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《第二部》一途なΩの新しい旅立ち
フォンテン村の悲劇(1)
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アリスは、涙を指で拭って話し出した。
「ありがとうリュウール様1番の友達って言って頂き本当にありがとう、クリスが居なくなった時母さんが部屋の奥からスカートとブラウスを出してくれて、久しぶりに履いたスカートはクリスが言ってた通りに本当にお尻がスースーしててそれがすごく笑えて、もう会えないクリスの事を思い出して、心から会いたくて泣いていたら母さんが頭を撫でて『ご苦労様、よくできました。我慢したね』といつまでも撫でてくれました。あれが母さんとの最後の思い出だから良く覚えています。
ここからが大切な事なのでしっかりと聞いて欲しいのです。リュウール様がカール元帥と出て行った数日後にあれが起こりました。
その日は朝から父さんと母さんがバタバタと荷造りをしていました。ルカ、ルークのお兄ちゃん達も父さんの指示であっちこっちと動き回っていて忙しそうだった。
私は着替えを済ませて、食堂に行くと母さんが、『アリス、出かけるから、洋服は男の子に変えて』
母さんの真剣な声を聞いてなんだか怖い事が起こったのかもしれないと思ったので、急いで男の子の洋服に着替えました。
次に子供部屋にいつも優しく笑ってくれるルカ兄ちゃんの顔が少し暗い顔で双子にご飯を食べさせてって頼まれた。私は、双子を起こして朝仕度をさせて着替えを済ませて食堂に行こうとしたらルカ兄ちゃんが朝食を持って来てくれた。
『今日は食堂はゴタゴタしているからここで食べて呼ぶまで待てって』と言うと出て行った。
いつもだったら暴れ回る双子も家の雰囲気がいつもとは違うことがわかったのか、朝食の後は私の周りにじっとしていました。
突然お昼頃、大きな声をしたお役人みたいな人がきて父さんを連れて行ってしまいました。母さんは、子供部屋に子供達を集めて、もうここには住めなくなったので、他所の土地に行くと言った。それで、荷物は殆ど持って行けないから、着替えを一つだけだよと言って下に降りて行った。私は本当は母さんが作ってくれたスカートを持って行きたかった。だけど朝の様子から男の子の洋服にして、弟達の準備を手伝って下に降りるといつもは綺麗に整頓されている家の中がグジャグジャになってしまって、棚の物も落とされていた。母さんはルカとルークの兄ちゃんに教会に行くよう指示して、私達には『もうすぐに帰ってくる父さんと一緒に後から教会に行くから、ハーツ牧師様の言う事を良く聞いて待っていてね』と言って一人づつ抱きしめてくれました。それが母さんとの最後でした」
アリスが微笑んでリュウールを見ていた。リュウールはアリスの言った最後の言葉が、頭の中をぐるぐる回っていた。リュウールの戸惑いを感じたアリスはもう一度リュウールに微笑み、涙を溜めながら話を続けていくが、それも長くは続かなかった。
「教会に着いて夕暮れ近くに双子の弟のジョンが、泣いて私の所迄やって来た。マークが母さんを探しに家に帰ったんだと、さっきまでお昼寝してたいたのにと思って、ルカ兄ちゃん伝えていた、その後は怖くて怖くて余り覚えていないのだから後はルカ兄とルーク兄に聞いて欲しい」
そう言うと、アリスは、ルークの横に座っていたケイトの胸に飛び込んで泣いていた。
リュウールは、ひとり自席に背もつけずに座って右手を握り締めていた。
「クリス、元気だったか?」
「クリス」
そこには軍医のルークさんと懐かしいルカ兄がいた。ルカ兄が緊張の面持ちで話し始めた。
「親父はトーマス様が王都へ帰還後にオーデンス城にクリスを送った後村からフォンテン男爵家が消えればクリスの事、リュウール様の事を隠せると思っていた。その為に一時的に村から出る事を決めていた。場所も確保していたと思う。元々、フォンテン男爵家は、自分の家には部下である騎士を置いていなかった。全てオーデンス城の警備や衛士に割いて、村人の中に何人かの引退した老騎士が村を守っていました。その者たちには何があってもフォンテン家より村人を守る様に頼んでいました。そして、村人には新しい領主が来るから何か有ればハーツ牧師のところに相談する様に言っていた。だが、急に領主が変わる事を納得しない農民もいたが、フォンテン家が消えれば自然と教会を頼ると思っていた」
ルーク兄が続きを言った。
「リュウール様を誘拐しようとしていた者達はトーマス様がオーデンスを去った後オーデンス城にリュウール様が1人残されれば簡単だと思っていたようだが、急に老騎士のベンジャミンさんがオーデンスを出た事に気づいて彼を追いかけて、始末した。その時に旅人に邪魔されたが、ベンジャミンが死んだ事でオーデンスの事は王都に漏れないと思っていた。だが、その時の旅人がカール元帥だったので、王都にはオーデンスが暗部に狙われている情報がもたらされた。カール元帥は、王都から至急に船を走らせてオーデンスに入り、リュウール様を攫う様に連れて行った。トーマス様が、ローマン王子を連れて王都に向かう事を見届けた暗部達は、城を家探ししたが何処にもリュウール様が居ない。特に内殿は複雑に入り組んでいて当主の居間が何処なのかもわからなかった。そんな時にリュウール様がフォンテン村にいると言うタレコミがあり、リュウール様の居場所であるこの村に誘拐団がやって来たんだ」
