スズノハの約束

秋月とわ

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1章

第2話 おじいちゃん家に到着

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 おじいちゃんの声に振り返って答える。

「小6だけど」
「ほぉー。もう6年生か。来年は中学生とは時間が経つのは早いなぁ」

 もうすぐ中学生になる小6は、こんな田舎では満足しないんだよ、と言いそうになって口をつぐむ。これから1ヶ月間、お世話になるのにそんなケンカを売るような態度は、いくら小学生の私でもいけないことだと分かっている。

 視線を戻して、ぼんやりと外を眺めていると、田んぼの向こうにこんもりとした小山が見えた。まるで砂遊びで作る山みたにポツリと佇んでいる。山の入り口には鳥居が建っていた。

「あっこはお宮さんやに。毎年、お盆に夏祭りするんや。未来も行ったらええに」
「神社なの? あの山」
「せやに。じいちゃんが子供の頃は、あっこが遊び場やった。スズノハの木っていうおっきなクスノキの木ぃあってな、よう登っては神主のじいさんに叱られとったに。懐かしいわー。この前の大雨で雷が落ちてスズノハの木も折れてしもたでなぁ」

 車は古い家が並ぶ道に入って行き、狭い道を何度も曲がる。なだらかな坂の突き当たりでようやくおじいちゃんはブレーキを踏んで車を止めた。

「じいちゃんは、車をガレージに入れるで、先、中に入っときなぃ」

 平屋建ての古い家だった。この家に来るのも久しぶりだ。昔は定期的にお母さんと一緒に里帰りをしていたから。

 車から降りて、おじいちゃんからボストンバッグを受け取る。しばらく解放されていたずっしりとした重みとまた再会する。あんまり再会はしたくなかったけれど、あと少しの我慢。引き戸を引いて家の中に入ると、古い家のにおいが鼻をかすめた。

「こんにちは。おばあちゃん、来たよー」

 玄関からのびる廊下の突き当たりにある台所から声が聞こえて、おばあちゃんがせっせと廊下を歩いてくる。

「未来ちゃん、おいない。東京から疲れたやん。今、冷たいジュース持っていくで上がって待っとき」

 靴を脱いで、居間に入った。居間は古い日本の家って感じの部屋で、縁側とその向こうには庭が続いている。部屋の中央には座卓があり、畳まれた新聞が扇風機の風を受けて小刻みにはためいていた。

 私は扇風機の前に腰を下ろす。風を独り占めしてみたけれど、それほど涼しくない。扇風機に背を向けて首を冷やしてみる。……うん、あんまりかわらない。

「あっついなーっ。あかん、これはクーラーや」

 車をガレージに停めてきたおじいちゃんが、首から下げたタオルで汗を拭きながら部屋に入ってくる。座卓の上に置いてあるエアコンのリモコンを手に取り、スイッチを入れた。

 ピッという電子音のあと、エアコンが南極の風を吐き出す。

「未来、窓閉めてくれ」
「うん、わかった」

 私は手を伸ばして、窓を閉める。騒がしい蝉の鳴き声が、小さくなった。

「あー、涼し」

 おじいちゃんは畳に座ると、後ろに手をついて天井を仰いだ。私も扇風機の前に戻ると、ポシェットからスマホを取り出して、メッセージアプリのお父さんとのトーク画面を開いた。

『おじいちゃんち着いた』

 と、だけ送るとすぐに既読になった。ピコン、と向こうからメッセージが送られてくる。

『連絡ありがとう。おじいちゃんとおばあちゃんにあまり迷惑かけないようにするんだぞ』

 うざっ、と声を出さずにつぶやく。いつも私に無関心なくせに、父親ヅラしないでほしい。

 文章で返すのもめんどくさいから、またクマのスタンプを送っておいた。今度はサムズアップしているクマに『了解』という吹き出しがついているやつ。

「未来ちゃん、お待ちどうさま」
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