巫女の恋愛小説

神託の恋

神社の境内は、清潔な空気と共に静けさが漂っていた。早朝の祈祷を終えた真弥巫女は、神々の棲む場所を愛おしく思いながら掃除の準備をしていた。彼女の生活は単調でありながらも、神聖な使命を帯びていた。しかし、その日常は突如として変わり始める。大学の夏休みを利用して、地元の歴史を調べに来た研究者の若者、樹が神社を訪れたのだ。

「こんにちは、神社のことを調べている者ですが、少し質問してもよろしいですか？」樹は遠慮がちに声をかけた。

「はい、どうぞ。私に分かることであればお答えします。」真弥は柔らかく笑みを浮かべた。彼女は人と話すことが少ないため、新鮮な刺激に胸をときめかせた。

樹は神社の歴史や祭事について興味深く質問し、真弥は知識を共有する喜びを感じていた。次第に二人の会話は神社の話題から日常生活や趣味に及ぶようになり、彼らは互いに親しみを深めていった。

日々の交流が続く中、真弥は樹の研究に興味を持ち、彼と共に地元の古文書を調べる手伝いを始めた。彼らは神社の裏手にある図書館で過ごす時間が増え、その每に心の距離も縮まっていった。

「真弥さん、この神社に関する記録は本当に貴重ですね。あなたのお話ししてくれた祭りの起源についても詳しく記されています。」樹が感激しながら文書を指し示した。

「そうなんです。私も子供の頃からずっとこの神社で育ちましたから、これらの祭事には特別な思い入れがあります。」真弥は懐かしそうに微笑みながら話を続けた。

ある夏の日、二人は神社の境内で特別な祭りの準備を手伝っていた。祭りの最中、神社が美しく飾り付けられ、提灯の光が二人を柔らかく照らし出す中、樹は突然、真弥に向かって真剣な表情で話し始めた。

「真弥さん、僕はこの夏、あなたと過ごした時間がとても幸せでした。ここに来て、あなたと出会えたことは僕にとって大きな意味があるんです。」

真弥は樹の言葉に心を動かされ、彼女もまた、樹への特別な感情を抱いていることに気がついた。彼女は少し照れくさそうに頷き、自分の気持ちを打ち明けた。

「樹さん、私もです。あなたと過ごす時間が私の日常に新しい風を運んできました。」

その夜、二人は神社の階段で星空を眺めながら、互いの未来について語り合った。真弥は巫女としての役割に誇りを持ちつつも、樹との新しい生活を夢見るようになっていた。そして樹もまた、研究を続けながら真弥とともに生きる道を模索し始めていた。

月日が流れ、季節は移り変わるが、二人の心は変わることなく、お互いを支え合いながら共に成長していった。神社の神々が見守る中、彼らは恋を育み、互いに深い絆で結ばれていくのだった。