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3章
第19話 篤志くんの横顔
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「もうすぐお祭りがあるんだ」
「そうだよ。毎年、お祭りの時は露店がいっぱい並ぶんだ。クライマックスには、花火だって上がるんだから! 未来ちゃんもきっと楽しめるはずだよ!」
夏海は、まるで自分の手柄かのように胸を張り、鼻息荒く語る。
花火か。楽しそうかも。
東京にも有名な花火大会はたくさんある。私が小さい頃は、家族3人で見に行ったこともあったと思う。小さすぎて記憶は朧げだけれど、大きな音と夜空に広がる怪物みたいな大きさの花火にびっくりしたことだけは覚えている。それと、帰りに露店でお面を買ってもらったこともだ。
そのお面も今やどこにあるのかも分からない。何かの拍子に捨ててしまったのかもしれない。
家族でお祭りに行ったのはあれが最初で最後だった。私が大きくなるにつれて、お父さんは仕事が忙しくなったし、最近になるとお母さんが入院してしまったから。
よく考えたら、お祭りは幸せだった頃の象徴的な思い出だったかもしれない。
「お祭り、なんかいいよね」
「あっ、わかる! いいよね!? 特に太鼓! 主役中の主役でしょ! あたしも太鼓叩きたいのに、あれは男子しかできないんだよ。ずるくない!?」
「ちぇっ」と、夏海はくちびるを突き出させて悔しさを滲ませた。
太鼓の音が鳴りやみやぐらから男の子が降りてくる。奏者交代のようで今度は、篤志くんがやぐらへと入っていく。
「未来ちゃん、見て。次、あつ兄の番だよー!」
私の二の腕をペシペシ叩きながら、夏海がテンション高めで言う。私は太鼓の前に立った篤志くんに注目する。
篤志くんは、やぐらの下から男の子たちが発する声援に「おう」と一言だけ答えて、係のおじさんから受け取ったバチを握った。その瞬間、彼の顔つきが変わる。
まるで熟練の職人のような真剣な表情でバチを振るう。
そんな彼の横顔を見ていると、なぜか急に胸のあたりがドキドキと高鳴った。手を当ててみると、太鼓みたいにドクドクとリズムを刻んでいる。
こんなこと初めてだ。なんだかとっても緊張した時みたいに胸が苦しかった。きっと熱中症とか何かだろう。どこかで休んだ方がいいのかも知れないけれど、私は篤志くんから目が離せなかった。
Tシャツの袖をまくり上げてタンクトップみたいにしている姿。
そこから見える、半分だけ日焼けした腕。
あまり笑わないけれど、強い力を感じさせるキリッとした目元。
そんな彼がバチを肩から大きく振り下ろす様子に、思わず見とれてしまう。初めて会った時は、何とも思わなかったのに、今は男らしくてかっこいい。
するとその時、「あつ兄ー!」と夏海が叫んだ。篤志くんは、こちらをチラッと窺う。その瞬間、目があったような気がして、咄嗟に視線をそらした。
何やっているんだ、私。そんなことしたらまるで意識しているみたいじゃん。
気を取り直して、視線を戻すとちょうど演奏が終わり篤志くんがやぐらから降りてくるところだった。
どうやら練習は彼で最後だったようで、おじさんが子供たちを集めて何か短く話し終えると解散となった。
「あつ兄ー! 上手だったよー!」
腕で額の汗を拭いながら、こちらに歩いてくる篤志くんに夏海が駆け寄った。私もその後ろを遠慮気味についていく。
「男の子の中でいちばんじゃない? ね、夏海ちゃん!」
「え? あ、うん。上手かったよ。かっこよかった」
篤志くんは、喜びを表情に浮かべることもなく、ぶっきらぼうに「ありがと」とつぶやいた。その耳は演奏の興奮せいなのか、赤くなっている。
「そうだよ。毎年、お祭りの時は露店がいっぱい並ぶんだ。クライマックスには、花火だって上がるんだから! 未来ちゃんもきっと楽しめるはずだよ!」
夏海は、まるで自分の手柄かのように胸を張り、鼻息荒く語る。
花火か。楽しそうかも。
東京にも有名な花火大会はたくさんある。私が小さい頃は、家族3人で見に行ったこともあったと思う。小さすぎて記憶は朧げだけれど、大きな音と夜空に広がる怪物みたいな大きさの花火にびっくりしたことだけは覚えている。それと、帰りに露店でお面を買ってもらったこともだ。
そのお面も今やどこにあるのかも分からない。何かの拍子に捨ててしまったのかもしれない。
家族でお祭りに行ったのはあれが最初で最後だった。私が大きくなるにつれて、お父さんは仕事が忙しくなったし、最近になるとお母さんが入院してしまったから。
よく考えたら、お祭りは幸せだった頃の象徴的な思い出だったかもしれない。
「お祭り、なんかいいよね」
「あっ、わかる! いいよね!? 特に太鼓! 主役中の主役でしょ! あたしも太鼓叩きたいのに、あれは男子しかできないんだよ。ずるくない!?」
「ちぇっ」と、夏海はくちびるを突き出させて悔しさを滲ませた。
太鼓の音が鳴りやみやぐらから男の子が降りてくる。奏者交代のようで今度は、篤志くんがやぐらへと入っていく。
「未来ちゃん、見て。次、あつ兄の番だよー!」
私の二の腕をペシペシ叩きながら、夏海がテンション高めで言う。私は太鼓の前に立った篤志くんに注目する。
篤志くんは、やぐらの下から男の子たちが発する声援に「おう」と一言だけ答えて、係のおじさんから受け取ったバチを握った。その瞬間、彼の顔つきが変わる。
まるで熟練の職人のような真剣な表情でバチを振るう。
そんな彼の横顔を見ていると、なぜか急に胸のあたりがドキドキと高鳴った。手を当ててみると、太鼓みたいにドクドクとリズムを刻んでいる。
こんなこと初めてだ。なんだかとっても緊張した時みたいに胸が苦しかった。きっと熱中症とか何かだろう。どこかで休んだ方がいいのかも知れないけれど、私は篤志くんから目が離せなかった。
Tシャツの袖をまくり上げてタンクトップみたいにしている姿。
そこから見える、半分だけ日焼けした腕。
あまり笑わないけれど、強い力を感じさせるキリッとした目元。
そんな彼がバチを肩から大きく振り下ろす様子に、思わず見とれてしまう。初めて会った時は、何とも思わなかったのに、今は男らしくてかっこいい。
するとその時、「あつ兄ー!」と夏海が叫んだ。篤志くんは、こちらをチラッと窺う。その瞬間、目があったような気がして、咄嗟に視線をそらした。
何やっているんだ、私。そんなことしたらまるで意識しているみたいじゃん。
気を取り直して、視線を戻すとちょうど演奏が終わり篤志くんがやぐらから降りてくるところだった。
どうやら練習は彼で最後だったようで、おじさんが子供たちを集めて何か短く話し終えると解散となった。
「あつ兄ー! 上手だったよー!」
腕で額の汗を拭いながら、こちらに歩いてくる篤志くんに夏海が駆け寄った。私もその後ろを遠慮気味についていく。
「男の子の中でいちばんじゃない? ね、夏海ちゃん!」
「え? あ、うん。上手かったよ。かっこよかった」
篤志くんは、喜びを表情に浮かべることもなく、ぶっきらぼうに「ありがと」とつぶやいた。その耳は演奏の興奮せいなのか、赤くなっている。
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