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燃え上がり連鎖する絶望と、眩しくも醒めぬ眠り
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賑やかな街並み。
人々の声が辺りに響く。
その声のほとんどが明るいもので、聞いている者も楽しくなってくるような、そんな幸せに満ちていた。
その通りを、たくさんの新聞を抱えた少年が走って来た。
大声を張り上げながら、新聞をばら撒いていた。
「号外!号外だよ!あの聖教国が跡形もなく滅んじまったよー!」
人々は新聞の号外を受け取りながら、一様に驚いたり、不安げな表情を浮かべた。
大声で話す者、ひそひそと声を殺して話す者、号外を持って知り合いか家族の元へと向かう者…
そうした様々な人々が、先程よりも通りを賑わせていた。
それを遠くから眺めながら、号外を読む男が一人。
喫茶店のテラス席で、黒いシルクハットを被った白いシャツにベストと黒ズボンの男の目に前のテーブルの上には、半分程飲まれたコーヒーカップが置かれていた。
そのカップとテーブルに影が落ちた。
目を挙げた先には二人の男の姿があった。
青いアロハシャツを着た一つ目の男と、白いパーカーを着た三つ目の男。
その姿を目の端で確認すると、新聞をたたんで片付け始める。
それを合図にしたかのように、二人の男、”火山の悪魔”ヴォルケイノスと”光の悪魔”明光はシルクハットの男、”次元の悪魔”ディメの前に座った。
丸いテーブルに座る悪魔達。
最初に口を開いたのはディメだった。
「…それで?仕事はどうだった?」
「そんな号外読んどいて聞くか?俺の活躍が載ってるはずだぜ?」
「ああそうだな…俺もまさかお前がここまでやり過ぎるとは思わなかったよ」
「ああん!?しょうがねえだろ!?逃げた法皇を殺すには、街ごと焼いちまうのが手っ取り早かったんだよ!」
「…はあ、もういい…」
ディメは溜息をつくと、明光の方に顔を向けた。
「お前の方はどうだった?」
「…従属に従わなかった。だから全員殺した」
「だろうなあ…ああいう連中は正義感が強いというか、自己中というか…厄介な連中だよ」
ディメは通りの喧騒を眺めながら、呟いた。
悪魔二人へと視線を戻した。
「ともかく二人ともご苦労様。報酬はいつも通り口座に振り込んでおく」
「サンキュー!…で、この後この世界はどうするんだ?」
ウエイトレスの少女が席へと近づいて着た。
二人の悪魔が以前注文したものと同じコーヒーを注文すると、少女は笑顔を浮かべながら厨房へと向かった。
その少女をディメは眺めていた。
「…ディメ?」
「…ん?ああ、すまない。ちょっと考え事をな」
ディメは椅子に座り直すと、テーブルの上で手を組んだ。
「この世界の神も魔王も両方消す。髪を殺すのは決定事項だとして、この世界の魔王を残したままにすると、よその世界の神がやって来るかもしれん」
「そりゃ面倒だな」
「だから別のやつに神と魔王を殺すのをやらせることにする…できれば同時進行でな」
ディメはカップを持つと、一口飲んだ。
ヴォルケと明光の二人もカップに口をつける。
穏やかな時間が過ぎていった。
椅子を引く音がし、悪魔二人が立ち上がった。
「それじゃあ…ここらで俺たちはお暇することにするよ、ディメ」
「…またな」
ディメは目を少し動かして二人を見上げた。
「じゃあな」
二人の悪魔は通りへと向かい、そのまま人混みに紛れていった。
その二つの後ろ姿が完全に見えなくなると、ディメはズボンのポケットからスマホを取り出すと、何処かへと電話をかけた。
数分の後通話を切ると、また別の番号へと電話した。
スマホをしまうとディメは席を立ち、喫茶店を後にした。
「…自分のコーヒー代くらい払えよなあ…」
と、呟いて。
◇◇◇◇◇◇
魔族領の再奥に位置する、魔王城。
玉座に座りながら、魔王は考えていた。
自分はこの世で最強の生物だ。
その自分を打ち破らんとする強者は現れるのか。
勇者か、はたまた聖教騎士団か。
元魔族領で何やら暗躍する力ある魔物か。
強者をねじ伏せ、君臨することこそが自分の生き甲斐だと考えていた。
…もしこのまま真の強者が現れることがないのなら、天界にいるという神を殺しに行こうか。
魔王は退屈を覚えながら、玉座に肘をついて座っていた。
魔王の索敵スキルに反応があった。
魔王は目を見開いた。
感知した敵の力の大きさ、その大きさから人間が召喚したという勇者であると考えた。
魔王の口角がつり上がる。
今まさに、自身が求めた強者が。
己の限界を引き出してくれるであろう好敵手が現れる!
