過去からの手紙

ちちまる

文字の大きさ
11 / 11

約束の手紙

しおりを挟む

アンナは祖母の遺品整理をしていたとき、青く色褪せた封筒を見つけた。封筒には「ヘンリーへの最後の手紙」と書かれており、筆跡は祖母のものだった。アンナは祖母が若いころに心を寄せていたヘンリーという名の青年について聞いたことがあったが、詳細は知らなかった。好奇心から封を切り、手紙を読み始めた。

「愛しいヘンリーへ、

今、この手紙を書いている時、私たちの未来はどうなるのか誰にもわからない。しかし、私は知っている。あなたは戦場に行き、私はここで待つ。それが私たちの選んだ道だ。

あなたへの愛は、日々強くなるばかりです。あなたが帰ってくるその日まで、私の心は変わることはありません。私たちが交わした約束、夏の終わりに桜の下で再び会う約束を、私は絶対に忘れません。

どうか安全で、そして健やかでいてください。私の愛と共に、この手紙があなたに届きますように。

永遠にあなたを愛している、
エリザベス」

手紙からは切なくも美しい愛の物語が浮かび上がり、アンナは涙を抑えることができなかった。彼女は祖母がどれほどヘンリーを愛していたのか、そして彼女がどれほど強い想いを抱いていたのかを感じ取ることができた。

その夜、アンナは家族のアルバムをめくり、祖母とヘンリーの写真を見つけた。二人は若く、幸せそうに笑っていた。しかし、ヘンリーのその後の写真は一枚もなかった。アンナは母に尋ね、ヘンリーが戦争で亡くなったことを知らされた。祖母はその後もずっとヘンリーを忘れることができずにいたそうだ。

この発見に動かされたアンナは、祖母の愛した人との記憶を後世に残すため、小説を書くことを決意した。彼女は祖母とヘンリーの愛の物語を基に、戦時中の若い二人の純愛を描き出した。

小説は、戦争によって引き裂かれた恋人たちの心情を繊細に表現し、多くの読者に感動を与えた。アンナ自身も、このプロジェクトを通じて、愛が時間や状況を超えて生き続けることを深く理解した。

祖母の遺品から見つかった一通の手紙は、ただの紙の片ではなく、世代を超えて受け継がれるべき強い愛の証だった。アンナは祖母の物語を通じて、自身の人生においても愛を大切にし、未来に希望を持ち続けることの重要性を学んだ。過去からの手紙が教えてくれたのは、愛がいかに人生を豊かにするかという永遠の真理だった。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

処理中です...