空飛ぶパンツ

ちちまる

文字の大きさ
3 / 5

風に乗った恋の布

しおりを挟む

都会の喧騒から少し離れた町のアパートに住む美咲(みさき)は、ある晴れた夏の日、ベランダで洗濯物を干していた。彼女は日々の忙しさから逃れ、こうして風に吹かれながら家事をするのが好きだった。

その日、特に強い風が吹いており、美咲の洗濯物がはためいていた。彼女の目に留まったのは、お気に入りの赤いパンツだった。風に煽られたそれは、まるで空に飛び立ちそうな勢いで揺れていた。

「しっかり留めておかないと…」

そう思った瞬間、強烈な突風が吹き、パンツがピンチから解き放たれた。美咲は驚いて手を伸ばしたが、パンツは風に乗って高く舞い上がり、あっという間に彼女の視界から消えてしまった。

「えっ、ちょっと待って…!」

美咲は慌ててベランダから飛び出し、パンツの行方を追いかけ始めた。彼女はパンツが空を飛ぶなんて信じられなかったが、そのまま放っておくわけにはいかなかった。

美咲が駆け出した先には、緑豊かな公園が広がっていた。そこには散歩を楽しむ人々や、遊ぶ子供たちの姿があった。彼女は公園の中を走り回り、必死にパンツを探したが、なかなか見つからない。

ふと、ベンチに座っている一人の青年が目に入った。彼は手に何かを握りしめ、美咲の方を見つめていた。彼の手には、飛んでいったはずの赤いパンツが握られていた。

「それ、私のです!」

美咲は息を切らしながら青年に駆け寄った。青年は驚いた様子でパンツを差し出し、微笑んだ。

「あ、これ君のだったんだね。すごい風で飛んできたからびっくりしたよ。」

美咲は恥ずかしさに顔を赤らめながら、礼を言った。

「ありがとうございます。助かりました。私の名前は美咲です。」

「どういたしまして。僕は翔太(しょうた)。この公園にはよく来るんだ。」

二人はしばらく話をし、自然と打ち解けていった。翔太は穏やかで優しい性格で、美咲にとってはとても話しやすい相手だった。美咲もまた、翔太に対して好感を抱いた。

その後、美咲と翔太は公園で会うことが増えた。毎日のように散歩を楽しみ、互いに心を開いていった。二人の関係は次第に深まり、恋心を抱くようになった。

ある日、二人は夕暮れの公園でベンチに座っていた。風が心地よく吹き、木々の間から夕陽が差し込んでいた。美咲はふと、あの日のパンツ事件のことを思い出した。

「どうしてあの日、パンツが空を飛ぶなんてことが起きたんだろう?」

翔太は笑いながら、美咲の問いかけに答えた。

「たぶん、運命だったんだよ。あのパンツが僕たちを引き合わせるために飛んできたんだ。」

美咲も笑顔を浮かべた。

「そんなことあるのかな?」

「あるさ。だって、あのパンツのおかげで、僕たちは出会えたんだから。」

翔太の言葉に美咲は胸が温かくなり、彼の手を握った。翔太もその手を優しく包み込み、二人はそのまま静かに時間を過ごした。

その後も、美咲と翔太の関係は順調に進んでいった。二人はお互いの家族や友人に紹介し合い、周囲からも祝福された。

美咲のアパートのベランダで、再び洗濯物を干しているとき、美咲はふとあの日のことを思い出し、微笑んだ。パンツが飛んだあの日がなければ、翔太と出会うことはなかったのだ。

「本当に、あのパンツには感謝しないとね。」

美咲はベランダから広がる青空を見上げ、心の中でそうつぶやいた。

数ヶ月後、翔太は美咲にプロポーズをする決意を固めた。美咲もまた、彼との未来を心から望んでいた。二人は共に過ごす時間を大切にし、絆を深めていった。

プロポーズの日、翔太は美咲をいつもの公園に誘った。美咲は何も知らず、ただ彼との時間を楽しんでいた。夕暮れが近づき、翔太は美咲をベンチに座らせ、自分の気持ちを伝えた。

「美咲、君と出会えたこと、本当に奇跡だと思ってる。あの空飛ぶパンツが運んでくれた奇跡を、これからも大切にしていきたい。僕と一緒に、これからの人生を歩んでくれないか?」

美咲の目には涙が浮かび、彼女は深くうなずいた。

「はい、翔太さん。私も同じ気持ちです。これからも一緒に、ずっと一緒にいたいです。」

二人はしっかりと抱き合い、その瞬間、またしても風が吹いた。空高く舞い上がる葉っぱが、まるで二人の未来を祝福しているかのようだった。

それから数年後、美咲と翔太は結婚し、幸せな家庭を築いた。彼らの子供たちにも、あの空飛ぶパンツの話が伝えられ、家族の大切な思い出となった。風が吹くたびに、二人はその奇跡の日々を思い出し、感謝の気持ちで満たされた。

ある日、二人は再び公園を訪れた。子供たちと一緒に散歩をし、風が心地よく吹く中、美咲はふと笑った。

「またパンツが飛んできたりしてね。」

翔太も笑いながら答えた。

「もし飛んできたら、今度はどんな奇跡が起こるんだろうね。」

二人は手をつなぎ、子供たちと共に歩き続けた。風は再び吹き、葉っぱや花びらが舞い上がる。その風の中には、かつての奇跡が再び織りなす、新たな物語が始まる予感があった。

風に乗ったパンツがもたらした奇跡は、永遠に二人の心に刻まれ、彼らの愛を強く結びつけるシンボルとなった。そして、風が吹くたびに、その奇跡が新たな物語を紡ぎ続けるのであった。

美咲と翔太の物語は、風に乗ったパンツが織りなす奇跡の一部となり、未来へと受け継がれていく。風が吹くたびに、彼らの愛は新たな形で芽生え、永遠に続くのであった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合短編集

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

処理中です...