1 / 5
闇夜の校舎
しおりを挟む風が冷たく肌を刺す、月も隠れた漆黒の夜。大石中学校の生徒たちは、校内に伝わる「七不思議」の噂を語り合っていた。その夜、放課後のクラブ活動を終えた五人の生徒たちは、校舎にまつわる最も恐ろしい話に興味を引かれ、校舎内を探検することに決めた。
リーダー格の田中涼太、冷静沈着な佐藤恵美、好奇心旺盛な高橋誠、怖がりな山田花子、そして謎めいた転校生の小川翔太。彼らはお互いを励まし合いながら、校舎内の探索を始めた。
まず最初に向かったのは旧校舎の理科室。そこには「深夜の理科室で、実験器具が勝手に動く」という噂があった。彼らが薄暗い廊下を歩き、理科室のドアを開けると、中は静まり返っていた。誰かが言い出す前に、誠が手に持った懐中電灯の光をあちこちに当てると、突然、試験管が音を立てて倒れた。
「見た?今の!」花子は声を震わせて言った。
「落ち着け、ただの偶然だよ」と涼太が彼女をなだめたが、全員が緊張を感じていた。
次に彼らは、音楽室へ向かった。そこには「夜中に誰もいないはずの音楽室からピアノの音が聞こえる」という噂があった。音楽室に入ると、彼らは息を呑んだ。古いピアノが静かに佇んでいるが、まるで何かが演奏を待っているかのようだった。涼太がそっとピアノの蓋を開けると、突然、鍵盤が一人でに音を立てた。
「もうここを出ようよ」と、花子は涙目で言ったが、他の皆はまだ探索を続ける意志を固めていた。
次に向かったのは、体育館だ。そこには「夜になると、無人のバスケットボールが勝手に動き出す」という話があった。体育館に足を踏み入れると、冷たい風が彼らを包み込んだ。誠が懐中電灯を床に向けると、ぽつりと置かれたバスケットボールが目に入った。皆が注視する中、ボールがゆっくりと動き出した。
「これ、どうなってるの?」翔太が驚きの声を上げたが、その時、突然彼らの背後から笑い声が聞こえた。振り向くと、暗がりの中に影が動いていた。
「もう帰ろう」と、今度は涼太が言った。
しかし、帰り道は思ったよりも簡単ではなかった。彼らは廊下を進むうちに迷い込み、どの道が出口に繋がっているのかわからなくなってしまった。周囲の不気味な静けさが一層彼らの恐怖心を煽り、気づけば校舎内は深い闇に包まれていた。
「誰か、助けて!」花子が泣き叫ぶと、どこからともなく足音が近づいてくるのを感じた。
その時、ふと彼らの目の前に姿を現したのは、白い服を着た女性だった。彼女の顔は青白く、目は虚ろに見えた。「ここから出たいのか?」彼女の声は冷たく、心の底から響いてくるようだった。
「はい、出たいです。どうすれば…?」涼太が震える声で答えた。
「それならば、私と一緒に来なさい」と、女性は静かに歩き出した。彼らは彼女の後を追ったが、その先には廊下の奥に続く階段があった。階段を降りて行くと、冷たい空気が彼らの肌を刺した。
「本当にここで合っているのか?」誠が不安げに尋ねると、女性は振り返り、「ここが唯一の出口だ」と言った。その瞬間、彼女の姿は霧のように消え去り、階段の先には暗い地下室が広がっていた。
地下室に足を踏み入れると、突然、重たい扉が彼らの後ろで閉まり、鍵がかかる音が響いた。閉じ込められたことを悟った彼らは、必死に出口を探し始めた。だが、地下室は複雑な迷路のようになっており、どの道を選んでも行き止まりだった。
「どうすればいいんだ…」涼太は絶望の声を漏らした。
その時、ふと翔太が壁にかかれた古い文字を見つけた。「ここに封じられし魂、解放の鍵を持てり」と書かれていた。
「魂の解放…?」恵美が呟いた。
「もしかして、あの女性のことかもしれない」と、誠が提案した。
彼らは再び地下室の隅々まで探索を始めた。その途中、壁の一角に奇妙な模様が刻まれていることに気づいた。模様を触ると、壁がゆっくりと動き出し、隠し扉が現れた。扉の奥には小さな祭壇があり、古びた鍵が置かれていた。
「これが…解放の鍵?」涼太が鍵を手に取ると、突然、地下室全体が揺れ始めた。彼らは急いで扉を開け、元の階段へと戻った。
階段を駆け上がると、そこには再びあの女性が立っていた。「その鍵を使えば、ここから出られる」と彼女は言った。
「どうやって…?」翔太が尋ねると、彼女は静かに微笑んだ。「ただ、この鍵を使えば私も解放される。長い間、ここに囚われていたのだから」
涼太は鍵を差し出し、「これで本当に出られるのか?」と確認した。
「信じて、扉を開けるのです」と女性が囁くと、彼らは鍵を使い、地下室の扉を開けた。すると、強い光が差し込み、彼らは眩しさに目を細めた。
光が収まると、彼らは校舎の外に立っていた。夜の冷たい空気が再び彼らの肌を包んだが、もう恐怖は感じなかった。
「これで本当に終わったんだな」と、涼太が深く息をついた。
「でも、あの女性は一体…?」恵美が疑問を口にしたが、答えはわからなかった。
その後、五人は再び学校に戻り、探検のことを誰にも話さないことを誓った。しかし、校舎の「七不思議」は今でも語り継がれている。彼らが見たことが本当にあったことなのか、それとも単なる幻だったのか。真実は未だ闇の中に隠されたままだ。
闇夜の校舎で起こる不思議な出来事。その一つ一つが、今も生徒たちの心に恐怖と好奇心を呼び起こす。誰もが知りたがるが、誰も真実にたどり着けない。その恐怖は、永遠に語り継がれることだろう。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
意味が分かると怖い話(解説付き)
彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです
読みながら話に潜む違和感を探してみてください
最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください
実話も混ざっております
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
女子切腹同好会
しんいち
ホラー
どこにでもいるような平凡な女の子である新瀬有香は、学校説明会で出会った超絶美人生徒会長に憧れて私立の女子高に入学した。そこで彼女を待っていたのは、オゾマシイ運命。彼女も決して正常とは言えない思考に染まってゆき、流されていってしまう…。
はたして、彼女の行き着く先は・・・。
この話は、切腹場面等、流血を含む残酷シーンがあります。御注意ください。
また・・・。登場人物は、だれもかれも皆、イカレテいます。イカレタ者どものイカレタ話です。決して、マネしてはいけません。
マネしてはいけないのですが……。案外、あなたの近くにも、似たような話があるのかも。
世の中には、知らなくて良いコト…知ってはいけないコト…が、存在するのですよ。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる