過去からの手紙

残された言葉たち

エリザベスは古い家の押し入れから見つけた革製のバインダーを開いた。ホコリを払い、ひっそりと封じ込められていた手紙を取り出すと、かつての恋人、アレクサンダーからのものだった。彼からの最後の言葉が書かれた日からずっと、エリザベスはこの瞬間を避けていた。

手紙の中で、アレクサンダーは彼女に対する熱い想いを綴っている。その言葉一つ一つが、かつて二人が共有した深い絆と、別れの痛みを思い出させた。

「エリザベスへ、

いつかこの手紙が君の元に届くことを願っている。僕たちの関係が終わってしまった今でも、君のことを思わずにはいられない。君への愛だけが、時間を超えても変わることのない真実だ。

僕たちの時間は短かったけれど、君と過ごした日々は僕の生涯で最も輝いていた。でも、運命は僕たちに別々の道を歩ませた。僕がどれだけ遠くへ行っても、心の中でいつも君と一緒にいることを忘れないでほしい。

愛しているよ、永遠に。

アレクサンダー」

涙を拭いながら、エリザベスはアレクサンダーが遠くへ旅立ったあの日を思い出した。彼は突然の仕事のオファーを受け、国外へと移り住むことになった。別れ際、彼はエリザベスに「必ず戻る」と約束したが、その約束は果たされなかった。

エリザベスは心を決め、アレクサンダーの行方を探し始めた。彼の最後の住所を手掛かりに、古い友人や知人に連絡を取り、ついに彼が住んでいたという小さな町に辿り着いた。

町の中心で小さなカフェを見つけた彼女は、中に入り、店主にアレクサンダーのことを尋ねた。すると、店主は優しく微笑みながら、カフェの一角に掲げられている小さな写真を指差した。それはアレクサンダーが最後に参加した地元のフェスティバルのものだった。

「彼は数年前に亡くなりましたが、この町でとても愛されていましたよ。」店主の言葉に、エリザベスの心は重く沈んだ。しかし、彼女は彼が過ごした場所、彼が愛した町の空気を感じることで、少しでも彼の近くにいることができたと感じた。

カフェを後にした彼女は、アレクサンダーの墓を訪れた。そこで、彼に語りかけるように手紙を読み上げた。「アレク、私もずっとあなたを愛しています。あなたの言葉を今、ここで読むことができて、本当に幸せです。さようなら、私の愛。」

夕暮れの光の中、エリザベスは静かにその場を後にした。彼女の心には深い悲しみと共に、アレクサンダーからの過去の手紙がもたらした甘美な解放感が残った。彼との思い出と、彼からの最後の言葉は、彼女の人生の新たな章を開く力となった。