381 / 455
はじまりはじまり。小さな冒険?
381、たまにはまったりしてもいいよね。
しおりを挟む食事をしながら、ヴィンセント兄様が今日の予定を説明する。
事前の説明通り、帰宅はお昼…というか昼ちょっと前になるらしい。
お腹空いちゃわない様に、ちょっと多めのおやつが出るらしい。
それまでは自由!というか、それぞれに割り当てられた個室の探検をすることになった。
ただ、残念な事にエルネストとカイルザークは戸籍上は公爵家の子になっているのだけど、星詠みのクロウディア様の血をひくわけではないので、個室は割り当てられていないようだった。
つまり『おまじない』を使っても『避難所』に単独では入場できないらしい。
追加とかできればいいのにと思いつつも、嫁入り道具だものね。しょうがない。
思ってたより、条件がシビアだった事に、2人にはちょっと申し訳ない気分になったのだけど、当の本人たちは『そんなに部屋いらない』と気にした様子はなかった。
(まぁ公爵家の自室も広いもんねぇ。一般の感覚で見たら、あの部屋だけで充分満足だよ)
とりあえず端っこで、小さくなっていたい時があるくらいに広いから。
という事で、レオンハルト王子とシュトレイユ王子との2人で、エルネストを両端からガッチリと腕を組んで、王子たちの部屋へと強制送還されていった。
カイルザークはそんな自由時間開始と同時に、大きなあくびを連発させると、サロンの奥に2台だけある、いつも出したままにしているベッドに潜り込み、早々に寝てしまった。
課題の疲れから、回復しきっていないらしい。
私はと言えば……。
「うーん。部屋割りどうしようね……?」
個室だよ!と割り当てられた部屋に入ってすぐのところに、座り込んで唸っていた。
(分けたくないわけじゃないんだ、部屋はあげるつもり)
でもね、常に一緒にいたい双子に、常に一緒に居れない個室を与えてどうするのさってお話でね。
それはつまり完全な個室にしてはいけないんじゃないかな?って思ってね。
部屋割りで頭から煙を出していた。
「よし!決めた!再配置するから、一度部屋から出てね!」
もう、あからさまにワクワクと期待に目を輝かせて、こちらを見つめている、2つの視線が痛いっ!
個室入り口のドアの位置を、中央に移動させて、左右に個室を作った。仕切りは壁板の入っていない本棚。
飾り棚みたいな感じだね。
その棚の切れ目が、部屋の出入り口になっている。
ちなみに扉はつけていない。個室だけれど、せっかくのお部屋なんだから、共に相手の気配が分かる様な構造にした。
……で、奥には共同の、というか私の部屋。
構造としては2人でのシェアハウスっぽい個室の配置にして、共有スペースにあたる部分を私の部屋にした。
ま、棚に荷物が置かれるまでは、二人の個室の壁はスケスケで、ほぼ有って無いようなものだけど。
「……こんな感じで、どう?」
『『最高!』』
再配置が終わって、中を覗いた2人。
またもや同じ驚きと、言葉がハモっている。
どうにも、嬉しすぎると、個性を意識する余裕すら無くなってしまうらしい。
正直なところ、ずっと一緒にいたのに、シシリーの時では見る事の出来なかった2人の、心の底からの『嬉しい!』を見れたような気がして、ちょっと複雑な気分になる。
シシリーの時はひたすらに、暴走状態の2人の行動に頭を悩ませ続けていたのに。
今やむしろ、とても優秀な立ち回りのできる、立派な精霊になっちゃってる。
(いつのまに成長したんだろう?きっかけは?何があったのだろう?…いろいろ考えてしまうよ)
共有スペースにはちょっとしたキッチンとトイレまで設置されていて……まぁ、二人利用シェアハウス風って言っても、ものすごく広いからさ……。
彼らの個室だってパッとみた感じで50畳はあるんじゃないかなぁ。
ソファーセットにベッドに…と個人のものの他に、ゲストルームを作っても余裕そうな広さだもの。
一応私の部屋!という事で置いてあるソファーにばふっと倒れ込む。
表面が革製なのが不思議なくらいに柔らかく、深く沈み込む。
革地のしっとりとした心地よさに、意識が遠のきかける。
(……このまま、時間になるまで寝てようかなぁ)
とりあえず部屋は、寝る場所さえあれば良い私としては、あまりにも広すぎると逆に気疲れしちゃうんだ。
ここにいていいのかな?とか、自分が凄く場違いな気がしちゃって。
そうそう、一応、個室!として明け渡したスペースの中で、ルナもフレアもうろうろしてみたり、どこからか持ってきたのか、小物を飾りはじめたりしている。
『セシリア様…『宝』の回収が完了いたしました』
突然、耳元で声が響き、びくりとすると、目の前には大きな漆黒の犬が首を垂れるようにして、覗き込んでいた。
「…はっ…びっくりした…!」
……飛び起きたつもりなんだけど、ソファーに深く沈み込んでいた身体は、もがくとさらに沈み込み、手足だけが上に持ち上がったような状態になっていた。
『何してるの…ですか…?』
「起き上がれないの……」
深く沈み込んでしまって、寝返りもできずに、手足を上へあげてバタつかせていると、硬い物に触れたので、掴むとそのままクイっと引っ張りあげられた。
ヘルハウンドの爪だった。
が、勢い余って、コロリと床に転がり落ちる。
『すみませんっ…!』
「ん?大丈夫。起こしてくれてありがとう!」
仔犬の姿ではなく、ヘルハウンドの姿のままで現れたのは、何かわけでもあるのかな?と、思いつつ、その立派な姿を眺めてしまう。
(あ……これ、ルナとフレアと同じだわ、嬉しすぎて仔犬になるの忘れてるだけ……)
あり得ないほどに尻尾がブンブンと揺れていて、目もまんまる。
何も言わなくても、嬉しさでいっぱいなのが一目でわかってしまう空気を纏っていた。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
転生したら幼女でした!? 神様~、聞いてないよ~!
饕餮
ファンタジー
書籍化決定!
2024/08/中旬ごろの出荷となります!
Web版と書籍版では一部の設定を追加しました!
今井 優希(いまい ゆき)、享年三十五歳。暴走車から母子をかばって轢かれ、あえなく死亡。
救った母親は数年後に人類にとってとても役立つ発明をし、その子がさらにそれを発展させる、人類にとって宝になる人物たちだった。彼らを助けた功績で生き返らせるか異世界に転生させてくれるという女神。
一旦このまま成仏したいと願うものの女神から誘いを受け、その女神が管理する異世界へ転生することに。
そして女神からその世界で生き残るための魔法をもらい、その世界に降り立つ。
だが。
「ようじらなんて、きいてにゃいでしゅよーーー!」
森の中に虚しく響く優希の声に、誰も答える者はいない。
ステラと名前を変え、女神から遣わされた魔物であるティーガー(虎)に気に入られて護られ、冒険者に気に入られ、辿り着いた村の人々に見守られながらもいろいろとやらかす話である。
★主人公は口が悪いです。
★不定期更新です。
★ツギクル、カクヨムでも投稿を始めました。
孤児院の愛娘に会いに来る国王陛下
akechi
ファンタジー
ルル8歳
赤子の時にはもう孤児院にいた。
孤児院の院長はじめ皆がいい人ばかりなので寂しくなかった。それにいつも孤児院にやってくる男性がいる。何故か私を溺愛していて少々うざい。
それに貴方…国王陛下ですよね?
*コメディ寄りです。
不定期更新です!
つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました
蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈
絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。
絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!!
聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ!
ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!!
+++++
・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)
3歳で捨てられた件
玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。
それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。
キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる