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1章
第6話 富浦町案内
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「ずっと東京の友達が欲しかったんだー。ねぇ、東京ってどんなとこ? 人多い?」
「……その前に、私、あなたの名前知らないんだけど。誰なの? 私、知らないよ?」
「あっ、まだ名乗ってなかったっけ。あたし、夏海。5年生! よろしくね!」
「“ナツミ”? 珍しいね」
ナツミなんて女の子の名前みたいだ。でも時々いるよね、そんな名前の人。“カオル”とか“アキラ”とか。彼もそんな感じなんだろう。
「そうかなぁ。初めて言われたけど……。未来ちゃんは何年生?」
「私は6年。夏海くんの1つ上だね」
「ん?」
「え?」
夏海くんが怪訝な顔をする。そのリアクションに私も同じ顔になる。何かおかしなこと言っただろうか?
「もしかしてさ……」
と夏海くんが口火を切った。
「あたしのこと、男の子だと思ってる?」
「え、違うの?」
「違うよッ! 女だよ! オ・ン・ナ!」
「あ……。ごめん、見た目が男の子っぽかったから……」
私はたじろぎながら、目を疑う。はぁ? 女の子? どう見ても元気みなぎる男の子じゃん!
どおりで話が噛み合わないと思った。私はどうやら、なんとも恥ずかしい勘違いをしていたみたいだった。
「別にいいよ。見た目が男っぽいのは、ほんとのことだし」
夏海くん──もとい夏海ちゃんが、カラカラ笑いながら答える。気にしてなさそうでよかった。
「じゃあ、夏海ちゃんだね。よろしく」
「“夏海”でいいよ。未来ちゃん、年上だし」
「そう? じゃあ、夏海。よろしく」
「よろしく! 自己紹介も済んだし、さっそく気を取り直して町案内へ出発!」
歩き出した彼女の後ろを私もついていく。一体どこに連れて行かれるんだろう。
夏海は、坂道をずんずん登っていった。家が少なくなって、畑と森ばかりが目につくようになってくる。ザ・田舎という風景だ。都会育ちの私からしたら、新鮮だけれどあんまり好きじゃない風景。
「夏海、どこ向かってるの?」
「もうすぐ着くから、お楽しみ!」
くひひ、と笑う彼女は、それから少し歩くと立ち止まった。そこは山の斜面に沿ってのびる道路の途中で、ガードレールが途切れた間に細い獣道が続いている。
「この狭い道を行くと、カブトムシとクワガタが採れる木があるんだー」
「カブトムシ? クワガタ? もしかして、今からそこに行くつもりなの!?」
「うん……そうだけど?」
「無理無理無理……」
私はもげるくらい全力で首を振った。
虫なんて大っ嫌いだ。あのカサカサ動く足を想像するだけで虫唾が走る。カブトムシもクワガタとほとんど見た目はゴキブリと一緒じゃん。あんなの採りにいくなんて、ありえない。
「ん? なんで無理なの?」
夏海が首を傾げる。そこで疑問に思うことに私は首を傾げたいくらいだ。だから、しっかりと説明する。
「だって気持ち悪いじゃん! 私、虫って苦手なの」
「そんなに怖がることないんだけどなー。カッコいいじゃん」
「いやいや、無理だって」
「そっかー。じゃあ、別のとこ行こっか!」
口調は元気だったけれど、その後ろ姿は暗い。見て分かるほど肩を落とした彼女は踵を返す。どうやら危機は脱したようで、私はほっと胸を撫で下ろした。
次に連れて行かれたのは、大きめのスーパーだった。夏海が言うには、ここでは食べ物から服やおもちゃまでなんでも売っているそうだ。
意外にいいかも、と少し胸が躍った。外見は、東京のショッピングモールに全然負けているけれど、虫よりかは断然マシだ。
しかし店内に入ってガッカリした。外見通り、パッとしない店だった。
2階建てのその店は、1階が食品売り場で2階が衣料品とおもちゃ売り場になっている。なんでもあるって言うから期待したのに、売り場には私の興味を引きつけるものは、まったくない。
「……その前に、私、あなたの名前知らないんだけど。誰なの? 私、知らないよ?」
「あっ、まだ名乗ってなかったっけ。あたし、夏海。5年生! よろしくね!」
「“ナツミ”? 珍しいね」
ナツミなんて女の子の名前みたいだ。でも時々いるよね、そんな名前の人。“カオル”とか“アキラ”とか。彼もそんな感じなんだろう。
「そうかなぁ。初めて言われたけど……。未来ちゃんは何年生?」
「私は6年。夏海くんの1つ上だね」
「ん?」
「え?」
夏海くんが怪訝な顔をする。そのリアクションに私も同じ顔になる。何かおかしなこと言っただろうか?
