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ポッキーの甘い誘惑
しおりを挟む秋の夕暮れ、学園祭の準備で賑わう校庭は、どこかしらのんびりとした空気が漂っていた。色とりどりの屋台が並び、笑い声と楽しい音楽が響き渡る中、佐々木ユウは少し離れた場所で一息ついていた。クラスの出し物であるカフェの準備がひと段落し、彼は持っていたポッキーの箱を開け、一人静かにおやつタイムを楽しんでいた。
「お、ユウ、ここにいたのか!」軽快な声と共に現れたのは、幼なじみで同じクラスの小宮カナだった。彼女はいつも元気で、笑顔が絶えない性格だが、今日はどこかそわそわしているように見えた。
「カナ、どうしたの?」ユウはポッキーを咥えたまま尋ねた。
「いや、実はね、クラスのみんなでゲームをしようってことになって……」カナは言い淀みながらも、続けた。「ポッキーゲーム、しない?」
ユウは一瞬驚いたが、すぐに笑みを浮かべた。「ポッキーゲーム? 本気か?」
カナは少し頬を赤らめながら頷いた。「うん、でも私たちが最初のペアってどう?」
ユウは少し考えた後、興味深げにカナを見つめた。「いいよ、やってみよう。」
彼らはベンチに座り、ポッキーを一本取り出して真ん中で咥える準備をした。カナの目はどこか緊張しているようで、ユウもまた心の中で小さなドキドキを感じていた。
「じゃあ、いくよ。」カナが合図をし、二人はゆっくりと顔を近づけていった。最初は笑っていた二人だったが、距離が縮まるにつれて、どちらも目をそらせなくなった。心臓の鼓動が次第に速くなるのを感じながら、ポッキーが次第に短くなっていく。
その瞬間、周りの喧騒がまるで遠くの出来事のように感じられ、二人の間に流れる時間が止まったかのように思えた。
唇が触れるか触れないかの距離で、カナがそっと目を閉じた。それに気づいたユウも、自然と目を閉じ、次の瞬間、二人の唇が軽く触れ合った。
微かな甘い香りと共に、ポッキーは完全になくなり、二人はゆっくりと顔を離した。目を開けると、カナは恥ずかしそうに笑っていた。
「うーん、やっぱりちょっと恥ずかしいね。」カナは照れ隠しのように言った。
ユウも笑いながら同意した。「そうだね。でも、楽しかったよ。」
その後、クラスメートたちが続々とポッキーゲームに挑戦し始め、二人はその光景を微笑ましく見守っていた。しかし、ユウの心の中では、先ほどの瞬間がいつまでも鮮明に残っていた。
学園祭の夜、校庭は無数のランタンで彩られ、まるで星空の下にいるかのような幻想的な雰囲気が広がっていた。ユウとカナは一緒に夜空を見上げ、静かに語り合っていた。
「今日のポッキーゲーム、忘れられないな。」ユウはぽつりと言った。
「私も。」カナは微笑みながら頷いた。「ユウ、実はずっと伝えたいことがあったの。」
ユウは少し驚いてカナを見つめた。「何?」
「私ね、ユウのことがずっと好きだったの。」カナの言葉は静かで、しかし確かな響きを持っていた。
ユウは一瞬言葉を失ったが、次第に微笑みを浮かべた。「カナ、僕も君のことが好きだ。」
二人は自然と手を取り合い、温かい気持ちが心に広がった。学園祭の夜空の下、二人の心は一つになり、新たな物語の始まりを感じていた。
その後も、ユウとカナは互いに支え合いながら、日々を過ごしていった。ポッキーゲームは二人にとって特別な思い出となり、時折振り返りながらも、その先にある未来を一緒に歩んでいくことを誓ったのだった。
ポッキーの甘い誘惑から始まった恋物語は、こうして静かに、しかし確かに進展していった。
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