私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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175 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?

175、読めない。

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そう、読めなかったのだ。
日本人が『中国語は喋れないけど漢字が使われているから、なんとなく言わんとしている意味はわかる!』なんて話をよく聞くけど、そんなレベルじゃない。

一応……私が知っている文字は『古代語・古代文字』と言われていても、1000年前むかしはこの大陸全土で公用語として使われていたのだから…その文字が長く使われていく間に変形していったものが今使われている文字なのだろう。と、いうのを想定していたのだけど……全くその面影を感じない。


「……文字、読めないね」

「ぜんぜんちがう、じだね」


お手上げ!と言った表情で、諦めたのか奥の本棚の陰からカイルザークがこちらへと歩いてくるのが視界に入った。


「こっそり来た意味が……」

「こまった……もっともっと、ふるいほんをさがしたら、よめたりするのかな?」

「古さにもよるでしょ。ぱっと見た感じ、読めそうなものはなかったよ。あと、奥の小部屋で、これを見つけた……」


カイルザークが小さな宝石箱の様な物を渡してきた。
かなりのアンティークな雰囲気のある、木製に燻された銀の縁取りがしてある小箱。

って、奥の小部屋って、あの短時間でどこまでダッシュしてたのこの子!
ぱっと見るにしても、確認範囲広すぎだよ……。


「ありがとう?」


ジト目になりつつ、宝石箱をよく確認しようとカウンターにある部分照明の明かりを強くしようとした瞬間。


「……あ、やっぱいた!ふぁ~…」


真後ろから声が響き、びくりと飛び上がる。
あまりに呆然としすぎていたのか、声に驚きつつも後ろを振り返ると、困った表情のユージアがいた。

ドレスシャツにズボンのみという、季節から考えても、執事や使用人という服装よりはかなりラフな格好で、あくびをしつつの登場だったので、これはセリカに叩き起こされたとかなんじゃないのかな……と思った。


「部屋にいないって騒ぎになってるから、早く戻って…『セシリア~、カイルザーク~いるか~い?』……奥の…細い職員廊下が近道だよ『セシリア~、カイ~!どこ~?』そっちの…僕が来た道の先にはセリカがいるからダメ。がんばれ」


あっちはダメ、こっちもアウト…。あくびをしつつ教えてくれるユージア。
やっぱり使用人モードだと10代の姿なんだね。
眠くてもなんとか魔力の調整ができているという事だ。


(この前みたいに、寝ぼけたまま思いっきり本来の年齢とその姿であるエルフまで一気に戻ってないあたりを考えると、毎日頑張ってるんだなぁと感心……しちゃダメか)


今ここに居るのは、私やカイルザークが真夜中に自室を脱走したのが原因なのだもの。
ユージア、ごめんね。


「あ、ありがとう」

「行こう、セシリア……」


カイルザークに手を引かれて、走り出す。
は、速いって!
私が人間だってことを忘れているのか、加減自体を忘れているのか……私の全力疾走よりもずっと速い走りで、私を引っ張っていく…!
と、思いきや、いきなり急停止されて、私は止まりきれず勢いのままに、もつれかけた足でそのまま前へと飛び込んだ。


「ちょっ…わぁっ……ぶ!」

「あ……セシリアごめん……」


制御不能のスピードで走られた挙句の急停止ですよ?!
同じ様に止まるとか無理だからね?

と思いつつ、ふと疑問に思う。
私は転ばずに何か柔らかいものに突っ込んだわけなんだけど、なんだコレ?
廊下の真ん中にそんな柔らかくて温かい……と思っているとふわりと体が浮かび上がった。


「見つかっちゃった」

「うん。見つけちゃった」


カイルザークの焦る声と、少し面白がっている様なセグシュ兄様の声。
セグシュ兄様の声にいたっては、真横から聞こえる。
というか、セグシュ兄様に抱き上げられている私……えーと、勢い余ってセグシュ兄様に突撃しちゃったのかな?


「セシーは、誘拐騒ぎの直後だからね?少し大人しくしてなさい」

「はぁい……」


私を抱き上げたまま、自室がある棟へと向かって歩き始める。
視界の端にセグシュ兄様の後ろについて歩く様にしているカイルザークの頭も見える。

……セグシュ兄様も、ユージアと同じ様に軽装で……でも、小さな杖を腰に引っ掛けて来ていた。
やっぱり今も厳重警戒中なんだなぁと思い、夜の散歩はちょっと軽率すぎたかな…と、少しだけ反省する。
少しだけ、ね。


「……ん?セシー、何持ってるの?」

「これ?」


不思議な表情で、顔を覗き込みつつ、ぽんぽんと服が不自然に盛り上がっている部分を軽く押される。
カイルザークにすごい勢いで引っ張られた時に、片手では持っていられなくてポケットに無理やり突っ込んでしまった箱。
そんなに大きなものではなかったのだけど、抱き上げるには違和感があったのかな?
無理やり詰め込んだだけあって、抱かれたままでは取り出せずに、一度抱っこから下ろしてもらう。
なんとか引っ張り出して、セグシュ兄様へ渡すと、魔石の照明へと近づいて小箱を照らし出す。


「あぁ~!これは懐かしいね!……セシリア、これ、母さんかセリカに頼んで使ってもらうと良いよ!はい」


どうぞ!大事にしてね。笑顔で返された。
何度も何度も磨き上げられて、消えかけた彫金の中にぼんやりとだけど、見覚えのある紋章を見つけて目が釘付けになる。


「……つかうの?」

「うん、使うものなの……特に、キミ達みたいに眠れなかったときに使うの」

「お香、ですか?」

「違うよ。子供が喜ぶ…もっと面白いものだよ……僕は好きだったなぁ…って、お香だなんてカイは渋いね!」


ふふふっ。と使っていた頃を思い出したのだろうか?
セグシュ兄様はふわりと優しく笑う。


「子供用……」

「きっと、カイも気に入ると思うよ?試してみてね!」


部屋に向かって薄暗い廊下を歩きつつ、セグシュ兄様がにこにこと楽しそうに笑う。
カイルザークは箱の機能について興味津々だったけど、むしろ私には先ほどちらりと見えた紋章が気になってしょうがない。


(なんで、中央公国の紋章のついた物がここにあるんだろう?公爵家だからかな?母様の嫁入り道具にしても……うーん)


母様の嫁入り道具ならば、紋章はメアリローサの紋章に付け替えるなり、入れ直すよね?
そもそも、母様は中央公国の王家から降嫁したわけじゃないから……元々誰のものだったのだろう?

小箱をじーっと見つめながら歩いていると、私の部屋の前に……父様と母様と…セリカがいた。
遠目に見えた父様は仁王立ちで……いや、形相もまさに仁王様。薄暗い廊下の雰囲気も手伝って、恐ろしい。


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