黄金の檻、血塗られた再会

AzureHaru

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第七章: 皇后が遺した「真実」

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その時、エレナの魔晶石がさらに強く輝き、壁一面に「古代の予言の真実」を映し出した。

『ヴィルヘルム様、あなたは誤解しています。黒い魔力は終末の予兆ではありません。それは、帝国が真の危機に瀕した時、すべてを包み込み、守り抜くための「夜の帳(とじまり)」なのです』

映像の中のエレナは、赤子を抱き、涙を流しながら微笑んでいた。その腕の中には、今と同じ黒い魔力を放つ赤子――リゼがいた。

『私はあの子を連れて逃げます。あなたが皇帝である限り、あの子を愛せないのなら……私は母として、あの子の命を選びます。いつか、あの子が自らの足でここへ戻ってきた時、どうか、世界で一番優しい父親として迎えてあげてください』

静寂が部屋を支配した。
リゼは、自分が「不吉」だから捨てられたのではなく、「愛されていたから」隠されたのだという事実に、心が激しく揺さぶられる。
しかし、目の前で項垂れる男は、マーサを殺した軍勢の主でもある。

「……今さら、そんなことを言われても」

リゼの声は震えていた。憎しみという一本の杖で立っていた彼女にとって、この「愛」の真実は、あまりに重く、残酷だった。

「私は、あなたを許さない。私を育てた母様を殺したあなたを、お父様なんて呼ばない……!」

ヴィルヘルムは顔を上げ、リゼを見つめた。その瞳には、かつての冷酷な皇帝の影はなく、ただ後悔に濡れた一人の男がいた。

「許さなくていい。……ただ、これだけは言わせてくれ。リゼ、生きていてくれて、ありがとう」

父と娘の間に流れる、氷のような沈黙。けれど、城の結界は今もなお、リゼの魔力を温かく迎え入れるように、静かに脈打っていた。
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