こんなにも心踊ることがあるだろうか!?
魔王は溢れ出そうな笑い声を押し殺しながら、マントを翻して玉座から立ち上がった。
立ち上がった魔王の目の前に、ローブを着た魔族が現れる。
「魔王様、いかがいたしましたか?」
「…これよりここへ、我らの敵が現れる。迎撃の準備を備えよ!」
「…!…承知致しました!」
ローブの魔族が転移でその場を離れると、魔王は体から闘気を立ち上らせながら、腕を広げて天を仰いだ。
「さあ強者よ!我が元へ来るがいい!フハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
「『竜殺しぃー…スターーーーーインパクトーーーーーーーーーーーーー』!!」
焼け焦げた更地のの中央。
巨大なクレーターの穴の奥深く。
その中央に一人の影が。
野球のユニフォームを身につけ、頭には野球で使うようなヘルメットをかぶっていた。
それの足元には、ぼろきれのようなものが転がっていた。
正確には、足で踏みつけていた。
それは生き物のようで、かすかに息をしていたが、直にその命も果てるだろう。
「…ピッチャー投げた…ストライク!!バッターアウト!!」
悪魔はそう叫んでガッツポーズをすると、嬉しそうに飛び跳ねた。
彼の名は”隕石の悪魔”。
天上より大地へと降り立ちて、全てを滅ぼす者。
◇◇◇◇◇◇
天上の神の領域。
その玉座にて、女神が頬杖をついて座っていた。
女神は退屈していた。
この世界の統治を命じられて幾千年。
代わり映えの無い世界の変化をずっと見続けていた。
そんな中、ふと気紛れに下界の人間に神の試練を与えた。
魔王と呼ばれる存在を作り出し、人間どもにその存在に立ち向かわせた。
人が死に、命を賭して戦う姿を眺めるのはとても楽しかった。
しかし、どんなものにも終わりは必要だ。
そこで異世界より勇者を召喚させ、魔王と戦わせることにした。
魔王が死ねば人間の勝ち、勇者が死ねば魔族の勝ち。
それによってこの世界の今後を定めようとした。
多少のイレギュラー的な存在もあったが、それもまた一興。
いい暇つぶしの娯楽となってくれた。
彼らも私を楽しませることができて本望だろう。
世界は、人間は、髪が作りだしたおもちゃなのだから。
「やあこんばんわ、素敵な月夜ですね」
女神が視線を上げると、玉座の間の中央…玉座に座るものが跪く位置に誰かが立っていた。
「…何者ですか…?」
「なに、この世界で一番月が綺麗に見える場所に足を運んだ、ただの通りすがりの者ですよ」
そう言いながら男は首に下げたカメラを手に持った。
藍色のアンチング帽をかぶったワイシャツを着ており、一見した限りでは新聞記者かカメラマンに見えた。
女神は眉間にシワを寄せながら男に話しかけた。
「神の御前で跪かないなんて無礼ですね…殺す前に、何か言い残すことはありますか?」
「そうですね…なら、写真を一つ…」
男は女神の背後にある大きな天窓、そこから見える夜空と三日月を見上げた。
「月夜を背景に、あなたの姿を写真で撮らせてください」
男はにこりと笑った。
眼鏡をかけて笑う顔は、どこか愛嬌のようなものを感じさせた。
この男がどこから来たか、なにしにここへ来たのか気になることはあったが、神である自分に対してなにができようかと女神は考えていた。
「…いいでしょう、許可します」
「これはありがとうございます」
男は軽く頭を下げると、カメラを構えた。
レンズの中に女神と月夜を映す。
調整のための動きが徐々に少なく、小さくなっていった。
「それでは撮りますよー…」
「はい、チーズ」
血が飛び散る。
女神の体がズタズタになった。
体のあちこちに何かに刺されたかのような傷ができていた。
