もう二度と目覚めたくないと願った51回目、冷酷な王子に愛を刻まれる

AzureHaru

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王子が持つ「50回分の断片」

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ヴィンセントが抱える記憶は、整合性の取れた「記録」ではなく、心臓を直接抉られるような、生々しくもおぞましい**「感覚の断片」**です。
彼は、自分がなぜこれほどまでにリシュールに執着するのか、その全容は知りません。ただ、眠るたびに、あるいは彼女の姿を見るたびに、脳裏を過る凄惨な光景に突き動かされています。

1. 執行人としての感触
最も鮮明なのは、彼自身が彼女の「死」に深く関わっていた記憶です。
 * 剣の重み: 騎士団長として、自ら彼女の首を撥ねた時の手応え。
 * 冷徹な宣告: 震える彼女を冷たく見下ろし、死罪を言い渡した時の自分の声。
 * 返り血の熱さ: 頬に飛んだ彼女の血が、呪いのようにいつまでも熱く焼き付いている感覚。

2. 彼女の「無駄な足掻き」への既視感
51回目の今、リシュールが「何もしない」ことに違和感を抱く原因です。
 * 10回目: 毒を盛られた彼女が、必死に自分の袖を掴んで「私はやっていない」と涙ながらに訴えた姿。
 * 25回目: 国外追放の間際、刺客に襲われた彼女が泥を這ってでも生き延びようとしていた凄惨な瞳。
 * 40回目: 聖女として振る舞い、民衆から愛されながらも、結局は裏切られ火刑に処された時の、すべてを悟ったような微笑。

3. 50回目:決定的な「壊壊」
直前の記憶だけは、一際強く残っています。
 * 処刑台へ向かう彼女が、ヴィンセントの顔を見た瞬間、憎しみすら消え失せた「空っぽの瞳」で笑ったこと。
 * **「次は、もっと上手く殺してね」**という幻聴。
 * 彼女が死んだ瞬間、胸の奥が物理的に砕け散り、耐えがたい「喪失感」に狂いそうになった衝動。

◆王子の独白:なぜ彼女を監禁するのか
「……ああ、そうだ。僕は何度も、君が壊れるのを見てきた」

ヴィンセントは、眠るリシュールの細い首に手をかけます。絞めるためではなく、そこに確かな鼓動があるかを確認するために。

「ある時は僕が殺し、ある時は君が自ら果てた。理由はなんだっていい。ただ、どんなに繰り返しても、最後には君がいなくなる。その結末だけが、僕を地獄に突き落とすんだ」

彼にとって、リシュールが病弱であることは、むしろ**「僥倖(ぎょうこう)」**でした。
外の世界へ逃げる力もなく、自分がいなければ呼吸を続けることすらままならない。

「今度は、僕が君を殺させない。運命からも、他の男からも……死からもだ。君はただ、この温かな鳥籠の中で、僕だけを見て衰えていけばいい」
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