12 / 21
透視12 ミアさんは絶対に助ける!ってお話
しおりを挟む
魔眼スキル【加速視】を初めて覚えた頃は、ただ単にゆっくり動く世界を眺めているだけだった。
直にゆっくり動く世界に思考が慣れてきたのか、俺の思考力も加速視の世界に合わせて考える速度になった。
更に加速思考が体を動かすようになり、徐々に加速世界で体が動けるようになってきた。
俺の【加速視】による加速世界は、俺が速く動いている訳では無い。ゆっくり流れる加速世界の中で俺は普通に動いているだけだ。ただ普通の世界から見たら速く動いているように見えるだろう。
魔力を注ぎ込む程、加速世界はゆっくりと流れ、その分俺の行動回数は増える。結果として魔力を多く使った【加速視】は、普通の世界に於いてより速く動いたという結果が残る。
超物理的なギフトとして襲歩、速歩、縮地等があるが、行動回数に於いては普通の世界と同じ行動回数しか動けない。襲歩は100mを2,3秒で動けるが、その間の行動は2,3秒の行動に限られる。
同じ100mでも俺の【加速視】は加速世界を仮に3倍にした場合、結果として100mを3秒で動いたとしても行動時間は9秒ある事になる。そして魔力を使用する量により、結果として襲歩よりも何倍も速く動く事も出来る。更に言うならば襲歩や縮地同様に加速終了後の行動の余動が無い。
♢
ミアさんを連れ去った馬車を追い街中を【加速視】を使って疾走する。左目は【未来視】を使い人混みの中で最適なルートを探し出す。
【加速視】と【未来視】の併用は魔力を多く使うが、そんなを考える余裕も無い。ひたすら【未来視】で最短最適ルートを考え、ひたすら全力でゆっくり流れる加速世界を走って行った。
普通世界で5分程度で馬車に追い付く。【未来視】で救出解を導き出す中で俺は唖然とした。
俺が考えたのは、怪しい男を蹴り殺してから馬車を止めてミアさんを救う未来だ。しかし怪しい男は死から甦り、俺は殺され、ミアさんを救う事が出来ない未来だった。あの男は……人間じゃない!
ミアさんを救い出せる未来。時間は無い!辿り着いた一つのルート。
馬車に追い付いた俺は【加速視】に大きく魔力を注ぎ更なるゆっくりとした時間の流れを作る。ここ迄しないとこの男からは逃げられない。
ゆっくり流れる加速世界の中で、走る馬車の扉を開けて飛び乗り、虚ろな目のミアさんを抱き抱えて馬車から飛び降りる。この時に誘拐犯の男は反応していた。化け物か!!!
【未来視】を使い逃走ルートを先見しながらひたすら走る。何処が安全か!?何処に逃げる!?学院?警察?冒険者ギルド?何処だ!
♢
あの化け物が追い掛けて来ているかも分からない……。もう【未来視】を使う魔力も無くなり、【加速視】の魔力も切れた。虚ろな瞳から涙を流しているミアさんを抱き、覚束無い棒のようになった足で着いたのは学院の女子寮だった……。
俺の意識も飛びそうな中で寮の扉の前まで行くと、扉が開きコレットさんが飛び出てきた。
「ミアちゃん!アベル君!」
コレットさんの顔を見た瞬間に俺の意識はぶつり、と切れ視界が暗くなった…………。
♢
目覚めると知らない部屋だった。ふわふわなベッドはいつもの二段ベッドでは無い。
窓の外は明るいが違和感を感じた。綺麗な部屋に置かれている洒落た置き時計を見ると朝の八時を示している。
ベッドから起き上がり部屋の扉を開ける。
「あ!おはようアベル君」
元気な声のコレットさん。其処は広いリビングルームで学院長先生がソファーに座るミアさんとコレットさんにお茶を入れていた…………裸で!?
「ウワッ!?」
俺は慌てて寝ていた部屋に戻りドアを閉じた。眼鏡を忘れていた。ミアさんとコレットさんはソファーの背で見えなかったが、学院長先生のメロンはバッチリ見えてしまった!やはりデカい!そして綺麗だ!
