時光が唖然とする。
 更に綾菜が続けてこう補足する。
『歩果ちゃんだったら絵実先生ほどじゃないけど、少しその話をかじっているらしいから、きっと役立てる話が聞けるかもしれないよ』
『機会があればそれとなく聞いてみるよ』
『それがいいよ』
 ある程度、話がまとまり巡回を再開させる時光である。
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