黄金の檻、血塗られた再会

AzureHaru

文字の大きさ
6 / 12

第六章:鏡合わせの真実

しおりを挟む
リゼの魔力に呼応し、寝室の背後にある飾り壁が、重々しい音を立ててスライドした。そこは皇帝であるヴィルヘルムさえ知らなかった、皇后エレナの隠し書斎だった。
埃一つないその部屋の中央には、一通の手紙と、一つの魔晶石が置かれていた。

「これは……エレナの……?」

ヴィルヘルムが震える手で魔晶石に触れると、部屋いっぱいに皇后エレナの優しい、けれどどこか悲痛な声が響き渡った。

『ヴィルヘルム様。これを聞いているということは、あの子が……私の愛したもう一人の娘が、ここへ戻ってきたのですね』

リゼは息を呑んだ。殺したいくらい憎い男を、愛おしげに呼ぶその声。それは、自分を育ててくれたマーサとは違う、けれど血が沸き立つような懐かしさを覚える声だった。

ヴィルヘルムはその場に崩れ落ちるように膝をついた。リゼは冷ややかな視線を彼に向けるが、彼の肩は激しく震えていた。

「……リゼ。私は、お前を殺そうとした」

絞り出すような声だった。

「建国以来、我が一族には『黒い魔力を持つ子は、帝国に終末をもたらす』という呪わしい予言があった。神官たちは騒ぎ立て、民の不安を煽った。私は……弱かったのだ。皇帝として、生まれたばかりのお前を守るよりも、帝国の安寧を優先しようとした」

リゼの瞳に、激しい嫌悪が走る。

「……たった一人の赤子を殺して、安寧? 皇帝なんて、そんなに偉いものなの?」

「いいや、違う! 私は臆病だっただけだ。お前のその力が、私自身を、そしてエレナを傷つけることを恐れた……。お前を愛することよりも、失うことの恐怖に負けたのだ。だから、処分を命じた」

ヴィルヘルムは顔を覆った。

「だがエレナは、私を欺いてでもお前を救った。彼女は、私を信じてはいなかったのだ。お前から父親を奪ったのは、他の誰でもない……この、私自身の愚かさだ」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

ある国立学院内の生徒指導室にて

よもぎ
ファンタジー
とある王国にある国立学院、その指導室に呼び出しを受けた生徒が数人。男女それぞれの指導担当が「指導」するお話。 生徒指導の担当目線で話が進みます。

とある令嬢の断罪劇

古堂 素央
ファンタジー
本当に裁かれるべきだったのは誰? 時を超え、役どころを変え、それぞれの因果は巡りゆく。 とある令嬢の断罪にまつわる、嘘と真実の物語。

サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします

二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位! ※この物語はフィクションです 流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。 当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

結婚した話

きむらきむこ
ファンタジー
乙女ゲームのバッドエンド後の世界で、子爵家令嬢ジュリエットは侯爵家当主のオーチャードと結婚したが…  恋愛色はありません。

姉から全て奪う妹

明日井 真
ファンタジー
「お姉様!!酷いのよ!!マリーが私の物を奪っていくの!!」 可愛い顔をした悪魔みたいな妹が私に泣きすがってくる。 だから私はこう言うのよ。 「あら、それって貴女が私にしたのと同じじゃない?」 *カテゴリー不明のためファンタジーにお邪魔いたします。

壊れていく音を聞きながら

夢窓(ゆめまど)
恋愛
結婚してまだ一か月。 妻の留守中、夫婦の家に突然やってきた母と姉と姪 何気ない日常のひと幕が、 思いもよらない“ひび”を生んでいく。 母と嫁、そしてその狭間で揺れる息子。 誰も気づきがないまま、 家族のかたちが静かに崩れていく――。 壊れていく音を聞きながら、 それでも誰かを思うことはできるのか。

処理中です...