プールの思い出

ちちまる

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夏の終わりのプロミス

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夏の終わりは、切なさと期待が混ざり合った特別な時間。町の外れにある古びた公共プールは、そんな夏の終盤にふさわしい場所だった。その年も、プールは夏の名残を惜しむ人々で賑わっていた。

高校2年生の陽斗は、友人たちとの約束でプールに来ていた。しかし、友人たちはすでに帰り支度をしており、陽斗だけがまだ水の中にいた。

「陽斗、もう帰るぞ!」友人の一人が呼びかける。

「おう、ちょっと待ってくれ!」陽斗が叫び返すと、友人たちは肩をすくめながら去っていった。

ひとり残されたプールは、夏の夕暮れに染まり、静寂に包まれていく。そんな中、陽斗は水面を見つめていた。彼の心には、この夏の始まりに出会った少女のことが浮かんでいた。

彼女の名前は葵。彼女は夏休みの初めにこの町に引っ越してきて、たまたまプールで陽斗と出会った。葵は人見知りが激しく、最初は陽斗ともほとんど話さなかった。しかし、共通の趣味がきっかけで徐々に心を開いていき、二人は夏の間、何度もプールで会うようになった。

「葵は、今日は来なかったな…」陽斗は寂しげにつぶやいた。夏休みが終わりに近づくと、葵は突然、陽斗にある約束を提案してきた。

「夏が終わる前に、もう一度ここで会おう。その時は、お互いの本当の気持ちを話そう」

その約束を思い出しながら、陽斗は待ち続けた。しかし、約束の日が来ても、葵は現れなかった。

夕日がプールを金色に染める中、陽斗はゆっくりと水から上がった。彼はプールサイドに座り、足を水に浸けながら、葵との思い出を振り返った。

突然、背後から声がした。

「待った?」

振り返ると、そこには葵が立っていた。彼女は少し照れくさそうに笑いながら、陽斗の隣に座った。

「ごめん、遅くなって…」

「いや、待ってたよ。約束、覚えてたんだ」

二人はしばらく無言で夕日を眺めた。そして、葵が静かに話し始めた。

「実はね、私、もうすぐこの町を離れるの。だから、陽斗に会いに来たかった。私、陽斗のことが…」

葵の告白に、陽斗も自分の気持ちを伝えた。二人の距離は、一瞬にして縮まった。

夏の終わりのプールは、二人にとって忘れられない場所になった。その日、約束された言葉は、夏の終わりの風に乗って遠くへと響いていった。
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