愛のカタチ

一月の月の下で

一月の月は、清らかで冷たい光を灯していた。
空気は凛としていて、息をする度に体が生きている実感を教えてくれた。
エミリアは深く息を吸い込みながら、夜空に浮かぶその月を眺めていた。

彼女の心には、小さな切なさがひっかかっていた。
大学で出会った彼、トムとは、言葉では言い表せないほど深く愛し合っていた。
しかし、彼には遠く海外での夢があり、彼女はその夢を邪魔したくなかった。

「エミリア、君と一緒にいたい。でも、この夢を追わなければ、僕は僕ではなくなってしまう。」
彼の言葉は優しく、とても切なかった。

エミリアは、その夢を後押しするしかなかった。
「行って、トム。でも、私たちの思い出はここに置いていって。」

一月の月の下、彼らは別れを告げた。涙を流しながらも、彼女は微笑み、彼を送り出した。
トムは彼女の手を強く握り、願いを込めたキスを交わした。
それは、再会を約束するキスではなく、感謝と永遠の愛を込めたものだった。

月日は流れ、エミリアは彼からの手紙を一つも受け取ることはなかったが、彼の成功を遠くで静かに祝福していた。

ある一月の夜、再び彼女はあの場所で月を見上げた。
空は澄み切っており、月の明かりが砂浜を照らしていた。彼女は静かに囁いた。
「トム、ありがとう。私たちの時間は、私の中で永遠に輝いているわ。」

その時、風が彼女の髪をやさしく撫で、まるで彼がそこにいるかのような感覚に包まれた。

エミリアは涙を拭いながらも、心からの笑顔で空を見上げた。
彼女には分かっていた。どこかで、彼も同じ空を見上げ、同じ月を感じていることを。

一月の月が、二人を静かに繋いでいる。その永遠の絆が、時と空間を超えて心を灯していくのを。