『ごめ~んアベル君。眼鏡はこっちの部屋だった~』
明るい学院長先生の声が聞こえた。俺はドアから手だけを出してチョイチョイと眼鏡ちょうだいのアピールをした。
渡された紫色の魔眼封じの眼鏡をかけ、鼻血をティッシュで拭ってから隣のリビングルームへと入った。
♢
「ミアから状況は聞いたわ。ミアを救ってくれてありがとうアベル君」
「ミアさんから?」
「……うん。体は動けなかったけど、見えてたから。アベルが助けてくれるの……ずっと見てたから……。ありがとう……アベル」
「そ、そっか……」
「……でも怖かった……。もう……死ぬのかと思った……。怖かったよ…………」
ミアさんは声を震わせて泣き始めた。隣に座るコレットさんが優しく背中をさすっている。女の子が誘拐されそうになったんだ。怖くないはずないよな。
「あの後に直ぐに警察に連絡をしたのだけど……まだ犯人は捕まっていないわ……」
口惜しそうにする学院長先生。膝の上の手をギュッと握り締めていた。ミアさんは公園であの怪しい男と目があった瞬間に体が動かなくなったそうだ。麻痺の魔眼……。使い方の危険性からデビルアイに属する魔眼だ。しかしあの男は其れだけでは無い。
「学院長先生、犯人の男は人間ではありません」
「「「え!?」」」
「俺が見た未来視であの男は死から甦りました」
「甦りって……不死の魔物……」
「「未来視?」」
ミアさんとコレットさんは俺が未来視を使える事を知らない。学院長先生には入学前の書類に一通りの俺の魔眼スキルを書いて提出してあるから吃驚はしていなかった。
「昼間も動ける不死の魔物です」
「……ヴァンパイアか悪魔……ね。魔物鑑定はって余裕無かったか」
「はい。ただ凄い化け物なのは確かです。俺の加速視の中でも反応してました。戦うどころか逃げるので精一杯でしたから」
「街の警備体制を上げるようにお父様に伝えないといけないわね」
「何故ミアさんを攫おうとしたのですか?」
「ヴァンパイアなら少女の血、悪魔なら生贄……悍ましい……」
学院長先生は更に膝の上の拳を硬く握り「……まずいわね」と呟いた。
「……学院が……狙われるかもしれないわ」
直にゆっくり動く世界に思考が慣れてきたのか、俺の思考力も加速視の世界に合わせて考える速度になった。
更に加速思考が体を動かすようになり、徐々に加速世界で体が動けるようになってきた。
俺の【加速視】による加速世界は、俺が速く動いている訳では無い。ゆっくり流れる加速世界の中で俺は普通に動いているだけだ。ただ普通の世界から見たら速く動いているように見えるだろう。
魔力を注ぎ込む程、加速世界はゆっくりと流れ、その分俺の行動回数は増える。結果として魔力を多く使った【加速視】は、普通の世界に於いてより速く動いたという結果が残る。
超物理的なギフトとして襲歩、速歩、縮地等があるが、行動回数に於いては普通の世界と同じ行動回数しか動けない。襲歩は100mを2,3秒で動けるが、その間の行動は2,3秒の行動に限られる。
同じ100mでも俺の【加速視】は加速世界を仮に3倍にした場合、結果として100mを3秒で動いたとしても行動時間は9秒ある事になる。そして魔力を使用する量により、結果として襲歩よりも何倍も速く動く事も出来る。更に言うならば襲歩や縮地同様に加速終了後の行動の余動が無い。
♢
ミアさんを連れ去った馬車を追い街中を【加速視】を使って疾走する。左目は【未来視】を使い人混みの中で最適なルートを探し出す。
【加速視】と【未来視】の併用は魔力を多く使うが、そんなを考える余裕も無い。ひたすら【未来視】で最短最適ルートを考え、ひたすら全力でゆっくり流れる加速世界を走って行った。
普通世界で5分程度で馬車に追い付く。【未来視】で救出解を導き出す中で俺は唖然とした。
俺が考えたのは、怪しい男を蹴り殺してから馬車を止めてミアさんを救う未来だ。しかし怪しい男は死から甦り、俺は殺され、ミアさんを救う事が出来ない未来だった。あの男は……人間じゃない!
ミアさんを救い出せる未来。時間は無い!辿り着いた一つのルート。
馬車に追い付いた俺は【加速視】に大きく魔力を注ぎ更なるゆっくりとした時間の流れを作る。ここ迄しないとこの男からは逃げられない。
ゆっくり流れる加速世界の中で、走る馬車の扉を開けて飛び乗り、虚ろな目のミアさんを抱き抱えて馬車から飛び降りる。この時に誘拐犯の男は反応していた。化け物か!!!
【未来視】を使い逃走ルートを先見しながらひたすら走る。何処が安全か!?何処に逃げる!?学院?警察?冒険者ギルド?何処だ!
