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もうあの頃には戻れない
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その後の話(分岐①)
駅前の人混みの中、湊はふと立ち止まった。
見覚えのある背中、でも──違う。
そこに立っていたのは、あの頃の秋斗ではなかった。人々の視線を一身に集め、カメラのフラッシュが絶え間なく飛ぶ。今はもう画面越しでしか見ることができないはずの、秋斗が、雑誌の表紙のような笑顔を浮かべて目の前に立っていた。
「秋斗……?」
声は届いたかどうか。人波にかき消されそうになりながらも、湊は歩み寄って、後一歩で立ち止まざるおえなかった。否、近づけなかったのだ。
既に、雑誌やテレビの世界で輝く“有名人の秋斗”――その人物に不用意に近づくことは周囲が許さなかった。
秋斗は一瞬湊を見た。
――いや、認めたのか、それともただ偶然目が合っただけなのか。湊には判別できなかった。
「湊……?」
そう呼ばれた気がしたが、自分の勘違いかもしれないと思いなおす。
今となっては、もう手を伸ばしても届かない存在の秋斗。
湊はその場を離れることができず立ち尽くしたまま。
そして、思い出すのはあの日、身代わりに耐えきれず消えた秋斗の強張った表情。あの時は手を伸ばせばまだ届く距離に秋斗は存在した。
でも今は──手の届かない場所で輝いている。
涙が頬を伝う。
湊はその涙を拭うこともせず、秋斗をみつめる。もう二度と過去には戻れないのだと痛感しながら‥‥。
「……今度こそ幸せでいてほしい」
湊は秋斗を見つめたまま小さく呟いた。
目の前の秋斗は笑っている──もうその笑顔が自分に向けられることはないとわかっていても‥‥。
しばらく秋斗を見つめていた湊だが、一度深呼吸をすると、そのまま秋斗に背を向け歩き出し、人混みに消えていった。
胸は痛む。けれど、それでも湊は秋斗を忘れられない。
──決して届かない光として、心の奥に焼き付いたまま。
駅前の人混みの中、湊はふと立ち止まった。
見覚えのある背中、でも──違う。
そこに立っていたのは、あの頃の秋斗ではなかった。人々の視線を一身に集め、カメラのフラッシュが絶え間なく飛ぶ。今はもう画面越しでしか見ることができないはずの、秋斗が、雑誌の表紙のような笑顔を浮かべて目の前に立っていた。
「秋斗……?」
声は届いたかどうか。人波にかき消されそうになりながらも、湊は歩み寄って、後一歩で立ち止まざるおえなかった。否、近づけなかったのだ。
既に、雑誌やテレビの世界で輝く“有名人の秋斗”――その人物に不用意に近づくことは周囲が許さなかった。
秋斗は一瞬湊を見た。
――いや、認めたのか、それともただ偶然目が合っただけなのか。湊には判別できなかった。
「湊……?」
そう呼ばれた気がしたが、自分の勘違いかもしれないと思いなおす。
今となっては、もう手を伸ばしても届かない存在の秋斗。
湊はその場を離れることができず立ち尽くしたまま。
そして、思い出すのはあの日、身代わりに耐えきれず消えた秋斗の強張った表情。あの時は手を伸ばせばまだ届く距離に秋斗は存在した。
でも今は──手の届かない場所で輝いている。
涙が頬を伝う。
湊はその涙を拭うこともせず、秋斗をみつめる。もう二度と過去には戻れないのだと痛感しながら‥‥。
「……今度こそ幸せでいてほしい」
湊は秋斗を見つめたまま小さく呟いた。
目の前の秋斗は笑っている──もうその笑顔が自分に向けられることはないとわかっていても‥‥。
しばらく秋斗を見つめていた湊だが、一度深呼吸をすると、そのまま秋斗に背を向け歩き出し、人混みに消えていった。
胸は痛む。けれど、それでも湊は秋斗を忘れられない。
──決して届かない光として、心の奥に焼き付いたまま。
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