「もしかしてさ……」
と夏海くんが口火を切った。
「あたしのこと、男の子だと思ってる?」
「え、違うの?」
「違うよッ! 女だよ! オ・ン・ナ!」
「あ……。ごめん、見た目が男の子っぽかったから……」
私はたじろぎながら、目を疑う。はぁ? 女の子? どう見ても元気みなぎる男の子じゃん!
どおりで話が噛み合わないと思った。私はどうやら、なんとも恥ずかしい勘違いをしていたみたいだった。
「別にいいよ。見た目が男っぽいのは、ほんとのことだし」
夏海くん──もとい夏海ちゃんが、カラカラ笑いながら答える。気にしてなさそうでよかった。
「じゃあ、夏海ちゃんだね。よろしく」
「“夏海”でいいよ。未来ちゃん、年上だし」
「そう? じゃあ、夏海。よろしく」
「よろしく! 自己紹介も済んだし、さっそく気を取り直して町案内へ出発!」
歩き出した彼女の後ろを私もついていく。一体どこに連れて行かれるんだろう。
夏海は、坂道をずんずん登っていった。家が少なくなって、畑と森ばかりが目につくようになってくる。ザ・田舎という風景だ。都会育ちの私からしたら、新鮮だけれどあんまり好きじゃない風景。
「夏海、どこ向かってるの?」
「もうすぐ着くから、お楽しみ!」
くひひ、と笑う彼女は、それから少し歩くと立ち止まった。そこは山の斜面に沿ってのびる道路の途中で、ガードレールが途切れた間に細い獣道が続いている。
「この狭い道を行くと、カブトムシとクワガタが採れる木があるんだー」
「カブトムシ? クワガタ? もしかして、今からそこに行くつもりなの!?」
「うん……そうだけど?」
「無理無理無理……」
私はもげるくらい全力で首を振った。
虫なんて大っ嫌いだ。あのカサカサ動く足を想像するだけで虫唾が走る。カブトムシもクワガタとほとんど見た目はゴキブリと一緒じゃん。あんなの採りにいくなんて、ありえない。
「ん? なんで無理なの?」
夏海が首を傾げる。そこで疑問に思うことに私は首を傾げたいくらいだ。だから、しっかりと説明する。
「だって気持ち悪いじゃん! 私、虫って苦手なの」
「そんなに怖がることないんだけどなー。カッコいいじゃん」
「いやいや、無理だって」
「そっかー。じゃあ、別のとこ行こっか!」
口調は元気だったけれど、その後ろ姿は暗い。見て分かるほど肩を落とした彼女は踵を返す。どうやら危機は脱したようで、私はほっと胸を撫で下ろした。
次に連れて行かれたのは、大きめのスーパーだった。夏海が言うには、ここでは食べ物から服やおもちゃまでなんでも売っているそうだ。
意外にいいかも、と少し胸が躍った。外見は、東京のショッピングモールに全然負けているけれど、虫よりかは断然マシだ。
しかし店内に入ってガッカリした。外見通り、パッとしない店だった。
2階建てのその店は、1階が食品売り場で2階が衣料品とおもちゃ売り場になっている。なんでもあるって言うから期待したのに、売り場には私の興味を引きつけるものは、まったくない。
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