その傷から止めどめなく血があふれ出た。
女神は口から血を吐き出しながら、目の前の男を驚愕と憎悪のこもった目で睨みつけた。
「き…きざま…!わだじに…何をじだ…!?」
「おや失敬。そういえばまだ名乗ってませんでしたね」
男は丁寧にお辞儀をすると、顔を上げてから名乗った。
「”写真の悪魔”…写す姿は真実、過去と今を混在させし者」
悪魔は手に持った古い型のカメラからフィルムを取り出した。
「私はカメラで写したものを、同じフィルム・データ上にある他の写真の世界を混在させることが出来るんですよ」
フィルムを天井の魔法で作られた灯りに照らして、透かし見る。
「今、『あなたの写った』写真と『大量の剣で覆われた部屋』の写真の世界が混在しました」
悪魔はニコリと笑った。
「あなたは大量の剣に刺されて大量出血…というわけですよ」
女神は玉座の上で痛みに苦しむ。
もがくその姿は、先ほどのような神々しさは微塵も無かった。
悪魔は一礼すると、その場を後にすべく踵を返した。
「ぎ、ぎざま…神に手をだじて…だだでずむと思うなよ…!!」
女神がそう叫びながら手を悪魔へと突き出した。
「じねえ!!!」
魔力が女神の中で膨張する。
悪魔は手に持ったフィルムの、女神が写った部分を両手で持つと、一息に破り捨てた。
女神の体が縦に裂けた。
血が噴水のように天へと噴き出した。
「私は美しいものの写真しか撮らないんですよ」
悪魔はそう言い捨てると、目の前に現れたドアをくぐった。
「醜い貴女の写真は、いりません」
人々の声が辺りに響く。
その声のほとんどが明るいもので、聞いている者も楽しくなってくるような、そんな幸せに満ちていた。
その通りを、たくさんの新聞を抱えた少年が走って来た。
大声を張り上げながら、新聞をばら撒いていた。
「号外!号外だよ!あの聖教国が跡形もなく滅んじまったよー!」
人々は新聞の号外を受け取りながら、一様に驚いたり、不安げな表情を浮かべた。
大声で話す者、ひそひそと声を殺して話す者、号外を持って知り合いか家族の元へと向かう者…
そうした様々な人々が、先程よりも通りを賑わせていた。
それを遠くから眺めながら、号外を読む男が一人。
喫茶店のテラス席で、黒いシルクハットを被った白いシャツにベストと黒ズボンの男の目に前のテーブルの上には、半分程飲まれたコーヒーカップが置かれていた。
そのカップとテーブルに影が落ちた。
目を挙げた先には二人の男の姿があった。
青いアロハシャツを着た一つ目の男と、白いパーカーを着た三つ目の男。
その姿を目の端で確認すると、新聞をたたんで片付け始める。
それを合図にしたかのように、二人の男、”火山の悪魔”ヴォルケイノスと”光の悪魔”明光はシルクハットの男、”次元の悪魔”ディメの前に座った。
丸いテーブルに座る悪魔達。
最初に口を開いたのはディメだった。
「…それで?仕事はどうだった?」
「そんな号外読んどいて聞くか?俺の活躍が載ってるはずだぜ?」
「ああそうだな…俺もまさかお前がここまでやり過ぎるとは思わなかったよ」
「ああん!?しょうがねえだろ!?逃げた法皇を殺すには、街ごと焼いちまうのが手っ取り早かったんだよ!」
「…はあ、もういい…」
ディメは溜息をつくと、明光の方に顔を向けた。
「お前の方はどうだった?」
「…従属に従わなかった。だから全員殺した」
「だろうなあ…ああいう連中は正義感が強いというか、自己中というか…厄介な連中だよ」
ディメは通りの喧騒を眺めながら、呟いた。
悪魔二人へと視線を戻した。
「ともかく二人ともご苦労様。報酬はいつも通り口座に振り込んでおく」
「サンキュー!…で、この後この世界はどうするんだ?」
ウエイトレスの少女が席へと近づいて着た。
