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3章
第18話 “いいとこ”
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「夏海……。どうしてここに?」
「さっき橋に来てたでしょ? 入ってくれればいいのに」
「……知らない子と遊んでも楽しくないから別にいいよ。それに海とか好きじゃない。ベタベタするしスマホいじってる方が楽しいもん」
「じゃあなんでここにるの? それに足……」
夏海の視線が私の素足に向く。咄嗟に私は靴下も履かずに靴に足を突っ込む。
「あ、これ? 違うの。靴に砂が入っちゃって取ってたとこ」
苦しすぎる言い訳だ。言っている私ですら誤魔化されないぞ、こんなウソ。
しかし夏海は疑うことを知らないのか、私の無理のある言い訳を「あ、そうなんだ!」と何の抵抗もなく受け入れた。
私と年齢が1つしか違わないのに、なんて純粋なんだろう。これも田舎の環境がなせる技なのか、本来から持つ彼女の性格からなのかはわからない。
「未来ちゃん、暇してる? 暇ならいいとこ連れて行ってあげるよ」
「それって、クワガタが取れる木とかじゃないよね……?」
「違う、違う。未来ちゃんも楽しめることだよ」
この後の予定なんてない私は当然暇だった。ちょっとした暇つぶしができるなら大歓迎だ。
私は踵に指をかけて靴をしっかりと履く。靴の中が砂でジャリジャリしてて気持ち悪い。
「暇だし、いいよ。どこ行くの?」
「それはね、秘密! ついてからのお楽しみ!」
少し嫌な予感がした。でも今さら、やっぱりやめるとも言い出しづらくて、彼女に身を任せることにした。
砂浜を離れ、私たちは細い路地を行く。しっかりついて行かないと迷子になりそうだ。そんな複雑な道を夏海は躊躇なく進んでいる。
それにしても彼女は海で遊んだままの姿をしている。水が滴っているけれど、そのままにしていていいのだろうか? 余計なお世話かと思いながらも「着替えなくて大丈夫か」と尋ねると彼女は平然と答えた。
「え? あー、大丈夫。大丈夫。そのうち乾くから」
大ざっぱというか、雑というか……。夏海自身がいいのなら、私は別にいいんだけれど、やっぱり田舎の子って変。
夏海の先導で住宅地を抜けた。あたりの風景には緑が多くなってくる。石畳で舗装された坂道をそのまま歩き続けると、視界が一気に開けた。夏海は「着いたよ」と足を止めた。
身構えていたけれど、夏海が連れてきた場所は私にとっては、馴染みの場所だった。赤い大きな鳥居がどんと、そこに建っている。
「ここは……」
「神社だよ」
尻すぼみになった私の言葉を夏海が代わりに続けた。
夏海が連れてきた“いいとこ”とは神社のことだったのだ。スズノハさんの水やりで毎日裏参道には通っているが、神社まで来たのははじめてだった。そして今上がってきた坂道が新しくできたという表参道だろう。
人通りは多いとは言えないけれど、まったく人の気配がない裏参道に比べれば、こちらは大賑わいと言ってもいいのかもしれない。
表参道を行き来する姿には、なぜか子供が多い。それも私と同い年くらいの男の子ばかり。
それと関係があるのか分からないけれど、境内では夏祭りの準備が行われていた。
紅白の幕を巻いた大人の身長くらいあるやぐらを中心に境内の端に向けて提灯がいくつも吊り下げられている。やぐらからは、先ほどから「ドンドン」とお腹の底を震わすような太鼓の低音が響いている。
「あれ、練習しているんだよ」
夏海がやぐらを指す。さっきの男の子たちはみんな境内の真ん中に建てられたやぐらに集まっている。その中には篤志くんの姿もあった。
「さっき橋に来てたでしょ? 入ってくれればいいのに」
「……知らない子と遊んでも楽しくないから別にいいよ。それに海とか好きじゃない。ベタベタするしスマホいじってる方が楽しいもん」
「じゃあなんでここにるの? それに足……」
夏海の視線が私の素足に向く。咄嗟に私は靴下も履かずに靴に足を突っ込む。
「あ、これ? 違うの。靴に砂が入っちゃって取ってたとこ」
苦しすぎる言い訳だ。言っている私ですら誤魔化されないぞ、こんなウソ。
しかし夏海は疑うことを知らないのか、私の無理のある言い訳を「あ、そうなんだ!」と何の抵抗もなく受け入れた。
私と年齢が1つしか違わないのに、なんて純粋なんだろう。これも田舎の環境がなせる技なのか、本来から持つ彼女の性格からなのかはわからない。
「未来ちゃん、暇してる? 暇ならいいとこ連れて行ってあげるよ」
「それって、クワガタが取れる木とかじゃないよね……?」
「違う、違う。未来ちゃんも楽しめることだよ」
この後の予定なんてない私は当然暇だった。ちょっとした暇つぶしができるなら大歓迎だ。
私は踵に指をかけて靴をしっかりと履く。靴の中が砂でジャリジャリしてて気持ち悪い。
「暇だし、いいよ。どこ行くの?」
「それはね、秘密! ついてからのお楽しみ!」
少し嫌な予感がした。でも今さら、やっぱりやめるとも言い出しづらくて、彼女に身を任せることにした。
砂浜を離れ、私たちは細い路地を行く。しっかりついて行かないと迷子になりそうだ。そんな複雑な道を夏海は躊躇なく進んでいる。
それにしても彼女は海で遊んだままの姿をしている。水が滴っているけれど、そのままにしていていいのだろうか? 余計なお世話かと思いながらも「着替えなくて大丈夫か」と尋ねると彼女は平然と答えた。
「え? あー、大丈夫。大丈夫。そのうち乾くから」
大ざっぱというか、雑というか……。夏海自身がいいのなら、私は別にいいんだけれど、やっぱり田舎の子って変。
夏海の先導で住宅地を抜けた。あたりの風景には緑が多くなってくる。石畳で舗装された坂道をそのまま歩き続けると、視界が一気に開けた。夏海は「着いたよ」と足を止めた。
身構えていたけれど、夏海が連れてきた場所は私にとっては、馴染みの場所だった。赤い大きな鳥居がどんと、そこに建っている。
「ここは……」
「神社だよ」
尻すぼみになった私の言葉を夏海が代わりに続けた。
夏海が連れてきた“いいとこ”とは神社のことだったのだ。スズノハさんの水やりで毎日裏参道には通っているが、神社まで来たのははじめてだった。そして今上がってきた坂道が新しくできたという表参道だろう。
人通りは多いとは言えないけれど、まったく人の気配がない裏参道に比べれば、こちらは大賑わいと言ってもいいのかもしれない。
表参道を行き来する姿には、なぜか子供が多い。それも私と同い年くらいの男の子ばかり。
それと関係があるのか分からないけれど、境内では夏祭りの準備が行われていた。
紅白の幕を巻いた大人の身長くらいあるやぐらを中心に境内の端に向けて提灯がいくつも吊り下げられている。やぐらからは、先ほどから「ドンドン」とお腹の底を震わすような太鼓の低音が響いている。
「あれ、練習しているんだよ」
夏海がやぐらを指す。さっきの男の子たちはみんな境内の真ん中に建てられたやぐらに集まっている。その中には篤志くんの姿もあった。
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