♢
あの化け物が追い掛けて来ているかも分からない……。もう【未来視】を使う魔力も無くなり、【加速視】の魔力も切れた。虚ろな瞳から涙を流しているミアさんを抱き、覚束無い棒のようになった足で着いたのは学院の女子寮だった……。
俺の意識も飛びそうな中で寮の扉の前まで行くと、扉が開きコレットさんが飛び出てきた。
「ミアちゃん!アベル君!」
コレットさんの顔を見た瞬間に俺の意識はぶつり、と切れ視界が暗くなった…………。
♢
目覚めると知らない部屋だった。ふわふわなベッドはいつもの二段ベッドでは無い。
窓の外は明るいが違和感を感じた。綺麗な部屋に置かれている洒落た置き時計を見ると朝の八時を示している。
ベッドから起き上がり部屋の扉を開ける。
「あ!おはようアベル君」
元気な声のコレットさん。其処は広いリビングルームで学院長先生がソファーに座るミアさんとコレットさんにお茶を入れていた…………裸で!?
「ウワッ!?」
俺は慌てて寝ていた部屋に戻りドアを閉じた。眼鏡を忘れていた。ミアさんとコレットさんはソファーの背で見えなかったが、学院長先生のメロンはバッチリ見えてしまった!やはりデカい!そして綺麗だ!
『ごめ~んアベル君。眼鏡はこっちの部屋だった~』
明るい学院長先生の声が聞こえた。俺はドアから手だけを出してチョイチョイと眼鏡ちょうだいのアピールをした。
渡された紫色の魔眼封じの眼鏡をかけ、鼻血をティッシュで拭ってから隣のリビングルームへと入った。
♢
「ミアから状況は聞いたわ。ミアを救ってくれてありがとうアベル君」
「ミアさんから?」
「……うん。体は動けなかったけど、見えてたから。アベルが助けてくれるの……ずっと見てたから……。ありがとう……アベル」
「そ、そっか……」
「……でも怖かった……。もう……死ぬのかと思った……。怖かったよ…………」
ミアさんは声を震わせて泣き始めた。隣に座るコレットさんが優しく背中をさすっている。女の子が誘拐されそうになったんだ。怖くないはずないよな。
「あの後に直ぐに警察に連絡をしたのだけど……まだ犯人は捕まっていないわ……」
口惜しそうにする学院長先生。膝の上の手をギュッと握り締めていた。ミアさんは公園であの怪しい男と目があった瞬間に体が動かなくなったそうだ。麻痺の魔眼……。使い方の危険性からデビルアイに属する魔眼だ。しかしあの男は其れだけでは無い。
「学院長先生、犯人の男は人間ではありません」
「「「え!?」」」
「俺が見た未来視であの男は死から甦りました」
「甦りって……不死の魔物……」
「「未来視?」」
ミアさんとコレットさんは俺が未来視を使える事を知らない。学院長先生には入学前の書類に一通りの俺の魔眼スキルを書いて提出してあるから吃驚はしていなかった。
「昼間も動ける不死の魔物です」
「……ヴァンパイアか悪魔……ね。魔物鑑定はって余裕無かったか」
「はい。ただ凄い化け物なのは確かです。俺の加速視の中でも反応してました。戦うどころか逃げるので精一杯でしたから」
「街の警備体制を上げるようにお父様に伝えないといけないわね」
「何故ミアさんを攫おうとしたのですか?」
「ヴァンパイアなら少女の血、悪魔なら生贄……悍ましい……」
学院長先生は更に膝の上の拳を硬く握り「……まずいわね」と呟いた。
「……学院が……狙われるかもしれないわ」
0
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
戦場の英雄、上官の陰謀により死亡扱いにされ、故郷に帰ると許嫁は結婚していた。絶望の中、偶然助けた許嫁の娘に何故か求婚されることに
千石
ファンタジー
「絶対生きて帰ってくる。その時は結婚しよう」
「はい。あなたの帰りをいつまでも待ってます」
許嫁と涙ながらに約束をした20年後、英雄と呼ばれるまでになったルークだったが生還してみると死亡扱いにされていた。
許嫁は既に結婚しており、ルークは絶望の只中に。
上官の陰謀だと知ったルークは激怒し、殴ってしまう。
言い訳をする気もなかったため、全ての功績を抹消され、貰えるはずだった年金もパー。
絶望の中、偶然助けた子が許嫁の娘で、
「ルーク、あなたに惚れたわ。今すぐあたしと結婚しなさい!」
何故か求婚されることに。
困りながらも巻き込まれる騒動を通じて
ルークは失っていた日常を段々と取り戻していく。
こちらは他のウェブ小説にも投稿しております。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
【完結】悪役に転生したのにメインヒロインにガチ恋されている件
エース皇命
ファンタジー
前世で大好きだったファンタジー大作『ロード・オブ・ザ・ヒーロー』の悪役、レッド・モルドロスに転生してしまった桐生英介。もっと努力して意義のある人生を送っておけばよかった、という後悔から、学院で他を圧倒する努力を積み重ねる。
しかし、その一生懸命な姿に、メインヒロインであるシャロットは惚れ、卒業式の日に告白してきて……。
悪役というより、むしろ真っ当に生きようと、ファンタジーの世界で生き抜いていく。
ヒロインとの恋、仲間との友情──あれ? 全然悪役じゃないんだけど! 気づけば主人公になっていた、悪役レッドの物語!
