スズノハの約束

秋月とわ

文字の大きさ
24 / 32
4章

第24話 さらなるお願い

しおりを挟む
 次の日、水やりに行くとスズノハさんがぽつりと言った。

「お嬢ちゃん、思い出したよ」

 驚く私にスズノハさんは続けて言った。

「お祭りのおかげだろう。あの夜のことがはっきり蘇ってきたのだ」

 スズノハさんは遠い目をして、昔の約束を話し始めた。

「お祭りの夜、ワシの前で浮かない顔でたたずむ女の子がいたんじゃ。楽しそうな人間の中で目立っておってな。声をかけたんじゃ。その子は“見える子”じゃったようでな、驚いておった。話を聞くと、どうやら一緒に祭りに行く約束をした友達とケンカをしてしまったそうじゃった。その子と会ったのも何かの縁。仲直りの手助けになるやもしれんと思って、『その友達を連れてきたら葉を鳴らすところを見せてやる』と約束したのじゃ。だが、それっきりあの子は顔を見せなくなった」

 話終わるとスズノハさんは、私の顔を見た。

「お嬢ちゃん、あの子のことを調べてくれんか。仲直りできていたなら、それはそれでいい。諦めもつく」
「はっ!? 話が違うじゃん。約束を思い出すまでって約束でしょ? 大体、手掛かりもないのに見つけられないよ」
「手掛かりならある。その子は、お前さんが昨日着ておった浴衣と同じもの着ておった」
「あれお母さんのだよ。本当にあの浴衣だったの?」
「ああ、確かだ。あの花、アサガオというのじゃろ。あの時、彼女がその花の名前を教えてくれたのじゃ。それを手掛かりに調べてくれ」

 調子のいいあやかしだ。私はこれからの作業を想像して、体がグンと重くなるのを感じた。どれくらい昔かも、どんな子供かもわからない人間を探すのなんて、絶対に不可能だ。こんなの小学生の仕事じゃない。探偵の仕事だ。

 約束を思い出すまでという約束で私は今まで付き合ってきたのだ。ちょっとしたお手伝いみたいで、少し楽しくなってきていたところもあったけれど、それも終わるが見えているからだ。

 次から次へと無理難題を言われては、やってられない。私は別にスズノハさんの執事でもメイドでもないのだ。

「……やってらんない。約束は守ったんだから、あとは勝手にしてよね!? どうしてもその子を見つけたいっていうなら他の人に頼んで!」

 私は冷たく吐き捨てると、参道を後にした。もうここに来ることもないだろう。

 いつかみたいに呼び止められるかと身構えたけれど、スズノハさんはそんなことしなかった。ただ悲しそうなため息が聞こえたような気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

ノースキャンプの見張り台

こいちろう
児童書・童話
 時代劇で見かけるような、古めかしい木づくりの橋。それを渡ると、向こう岸にノースキャンプがある。アーミーグリーンの北門と、その傍の監視塔。まるで映画村のセットだ。 進駐軍のキャンプ跡。周りを鉄さびた有刺鉄線に囲まれた、まるで要塞みたいな町だった。進駐軍が去ってからは住宅地になって、たくさんの子どもが暮らしていた。  赤茶色にさび付いた監視塔。その下に広がる広っぱは、子どもたちの最高の遊び場だ。見張っているのか、見守っているのか、鉄塔の、あのてっぺんから、いつも誰かに見られているんじゃないか?ユーイチはいつもそんな風に感じていた。

童話短編集

木野もくば
児童書・童話
一話完結の物語をまとめています。

少年騎士

克全
児童書・童話
「第1回きずな児童書大賞参加作」ポーウィス王国という辺境の小国には、12歳になるとダンジョンか魔境で一定の強さになるまで自分を鍛えなければいけないと言う全国民に対する法律があった。周囲の小国群の中で生き残るため、小国を狙う大国から自国を守るために作られた法律、義務だった。領地持ち騎士家の嫡男ハリー・グリフィスも、その義務に従い1人王都にあるダンジョンに向かって村をでた。だが、両親祖父母の計らいで平民の幼馴染2人も一緒に12歳の義務に同行する事になった。将来救国の英雄となるハリーの物語が始まった。

四尾がつむぐえにし、そこかしこ

月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。 憧れのキラキラ王子さまが転校する。 女子たちの嘆きはひとしお。 彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。 だからとてどうこうする勇気もない。 うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。 家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。 まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。 ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、 三つのお仕事を手伝うことになったユイ。 達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。 もしかしたら、もしかしちゃうかも? そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。 結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。 いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、 はたしてユイは何を求め願うのか。 少女のちょっと不思議な冒険譚。 ここに開幕。

「いっすん坊」てなんなんだ

こいちろう
児童書・童話
 ヨシキは中学一年生。毎年お盆は瀬戸内海の小さな島に帰省する。去年は帰れなかったから二年ぶりだ。石段を上った崖の上にお寺があって、書院の裏は狭い瀬戸を見下ろす絶壁だ。その崖にあった小さなセミ穴にいとこのユキちゃんと一緒に吸い込まれた。長い長い穴の底。そこにいたのがいっすん坊だ。ずっとこの島の歴史と、生きてきた全ての人の過去を記録しているという。ユキちゃんは神様だと信じているが、どうもうさんくさいやつだ。するといっすん坊が、「それなら、おまえの振り返りたい過去を三つだけ、再現してみせてやろう」という。  自分の過去の振り返りから、両親への愛を再認識するヨシキ・・・           

荒川ハツコイ物語~宇宙から来た少女と過ごした小学生最後の夏休み~

釈 余白(しやく)
児童書・童話
 今より少し前の時代には、子供らが荒川土手に集まって遊ぶのは当たり前だったらしい。野球をしたり凧揚げをしたり釣りをしたり、時には決闘したり下級生の自転車練習に付き合ったりと様々だ。  そんな話を親から聞かされながら育ったせいなのか、僕らの遊び場はもっぱら荒川土手だった。もちろん小学生最後となる六年生の夏休みもいつもと変わらず、いつものように幼馴染で集まってありきたりの遊びに精を出す毎日である。  そして今日は鯉釣りの予定だ。今まで一度も釣り上げたことのない鯉を小学生のうちに釣り上げるのが僕、田口暦(たぐち こよみ)の目標だった。  今日こそはと強い意気込みで釣りを始めた僕だったが、初めての鯉と出会う前に自分を宇宙人だと言う女子、ミクに出会い一目で恋に落ちてしまった。だが夏休みが終わるころには自分の星へ帰ってしまうと言う。  かくして小学生最後の夏休みは、彼女が帰る前に何でもいいから忘れられないくらいの思い出を作り、特別なものにするという目的が最優先となったのだった。  はたして初めての鯉と初めての恋の両方を成就させることができるのだろうか。

9日間

柏木みのり
児童書・童話
 サマーキャンプから友達の健太と一緒に隣の世界に迷い込んだ竜(リョウ)は文武両道の11歳。魔法との出会い。人々との出会い。初めて経験する様々な気持ち。そして究極の選択——夢か友情か。   (also @ なろう)

処理中です...