二人の悪魔が以前注文したものと同じコーヒーを注文すると、少女は笑顔を浮かべながら厨房へと向かった。
その少女をディメは眺めていた。
「…ディメ?」
「…ん?ああ、すまない。ちょっと考え事をな」
ディメは椅子に座り直すと、テーブルの上で手を組んだ。
「この世界の神も魔王も両方消す。髪を殺すのは決定事項だとして、この世界の魔王を残したままにすると、よその世界の神がやって来るかもしれん」
「そりゃ面倒だな」
「だから別のやつに神と魔王を殺すのをやらせることにする…できれば同時進行でな」
ディメはカップを持つと、一口飲んだ。
ヴォルケと明光の二人もカップに口をつける。
穏やかな時間が過ぎていった。
椅子を引く音がし、悪魔二人が立ち上がった。
「それじゃあ…ここらで俺たちはお暇することにするよ、ディメ」
「…またな」
ディメは目を少し動かして二人を見上げた。
「じゃあな」
二人の悪魔は通りへと向かい、そのまま人混みに紛れていった。
その二つの後ろ姿が完全に見えなくなると、ディメはズボンのポケットからスマホを取り出すと、何処かへと電話をかけた。
数分の後通話を切ると、また別の番号へと電話した。
スマホをしまうとディメは席を立ち、喫茶店を後にした。
「…自分のコーヒー代くらい払えよなあ…」
と、呟いて。
◇◇◇◇◇◇
魔族領の再奥に位置する、魔王城。
玉座に座りながら、魔王は考えていた。
自分はこの世で最強の生物だ。
その自分を打ち破らんとする強者は現れるのか。
勇者か、はたまた聖教騎士団か。
元魔族領で何やら暗躍する力ある魔物か。
強者をねじ伏せ、君臨することこそが自分の生き甲斐だと考えていた。
…もしこのまま真の強者が現れることがないのなら、天界にいるという神を殺しに行こうか。
魔王は退屈を覚えながら、玉座に肘をついて座っていた。
魔王の索敵スキルに反応があった。
魔王は目を見開いた。
感知した敵の力の大きさ、その大きさから人間が召喚したという勇者であると考えた。
魔王の口角がつり上がる。
今まさに、自身が求めた強者が。
己の限界を引き出してくれるであろう好敵手が現れる!
こんなにも心踊ることがあるだろうか!?
魔王は溢れ出そうな笑い声を押し殺しながら、マントを翻して玉座から立ち上がった。
立ち上がった魔王の目の前に、ローブを着た魔族が現れる。
「魔王様、いかがいたしましたか?」
「…これよりここへ、我らの敵が現れる。迎撃の準備を備えよ!」
「…!…承知致しました!」
ローブの魔族が転移でその場を離れると、魔王は体から闘気を立ち上らせながら、腕を広げて天を仰いだ。
「さあ強者よ!我が元へ来るがいい!フハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!!」
「『竜殺しぃー…スターーーーーインパクトーーーーーーーーーーーーー』!!」
焼け焦げた更地のの中央。
巨大なクレーターの穴の奥深く。
その中央に一人の影が。
野球のユニフォームを身につけ、頭には野球で使うようなヘルメットをかぶっていた。
それの足元には、ぼろきれのようなものが転がっていた。
正確には、足で踏みつけていた。
それは生き物のようで、かすかに息をしていたが、直にその命も果てるだろう。
「…ピッチャー投げた…ストライク!!バッターアウト!!」
悪魔はそう叫んでガッツポーズをすると、嬉しそうに飛び跳ねた。
彼の名は”隕石の悪魔”。
天上より大地へと降り立ちて、全てを滅ぼす者。
◇◇◇◇◇◇
天上の神の領域。
その玉座にて、女神が頬杖をついて座っていた。
女神は退屈していた。
この世界の統治を命じられて幾千年。
代わり映えの無い世界の変化をずっと見続けていた。