※小説家になろう、カクヨム、エブリスタにも投稿しています。
裏切られ続けた負け犬。25年前に戻ったので人生をやり直す。当然、裏切られた礼はするけどね
竹井ゴールド
ファンタジー
冒険者ギルドの雑用として働く隻腕義足の中年、カーターは裏切られ続ける人生を送っていた。
元々は食堂の息子という人並みの平民だったが、
王族の継承争いに巻き込まれてアドの街の毒茸流布騒動でコックの父親が毒茸の味見で死に。
代わって雇った料理人が裏切って金を持ち逃げ。
父親の親友が融資を持ち掛けるも平然と裏切って借金の返済の為に母親と妹を娼館へと売り。
カーターが冒険者として金を稼ぐも、後輩がカーターの幼馴染に横恋慕してスタンピードの最中に裏切ってカーターは片腕と片足を損失。カーターを持ち上げていたギルマスも裏切り、幼馴染も去って後輩とくっつく。
その後は負け犬人生で冒険者ギルドの雑用として細々と暮らしていたのだが。
ある日、人ならざる存在が話しかけてきた。
「この世界は滅びに進んでいる。是正しなければならない。手を貸すように」
そして気付けは25年前の15歳にカーターは戻っており、二回目の人生をやり直すのだった。
もちろん、裏切ってくれた連中への返礼と共に。
おっさん武闘家、幼女の教え子達と十年後に再会、実はそれぞれ炎・氷・雷の精霊の王女だった彼女達に言い寄られつつ世界を救い英雄になってしまう
お餅ミトコンドリア
ファンタジー
パーチ、三十五歳。五歳の時から三十年間修行してきた武闘家。
だが、全くの無名。
彼は、とある村で武闘家の道場を経営しており、〝拳を使った戦い方〟を弟子たちに教えている。
若い時には「冒険者になって、有名になるんだ!」などと大きな夢を持っていたものだが、自分の道場に来る若者たちが全員〝天才〟で、自分との才能の差を感じて、もう諦めてしまった。
弟子たちとの、のんびりとした穏やかな日々。
独身の彼は、そんな彼ら彼女らのことを〝家族〟のように感じており、「こんな毎日も悪くない」と思っていた。
が、ある日。
「お久しぶりです、師匠!」
絶世の美少女が家を訪れた。
彼女は、十年前に、他の二人の幼い少女と一緒に山の中で獣(とパーチは思い込んでいるが、実はモンスター)に襲われていたところをパーチが助けて、その場で数時間ほど稽古をつけて、自分たちだけで戦える力をつけさせた、という女の子だった。
「私は今、アイスブラット王国の〝守護精霊〟をやっていまして」
精霊を自称する彼女は、「ちょ、ちょっと待ってくれ」と混乱するパーチに構わず、ニッコリ笑いながら畳み掛ける。
「そこで師匠には、私たちと一緒に〝魔王〟を倒して欲しいんです!」
これは、〝弟子たちがあっと言う間に強くなるのは、師匠である自分の特殊な力ゆえ〟であることに気付かず、〝実は最強の実力を持っている〟ことにも全く気付いていない男が、〝実は精霊だった美少女たち〟と再会し、言い寄られ、弟子たちに愛され、弟子以外の者たちからも尊敬され、世界を救って英雄になってしまう物語。
(※第18回ファンタジー小説大賞に参加しています。
もし宜しければ【お気に入り登録】で応援して頂けましたら嬉しいです!
何卒宜しくお願いいたします!)
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる