学校の怪談

ちちまる

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闇夜の校舎

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風が冷たく肌を刺す、月も隠れた漆黒の夜。大石中学校の生徒たちは、校内に伝わる「七不思議」の噂を語り合っていた。その夜、放課後のクラブ活動を終えた五人の生徒たちは、校舎にまつわる最も恐ろしい話に興味を引かれ、校舎内を探検することに決めた。

リーダー格の田中涼太、冷静沈着な佐藤恵美、好奇心旺盛な高橋誠、怖がりな山田花子、そして謎めいた転校生の小川翔太。彼らはお互いを励まし合いながら、校舎内の探索を始めた。

まず最初に向かったのは旧校舎の理科室。そこには「深夜の理科室で、実験器具が勝手に動く」という噂があった。彼らが薄暗い廊下を歩き、理科室のドアを開けると、中は静まり返っていた。誰かが言い出す前に、誠が手に持った懐中電灯の光をあちこちに当てると、突然、試験管が音を立てて倒れた。

「見た?今の!」花子は声を震わせて言った。

「落ち着け、ただの偶然だよ」と涼太が彼女をなだめたが、全員が緊張を感じていた。

次に彼らは、音楽室へ向かった。そこには「夜中に誰もいないはずの音楽室からピアノの音が聞こえる」という噂があった。音楽室に入ると、彼らは息を呑んだ。古いピアノが静かに佇んでいるが、まるで何かが演奏を待っているかのようだった。涼太がそっとピアノの蓋を開けると、突然、鍵盤が一人でに音を立てた。

「もうここを出ようよ」と、花子は涙目で言ったが、他の皆はまだ探索を続ける意志を固めていた。

次に向かったのは、体育館だ。そこには「夜になると、無人のバスケットボールが勝手に動き出す」という話があった。体育館に足を踏み入れると、冷たい風が彼らを包み込んだ。誠が懐中電灯を床に向けると、ぽつりと置かれたバスケットボールが目に入った。皆が注視する中、ボールがゆっくりと動き出した。

「これ、どうなってるの?」翔太が驚きの声を上げたが、その時、突然彼らの背後から笑い声が聞こえた。振り向くと、暗がりの中に影が動いていた。

「もう帰ろう」と、今度は涼太が言った。

しかし、帰り道は思ったよりも簡単ではなかった。彼らは廊下を進むうちに迷い込み、どの道が出口に繋がっているのかわからなくなってしまった。周囲の不気味な静けさが一層彼らの恐怖心を煽り、気づけば校舎内は深い闇に包まれていた。

「誰か、助けて!」花子が泣き叫ぶと、どこからともなく足音が近づいてくるのを感じた。

その時、ふと彼らの目の前に姿を現したのは、白い服を着た女性だった。彼女の顔は青白く、目は虚ろに見えた。「ここから出たいのか?」彼女の声は冷たく、心の底から響いてくるようだった。

「はい、出たいです。どうすれば…?」涼太が震える声で答えた。

「それならば、私と一緒に来なさい」と、女性は静かに歩き出した。彼らは彼女の後を追ったが、その先には廊下の奥に続く階段があった。階段を降りて行くと、冷たい空気が彼らの肌を刺した。

「本当にここで合っているのか?」誠が不安げに尋ねると、女性は振り返り、「ここが唯一の出口だ」と言った。その瞬間、彼女の姿は霧のように消え去り、階段の先には暗い地下室が広がっていた。

地下室に足を踏み入れると、突然、重たい扉が彼らの後ろで閉まり、鍵がかかる音が響いた。閉じ込められたことを悟った彼らは、必死に出口を探し始めた。だが、地下室は複雑な迷路のようになっており、どの道を選んでも行き止まりだった。

「どうすればいいんだ…」涼太は絶望の声を漏らした。

その時、ふと翔太が壁にかかれた古い文字を見つけた。「ここに封じられし魂、解放の鍵を持てり」と書かれていた。

「魂の解放…?」恵美が呟いた。

「もしかして、あの女性のことかもしれない」と、誠が提案した。

彼らは再び地下室の隅々まで探索を始めた。その途中、壁の一角に奇妙な模様が刻まれていることに気づいた。模様を触ると、壁がゆっくりと動き出し、隠し扉が現れた。扉の奥には小さな祭壇があり、古びた鍵が置かれていた。

「これが…解放の鍵?」涼太が鍵を手に取ると、突然、地下室全体が揺れ始めた。彼らは急いで扉を開け、元の階段へと戻った。

階段を駆け上がると、そこには再びあの女性が立っていた。「その鍵を使えば、ここから出られる」と彼女は言った。

「どうやって…?」翔太が尋ねると、彼女は静かに微笑んだ。「ただ、この鍵を使えば私も解放される。長い間、ここに囚われていたのだから」

涼太は鍵を差し出し、「これで本当に出られるのか?」と確認した。

「信じて、扉を開けるのです」と女性が囁くと、彼らは鍵を使い、地下室の扉を開けた。すると、強い光が差し込み、彼らは眩しさに目を細めた。

光が収まると、彼らは校舎の外に立っていた。夜の冷たい空気が再び彼らの肌を包んだが、もう恐怖は感じなかった。

「これで本当に終わったんだな」と、涼太が深く息をついた。

「でも、あの女性は一体…?」恵美が疑問を口にしたが、答えはわからなかった。

その後、五人は再び学校に戻り、探検のことを誰にも話さないことを誓った。しかし、校舎の「七不思議」は今でも語り継がれている。彼らが見たことが本当にあったことなのか、それとも単なる幻だったのか。真実は未だ闇の中に隠されたままだ。

闇夜の校舎で起こる不思議な出来事。その一つ一つが、今も生徒たちの心に恐怖と好奇心を呼び起こす。誰もが知りたがるが、誰も真実にたどり着けない。その恐怖は、永遠に語り継がれることだろう。
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