私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

文字の大きさ
98 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

98、お土産。

しおりを挟む



「あ……そういえばなんだけど、属性検査に使ってた石板。王家に返さなきゃないんだけど、これ、石板に戻らないし、使用者登録が私で固定されちゃってて外せないから、新しいのを用意して持っていかないと」


管理者権限で思い出した。
メアリローサ国の王家で使われていた属性検査に使われていた石板だった物。
魔導学院ここに強制転移させられる時に、ブレスレットのような形状となって、外れない。
というか、元の石板に戻らない。

大切に保管されていたようだから、確実に貴重なもの……機能も優秀だものね。
帰ったら返えさなくちゃいけないのに。

まぁ同じ石板であればいっぱいあった記憶があるから、問題はないんだけど、私が触るたびに同じ現象が起きても困るから、起動するにしてもせめてイエス、ノーの選択ができるようにしておこう……。


「ルーク、メアリローサ国で入手が難しい物とか、何か欲しい物はあるかい?」

「薬草であれば、それこそ、魔力熱に使うキナが欲しい。全く入ってこない」


『キナ』前世むこうでは伝染病であるマラリアの治療薬、解熱作用があるとして有名で、こちらでは更に伝染病である魔力熱にも効果がある。

マラリアは夜になると、高熱に吐き気、下痢を起こすのだけど、夜中くらいには治るんだ。
ただ、それで完治ではなくてね、また夜になるとさっきの症状が出る。
これが毎日続いていくのだけど、症状自体は軽くなっていくの。

……だから治ったと思うでしょ?

治ったと思うころにはね、内臓がぼろぼろになってるの。
血を破壊していく病気だからね。
内臓を直接攻撃する訳では無いのだけど、血が破壊されてしまうと、内臓は何もできなくなっちゃう……。


(日本では罹ることがほぼないと言われているけど、マラリアが頻発する地域では、赤ちゃんの主な死因にマラリアという名が出てくるんだ……)


まぁ、こっちの魔力熱はマラリアと違って、虫を媒介して広がるものではないけど、子供の致死率がとにかく高い。
数年おきに大発生をして、インフルエンザのように一気に広がっては、たくさんの子供の命を奪い去っていく。


「育つ気候が違うからね……あれは熱帯植物なんだよ。しかも使えるのは大きく育った木の皮の部分だから、メアリローサでは、発芽はしても、収穫できるまでは育……あ、育つわ」


つい最近、特長的な幅広の葉を見かけてる。
それにメアリローサ国って縦に微妙に細長い地形だったから、南の下限あたりでならもっとしっかり育つかもしれない。
それこそ収穫が見込めるほどに。


「似たような形状の雑草をこの前、聖樹の丘からの移動中に見かけてる。あれ、キナだわ。ただ、すごく細かったから、メアリローサ国では自生したとしても一年草、もしくは宿根草みたいな感じなのかもしれないね。原料って意味だと、そもそも木化した部分を使うから、5年から6年以上育たないと無理だし……環境でいうなら国境の南の下限辺りなら、何とかなるかも?」

「……ひとまず資材庫のものを少し分けてもらおうか。種もあるなら欲しい。栽培も視野に入れたい」


ルークの目が光る。研究好きだもんね。
エルフの得意分野とも言うべき薬草の事だし、これは任せてしまった方が確実な気がする。

ま、栽培って言っても、魔素の関係上、畑では育てられないから、気候の合いそうな森に植えて放置するしかないんだけどさ。

熱病への治療薬としても使われてるくらいだから、魔力熱以外にも、効能が期待できるかもしれないね。


「あとはないかな?」

「流石に急には出てこないな」


ルークが唸りだしそうな雰囲気で、顎を軽くさわる。
その一つ一つの仕草にすら、見惚れてしまう綺麗なお兄さんなのに、今の仕草はどうにもおじいちゃんっぽくて思わず笑ってしまい、不思議そうに顔を傾げられてしまった。
何でもないのよ?ふふふ。

紅茶や焼き菓子の注文と同じように、薬草と石板をリストに入れた。
……ちゃんと持ってきてくれるかな?
ダメだったら直接取りに行かないと…と思ってたら、もう届いてました。早すぎ。

あとは……本題かなぁ。


「じゃあ、必要そうな物はおいおい思い出したらって事で。ずいぶん脱線しまくっちゃったけど、本題の帰宅ルートを考えないといけないね」

「……王には『死の森を抜ける』と説明してしまったが、転移魔法陣ゲートを最大限に使いたいところだな」


正直、今のメンバー全員が戦闘に不向きである。
主力になるだろうルークは強いと思う。
それでも『死の森』では『最低限なら動けるだろう』というレベルになってしまうんだ。
しかも、幼児2人を守りながらでは、到底無理だ。


(きっと必死に守ってくれるだろう、けど、そういう状況は作らないのが一番だ)


みんな無事で帰らないと、ダメ。

応接のテーブルをつつーっと指で突くと、周辺マップの他に転移魔法陣ゲートの設置されている場所がほんわかと光って表示された。
今思うにこれって、スマホとかパッドみたいな感じだねぇ。

持てるものなら、このテーブルを持ち帰りたいわ……。
めちゃくちゃ、重そうだけどね。


魔導師学園ここに転送された時みたいに直通ルートが使えたらいいんだけど……緊急用だから一方通行みたいなのね。一番、メアリローサ寄りのルートだと……あれ?聖樹の丘あたりにゲートがある」

「あぁ、ただそれは一度、上に出てから乗り換えないといけない」


他のルートを探してみるけど、学園内からの直通で行けるゲートは、魔導学園の上に広がっている王国内か王国の外……今では思いっきり死の森の中です。ここは危なすぎる。


魔導師学園ここから直通だと……一番メアリローサ方面に移動するにしても、死の森のど真ん中……か。だと、やっぱり一度上に出て乗り換える方が早いね」

「上のゲートが生きてるかは確認できるか?」


『上』つまりさ、この魔導学園から、まず上部にある王国に向かうことになる。
王国は……魔物の氾濫スタンピードで滅びてしまってるんだ。
ただ、その王国にあった、転移魔法陣ゲートの乗り換え場所まで行かないといけない。

まぁ、あれだ。前前世むかしというかシシリーの生きていた時代は、魔法が使える人にとっては、遠距離の移動って結構楽だったんだよ。


(魔力がなくても、代行で魔力を込めて魔法陣を発動してくれるお仕事もあったし)


前世にほんにある駅のような場所で、たくさんの転移魔法陣ゲートが描かれていて、それぞれ行きたい場所へ行けた。
その周辺には、衛兵の詰所があって、さらに屋台なんかも出てて……賑やかだったのになぁ。
見る影もないんだろうなぁ。

転移魔法陣の管理は、開発者が……つまり魔導学園が、定期的に保全点検に動いてたのを記憶してる。

地図上では機能していると光ってる表示になるみたいで、逆によく使ってた位置で光っていない部分もあった。
街中のだから、きっと戦闘とかがあって魔法陣が崩れてしまったのだろうね。


「生きてる。でも周囲が安全かどうかはわからないの」

「それは調べさせよう風の乙女シルヴェストル、上のゲート、わかるな?様子を見てきてくれ」

『はいはい~行ってくるわ。あと王から「気をつけて」ってのと、宰相から「お土産よろしく」って』


いつの間に戻ってきてたんだろう?
風の乙女シルヴェストルの可愛らしい声と、何故か…私が指でつんつんしていたテーブルのあたりから、小さな手がにょきっと生えるように現れて「バイバーイ」とでも言うように振られると、また姿を消してしまった。

えっと……風の乙女シルヴェストルのおまけのような伝言に思わず笑ってしまったのだけど……ねぇ、お土産ねだってる宰相って、まさかの父様じゃ無いよね?!



しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!

饕餮
ファンタジー
  書籍化決定!   2024/08/中旬ごろの出荷となります!   Web版と書籍版では一部の設定を追加しました! 今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。 救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。 一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。 そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。 だが。 「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」 森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。 ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。 ★主人公は口が悪いです。 ★不定期更新です。 ★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。

孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下

akechi
ファンタジー
ルル8歳 赤子の時にはもう孤児院にいた。 孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。 それに貴方…国王陛下ですよね? *コメディ寄りです。 不定期更新です!

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

処理中です...