そんな中、ふと気紛れに下界の人間に神の試練を与えた。
魔王と呼ばれる存在を作り出し、人間どもにその存在に立ち向かわせた。
人が死に、命を賭して戦う姿を眺めるのはとても楽しかった。
しかし、どんなものにも終わりは必要だ。
そこで異世界より勇者を召喚させ、魔王と戦わせることにした。
魔王が死ねば人間の勝ち、勇者が死ねば魔族の勝ち。
それによってこの世界の今後を定めようとした。
多少のイレギュラー的な存在もあったが、それもまた一興。
いい暇つぶしの娯楽となってくれた。
彼らも私を楽しませることができて本望だろう。
世界は、人間は、髪が作りだしたおもちゃなのだから。
「やあこんばんわ、素敵な月夜ですね」
女神が視線を上げると、玉座の間の中央…玉座に座るものが跪く位置に誰かが立っていた。
「…何者ですか…?」
「なに、この世界で一番月が綺麗に見える場所に足を運んだ、ただの通りすがりの者ですよ」
そう言いながら男は首に下げたカメラを手に持った。
藍色のアンチング帽をかぶったワイシャツを着ており、一見した限りでは新聞記者かカメラマンに見えた。
女神は眉間にシワを寄せながら男に話しかけた。
「神の御前で跪かないなんて無礼ですね…殺す前に、何か言い残すことはありますか?」
「そうですね…なら、写真を一つ…」
男は女神の背後にある大きな天窓、そこから見える夜空と三日月を見上げた。
「月夜を背景に、あなたの姿を写真で撮らせてください」
男はにこりと笑った。
眼鏡をかけて笑う顔は、どこか愛嬌のようなものを感じさせた。
この男がどこから来たか、なにしにここへ来たのか気になることはあったが、神である自分に対してなにができようかと女神は考えていた。
「…いいでしょう、許可します」
「これはありがとうございます」
男は軽く頭を下げると、カメラを構えた。
レンズの中に女神と月夜を映す。
調整のための動きが徐々に少なく、小さくなっていった。
「それでは撮りますよー…」
「はい、チーズ」
血が飛び散る。
女神の体がズタズタになった。
体のあちこちに何かに刺されたかのような傷ができていた。
その傷から止めどめなく血があふれ出た。
女神は口から血を吐き出しながら、目の前の男を驚愕と憎悪のこもった目で睨みつけた。
「き…きざま…!わだじに…何をじだ…!?」
「おや失敬。そういえばまだ名乗ってませんでしたね」
男は丁寧にお辞儀をすると、顔を上げてから名乗った。
「”写真の悪魔”…写す姿は真実、過去と今を混在させし者」
悪魔は手に持った古い型のカメラからフィルムを取り出した。
「私はカメラで写したものを、同じフィルム・データ上にある他の写真の世界を混在させることが出来るんですよ」
フィルムを天井の魔法で作られた灯りに照らして、透かし見る。
「今、『あなたの写った』写真と『大量の剣で覆われた部屋』の写真の世界が混在しました」
悪魔はニコリと笑った。
「あなたは大量の剣に刺されて大量出血…というわけですよ」
女神は玉座の上で痛みに苦しむ。
もがくその姿は、先ほどのような神々しさは微塵も無かった。
悪魔は一礼すると、その場を後にすべく踵を返した。
「ぎ、ぎざま…神に手をだじて…だだでずむと思うなよ…!!」
女神がそう叫びながら手を悪魔へと突き出した。
「じねえ!!!」
魔力が女神の中で膨張する。
悪魔は手に持ったフィルムの、女神が写った部分を両手で持つと、一息に破り捨てた。
女神の体が縦に裂けた。
血が噴水のように天へと噴き出した。
「私は美しいものの写真しか撮らないんですよ」
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