私は「あなたのために」生まれてきたわけではありませんのよ?~転生魔法師の異世界見聞録~公爵令嬢は龍と謳う。

まゆみ。

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はじまりはじまり。小さな冒険?

431、のんびり、まったり。

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『ズボンは、シシリーもはいてたし。スカートをはいた男性は見たことがないし』

「まぁ、確かに。スカートの男性がいたら…悲鳴が上がるかも」

『それに、学園祭でドレスを着た男性が「女装」って言われてたし。間違いじゃないでしょう?』

「ああ…そうだねぇ……」

『でも、これだと、シシリーみたいにズボンをはいてる女性がいたら、区別がつかなくなっちゃうんだよなぁ』


 いやいやいや……ちょっと待って?!
 そこは体格とかで、区別つくよね?
 ……そう、言い返そうと思ったけど、真剣に悩んでいるようなので、あえて言わないことにした。


(あれかなぁ…前世にほんで、私は日本人だったから、あの国ではみんな黒い髪だったのよね。だから、見慣れた日本人以外の、別の国の人間を見かけると、正直、見分けがつかない)


 すごく失礼だけどねぇ…本当に見分けがつかなくて。
 体格の良い人だと、性別すら判断できない場合があった。
 こうなってしまうと、もう、服装から判断するしかないもんね。


「……ああ、そうだ!……ルナとフレアが生まれた場所。あそこは2人だけのものだよね。誰かが…勝手に使ってたら、怒る?」

『悪さしてたら…怒る』


 少し嫌そうに、むっと口をへの字にしている。
 この様子だと、勝手に誰かが立ち入るだけで、怒ってそうだなぁ。


「じゃあ同じ精霊や妖精だったら怒らない?」

『……怒らないけど、やっぱりイヤ』


 湯船の縁に頬杖をつきながら、ルナを見上げると、嫌そうな顔のまま、バタ脚のように足をぱたぱたとしている。


「そこにいるのが、眷属の…ヘルハウンドたちだったら?」

『まぁ、しょうがないかなって思う』

「……多分だけど、そういう感覚なんだと思うよ?」


 あー…でも、うーん…。
 裸や着替え中を見られて悲鳴!というのは…どう例えたら良いのか、全く思い浮かばず唸っていると、目の前に冷たいレモン水が置かれた。


「同じ精霊だけど…なんかイヤ。ヘルハウンドは眷属だから多少は許せる。そこの種類で分けるところが、人間だと性別なん…だと思うんだけど…」

『ちょっと違うだけなのに、ね』

「うん…まぁ、そのちょっとがものすごく大きいと思うよ」

『やっぱり…難しいね』


 形状で言えば、よほど特殊な場合を除いては、2種類しかいないんだから。
 それなりには大きな種別だとは、思うけどね。

 ……話に夢中になってしまったのか、少しのぼせてしまったらしい。
 レモン水が異常に美味しくて、思わず一気飲みをしてしまい、大きく息を吐く。

『着替え持ってくるね!』と、バスタオルを残してルナが姿を消してしまった。


(結局、1人でお風呂!ではあったけど……満喫どころか、室内を見て回ることすらし損ねちゃったのよねぇ。ま、今度、こっそり来るしかないか)


 そのあとは…のぼせというより、湯当たりに近かったようで。

 ガーデンテーブルのセットが置かれているところまで、くらくらしながら身体を拭きつつ戻ると、着替えを持ったルナがちょうど姿を現して…。
 着替えを手伝ってもらって、涼んでたんだ。

 水分を摂っても摂っても、喉が渇くし、ひたすらに汗が出て。
 とにかく暑くて、ソファーでぼーっとしてたはず。

 ソファーのあたりは、お風呂場のはずなのに、緩やかで涼しげな風が吹いていて心地が良くてね……涼んでいるうちに、寝てしまったようだった。


(……先日の誰かさんたちと同じ事をしているような気がしたけど、気にしない)


 寝てしまった後、それがどうしてこうなったのか……なぜか腕の中にはエルネストがいる。
 泣き疲れて寝てしまったエルネストを、なだめるように背をさすり抱えながら、ベッドに腰をかけている。






 ******






 ──時は少し遡って。


 いつの間にやら寝てしまっていたらしい私は、ルナに抱えられて、ベッドに寝かされた感覚で、目が覚めた。
 周囲からは『あのお風呂、気持ち良いもんね!』なんて、笑い声が聞こえている。

 ……起きたけど、なんかそのまま起きるには恥ずかしい雰囲気だったので、そのまま狸寝入りを続行することにした…のだけど、これは無理。


「うわぁ……っ!何これ?!」

「あ…起きたよ?セシリア?」


 狸寝入りしつつ、うっすらと目を開けた途端に飛び込んできた光景に、思わず声が出てしまった。
 それくらいに、とんでもない場所に寝かされていた。

 ゆらゆらと緩やかな風に遊ぶ天蓋は、いつものボックス型から、天井へ向かって絞っていくタイプに変わっていて、その薄い布越しには、満天の星が見えている。
 そう、天井があるはずなのに、眼前に飛び込んできたのは、星空だった。


(どういう…部屋の構造になってるの……?)


 思わず飛び起きてしまって、直後、くらっとなりかけたのを、さらに笑われたような気もするけど、気にしない。

 そそくさとベッドから降りて、少し長めの天蓋の布を、かき分けるようにして外に出る。

 新月に近い、淡い月の明かりが降り注ぐ……って事で、ここは外?


「面白い部屋だよね。こんな野営だったら、毎日でも大歓迎なんだけどな!」

「ありがとう…いや、本当に外でやったら、虫とか雨とか…いろいろ大変だと思うよ?」

「セシリアの気にするとこは、そこなんだ…?」


 まだ少し寝ぼけている頭を総動員して、周囲を見渡していると、ユージアが笑いながら肩にストールをかけてくれた。
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