愛のカタチ

卒業式の約束

春の息吹がまだ冷たい風に乗って校舎を包む、卒業式の朝。高校3年間の終わりを告げるこの日、菜摘は心を揺さぶる複雑な感情に包まれていた。彼女には、卒業式が終わるまでに伝えなければならない重要な言葉があった。それは、同じクラスの幼なじみであり、ずっと密かに思いを寄せていた悠斗への告白だった。

菜摘と悠斗は、小さな町で育ち、いつも一緒に学校へ行き、帰ってきた。しかし、恋心を抱き始めてからの菜摘は、悠斗との距離を縮めることができずにいた。それでも彼女は決心していた。卒業式の日、すべての思いを悠斗に伝えると。

式が終わり、卒業証書を手にした菜摘は、悠斗を校庭の桜の下へと呼び出した。そこは二人が幼い頃から遊んだ場所で、多くの思い出が詰まっていた。桜の花びらが風に舞う中、菜摘は勇気を振り絞り、悠斗に向かって歩み始めた。

「悠斗、ずっと前から言おうと思ってたことがあるの。私、悠斗のことが好き。これからもずっと一緒にいたい」と菜摘は静かに言葉を紡いだ。言葉を聞いた悠斗は、少し驚いた表情を見せた後、優しい笑顔を浮かべた。

「菜摘、ありがとう。実は僕もずっと菜摘のことが好きだったんだ」と悠斗は答えた。その言葉を聞いた瞬間、菜摘の目からは嬉し涙がこぼれ落ちた。二人は桜の木の下で、これから始まる新しい物語の第一歩を踏み出した。

卒業式の日、菜摘と悠斗はそれぞれの道を歩み始めたが、二人の絆はこれからも変わることなく続いていく。卒業という終わりが、二人にとって新しい始まりの瞬間だった。彼らの物語は、これからも多くの春と共に、美しい花を咲かせ続けるのだった。