水着の思い出

ちちまる

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夏のコンプリメント

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「だからさ、今日は是非とも彼に褒めてもらいたいの!」美希が熱心に語る。彼女と一緒に水着売り場を歩いている咲良は、友達の一途な想いに内心で苦笑いしていた。

美希が気になっているのはクラスメートの涼太。スポーツ万能でクラスの人気者だが、美希にとっては遠い存在のように感じられていた。しかし、今日のプールパーティーがチャンスだと彼女は思っている。

「これ、どうかな?」美希が手に取ったのは鮮やかなブルーのワンピース型水着。シンプルながらもエレガントなデザインが、彼女の肌を一層引き立てそうだ。

「いいね、それ!さっそく試着してみよう!」咲良が勧める。

試着室で美希はそっと水着を身に纏う。鏡に映る自分を見て、少し緊張が解けた。「これなら、少しは自信が持てるかも…」

プールサイドではすでに多くのクラスメートが集まっており、賑やかな声が飛び交っていた。美希と咲良もそそくさと更衣室で準備を整え、いざ登場。

「美希、ちょっと待って。リップクリーム塗らなきゃ。」咲良が化粧ポーチからリップクリームを取り出す間に、美希は勇気を出して一人でプールサイドへと歩いて行った。

涼太は友達とバレーボールをしていて、その活発な姿が目に入る。美希は深呼吸をして、彼の近くを歩いた。バレーボールが飛び交う中、偶然のようにボールが美希の足元へ。

「あ、ごめんね、大丈夫?」涼太が駆け寄って来る。その瞬間、美希の心臓は跳ねた。

「う、うん、大丈夫だよ。その、水着、似合ってる?」彼女は勇気を振り絞って聞いた。

涼太は少し驚いた表情を見せたが、すぐに笑顔になり、「うん、すごく似合ってるよ。青がクールで、いいね!」と快く答えた。

その一言で美希の世界が明るくなった。心の中でガッツポーズをしながら、彼女は「ありがとう」と素直に言えた。

その後、プールパーティーはさらに盛り上がり、美希は涼太とも自然と会話ができるようになっていった。涼太も美希のことを新しい目で見るようになり、二人の距離は徐々に縮まっていく。

「ねえ、今度、学校帰りにジュースでもどう?」涼太が誘ってきたとき、美希は信じられない思いだった。しかし彼の真剣な眼差しを受け、彼女は嬉しそうに頷いた。

夏の終わりに近づく頃、美希と涼太は少し特別な友達になっていた。水着を褒めてもらいたいという小さな願いから始まった関係が、二人にとって忘れられない夏の思い出となった。

そしてプールサイドでの会話は、今では笑い話として二人の間で語られることが多くなっている。「あの時は本当にドキドキしたよね」と美希が言うと、涼太も「俺もだよ、でもそのおかげで…」と続ける。

水着一枚がきっかけで芽生えた友情とそれ以上の感情。夏の終わりと共に、二人の心に深く刻まれた特別な絆はこれからも続いていくのだった。
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