リュウールは、拳を強く握って聞いていた。
「ありがとうリュウール様1番の友達って言って頂き本当にありがとう、クリスが居なくなった時母さんが部屋の奥からスカートとブラウスを出してくれて、久しぶりに履いたスカートはクリスが言ってた通りに本当にお尻がスースーしててそれがすごく笑えて、もう会えないクリスの事を思い出して、心から会いたくて泣いていたら母さんが頭を撫でて『ご苦労様、よくできました。我慢したね』といつまでも撫でてくれました。あれが母さんとの最後の思い出だから良く覚えています。
ここからが大切な事なのでしっかりと聞いて欲しいのです。リュウール様がカール元帥と出て行った数日後にあれが起こりました。
その日は朝から父さんと母さんがバタバタと荷造りをしていました。ルカ、ルークのお兄ちゃん達も父さんの指示であっちこっちと動き回っていて忙しそうだった。
私は着替えを済ませて、食堂に行くと母さんが、『アリス、出かけるから、洋服は男の子に変えて』
母さんの真剣な声を聞いてなんだか怖い事が起こったのかもしれないと思ったので、急いで男の子の洋服に着替えました。
次に子供部屋にいつも優しく笑ってくれるルカ兄ちゃんの顔が少し暗い顔で双子にご飯を食べさせてって頼まれた。私は、双子を起こして朝仕度をさせて着替えを済ませて食堂に行こうとしたらルカ兄ちゃんが朝食を持って来てくれた。
『今日は食堂はゴタゴタしているからここで食べて呼ぶまで待てって』と言うと出て行った。
いつもだったら暴れ回る双子も家の雰囲気がいつもとは違うことがわかったのか、朝食の後は私の周りにじっとしていました。
突然お昼頃、大きな声をしたお役人みたいな人がきて父さんを連れて行ってしまいました。母さんは、子供部屋に子供達を集めて、もうここには住めなくなったので、他所の土地に行くと言った。それで、荷物は殆ど持って行けないから、着替えを一つだけだよと言って下に降りて行った。私は本当は母さんが作ってくれたスカートを持って行きたかった。だけど朝の様子から男の子の洋服にして、弟達の準備を手伝って下に降りるといつもは綺麗に整頓されている家の中がグジャグジャになってしまって、棚の物も落とされていた。母さんはルカとルークの兄ちゃんに教会に行くよう指示して、私達には『もうすぐに帰ってくる父さんと一緒に後から教会に行くから、ハーツ牧師様の言う事を良く聞いて待っていてね』と言って一人づつ抱きしめてくれました。それが母さんとの最後でした」
アリスが微笑んでリュウールを見ていた。リュウールはアリスの言った最後の言葉が、頭の中をぐるぐる回っていた。リュウールの戸惑いを感じたアリスはもう一度リュウールに微笑み、涙を溜めながら話を続けていくが、それも長くは続かなかった。
「教会に着いて夕暮れ近くに双子の弟のジョンが、泣いて私の所迄やって来た。マークが母さんを探しに家に帰ったんだと、さっきまでお昼寝してたいたのにと思って、ルカ兄ちゃん伝えていた、その後は怖くて怖くて余り覚えていないのだから後はルカ兄とルーク兄に聞いて欲しい」
そう言うと、アリスは、ルークの横に座っていたケイトの胸に飛び込んで泣いていた。
リュウールは、ひとり自席に背もつけずに座って右手を握り締めていた。
「クリス、元気だったか?」
「クリス」
そこには軍医のルークさんと懐かしいルカ兄がいた。ルカ兄が緊張の面持ちで話し始めた。
「親父はトーマス様が王都へ帰還後にオーデンス城にクリスを送った後村からフォンテン男爵家が消えればクリスの事、リュウール様の事を隠せると思っていた。その為に一時的に村から出る事を決めていた。場所も確保していたと思う。元々、フォンテン男爵家は、自分の家には部下である騎士を置いていなかった。全てオーデンス城の警備や衛士に割いて、村人の中に何人かの引退した老騎士が村を守っていました。その者たちには何があってもフォンテン家より村人を守る様に頼んでいました。そして、村人には新しい領主が来るから何か有ればハーツ牧師のところに相談する様に言っていた。だが、急に領主が変わる事を納得しない農民もいたが、フォンテン家が消えれば自然と教会を頼ると思っていた」
ルーク兄が続きを言った。
「リュウール様を誘拐しようとしていた者達はトーマス様がオーデンスを去った後オーデンス城にリュウール様が1人残されれば簡単だと思っていたようだが、急に老騎士のベンジャミンさんがオーデンスを出た事に気づいて彼を追いかけて、始末した。その時に旅人に邪魔されたが、ベンジャミンが死んだ事でオーデンスの事は王都に漏れないと思っていた。だが、その時の旅人がカール元帥だったので、王都にはオーデンスが暗部に狙われている情報がもたらされた。カール元帥は、王都から至急に船を走らせてオーデンスに入り、リュウール様を攫う様に連れて行った。トーマス様が、ローマン王子を連れて王都に向かう事を見届けた暗部達は、城を家探ししたが何処にもリュウール様が居ない。特に内殿は複雑に入り組んでいて当主の居間が何処なのかもわからなかった。そんな時にリュウール様がフォンテン村にいると言うタレコミがあり、リュウール様の居場所であるこの村に誘拐団がやって来たんだ」
リュウールは、拳を強く握って聞いていた。
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