ホラー小説のお話

影の館

深い霧が立ち込める森の奥、忘れ去られた道を辿ると、そこには「影の館」と呼ばれる古びた屋敷が現れる。地元の住民は誰も近づかない、恐ろしい伝説が囁かれる場所。だが、好奇心旺盛な大学生グループがその伝説に挑むことになる。

「ここがその影の館か…。」リーダーのカズは、手にした懐中電灯の光を屋敷の壁に走らせながら言った。彼らは、屋敷の呪われた過去を解き明かし、夜明けまでに帰還するという試練を自らに課していた。

一歩、館の中に足を踏み入れると、空気が一変する。温度が急に下がり、耳をつんざくような静寂が支配する。壁にかけられた古びた肖像画が、侵入者をじっと見下ろしている。

「ここはやばそうだな…。」メンバーの一人、ユウが小声で呟いた。しかし、その声はすぐに消され、彼らの周りでは不気味な現象が起こり始める。

扉が勝手に閉じる、足音が聞こえる、そして、ふとした瞬間に見え隠れする人影。屋敷は彼らを受け入れるどころか、何かが彼らを追い出そうとしているかのようだった。

彼らが館の奥深くへと進むにつれ、異変はさらに強まる。古い日記が落ちており、それにはこの屋敷とその住人たちにまつわる悲惨な歴史が綴られていた。館の主は、かつて愛した者を失い、その悲しみから狂気へと陥った。彼は死後も屋敷に留まり、訪れる者全てに恐怖を与え続けているという。

「ここから出ないと…！」アカネが叫ぶ。だが、その時、彼らの前に現れたのは、黒い影のような存在。それは、言葉ではなく、深い悲しみと怒りを感じさせるものだった。影は彼らに向かってゆっくりと迫り、彼らは恐怖で逃げ出すしかなかった。

屋敷を出ようとするが、出口は見つからず、彼らは迷宮のような廊下をさまよい続ける。ついに、彼らは中庭に出るが、そこはまるで別世界。中庭には巨大な古時計があり、その時計の針が深夜零時を指す瞬間、不思議な静寂が訪れる。

その静寂の中で、彼らは館の主の真実を知る。愛する者を亡くした痛み、そして、彼が彼らに伝えたかったメッセージ。それは、愛する者を失った悲しみを乗り越え、生きていく勇気を持つことだった。

時計の針が零時を過ぎると、影は消え、屋敷には平和な空気が戻る。彼らは館から脱出し、夜明けと共に安堵の息をつく。

だが、影の館はまだそこにあり、次なる訪問者を待ち続けている。館の主は、自らの過ちを繰り返させないために、永遠にその場所を守り続けるのだった。