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第一章
咲山紅の事情(2)〜あの日出来事(暴力シーン有り)*
しおりを挟むここより、暴力シーンです。作者の性質上ソフトには書いています。苦手な方は読み飛ばしても大丈夫です。ただ、これからのお話の中でこの事が何回出てきます。ご容赦ください。よろしくお願いします
紅が研修生控室から自分の部屋に戻る時に、リネン室にシーツを運ぶよう先輩看護師に指示されてシーツを抱えて裏口に近いリネン室に持っていった。
リネン室のドアを開けるとそこには、病院長の息子野末将克が友人たちと待ち伏せていた。将克は素行が悪く、頭も良くないのか医学部に入るために浪人中だと聞いた。彼は何の用事もないのに老人病棟を歩いて紅の事を見つけると嘗め回すように薄笑いして見る。その事が不気味で紅は苦手だった。だから、彼を見かけたら、洗い物をするためにランドリー室やトイレの掃除をしていた。
その将克が、リネン室にいて紅をなめるように見つめていた。紅は、部屋から逃げようとしたが、ドアの前には大きな男が立ちふさがっていた。男達は、紅を捕まえた。そして、猫なで声で将克が耳元でささやく。
「紅ちゃん、遊ぼう、大人の遊びしようよ」
紅は耳を押さえて、キッとした目つきで将克を見た。彼は大声で笑って紅の頬を平手で思いっきり叩いた。紅はバランスを崩してあおむけに倒れると男達は紅を押さえつけた。そして全員が自分を見下ろし、紅をのぞき込む男達はにやけた顔、顔、顔があり、それを見て血の気が引き背筋が凍るような気がした。
「嫌です。ここから出してください」
紅は、思いっきり大きな声で叫んだが、誰も助けに来ない。予想通りだと思う。売られたのだと思うと涙が出そうになるが、泣いていても変わらない、半ば諦めに似た感情に押し潰された。が、呪いの言葉を吐きながら助けを求めた。
「そんな偉そうな口をこれからは言わせない。お前は俺の下で一生喘がしてやるよ。そして、お前は俺たちの便所のように暮らせばいい」
あっという間に男達に両手両足を捕まえられて、手は押さえつけられて、ズボンは脱がされて、犯された。紅ができるのは泣いてはだめだと思うだけ、だが執拗に侵され続けて喘ぎとも叫びともいえない声を上げ続けていた。痛みは数回で麻痺してしまった。何人の男が紅の上に跨がったのかもわからず何時間こんなところにいるのかもわからないで、涙だけは出さず紅は終わりを来るのを待ち望んでいた。やはり自分はこんなことになる運命なのだとぼんやりと考えていた時に、急にリネン室のドアが開いた。そこには、医者が一人憤怒の様相で立っていた。
『何をしている』
フラッシュの光と連射音が鳴る。
『…だ、誰だ…』
男達が先程までのニヤけた様子は一変し、焦った声で叫ぶ。
『医者だが、君たちは部外者だろう、部外者がここには入ってはいけないはずだが』
『にっ、逃げろ…』
男たちが逃げ出した。医者だと言った男は部屋から急に飛び出してきた男たちに押されて倒される。紅はふらりと立ち上がり男たちに交じって自分のズボンとTシャツを掴みそこから少しでも遠くに行こうと走り出した。病院の裏口を出たら雨が降っていた。誰も追ってはいないことを確認して、持っていた服を着てフラフラではあったが、病院よりも遠くに逃げないとまたあいつらに見つかって捕まると犯されると言う強迫観念で疲れていた足が動く。身体の痛みはあったと思うが感じずにひたすら逃げた。
どこをどう歩いたのかわからない。意識が遠のいていくのは知っている。それが杉本町の辺りだったのだろう。そこで倒れていたと言っていたから、一駅分は移動したのだと思った。
これからの事を考えると暗澹な気持ちになる。久乃はあまり詳しくは言わなかった。処置をした医師の話や警察との話など明日からは色々とあるだろう、あの勤めていた病院の退職を含めて守ってもらえるのかどうか未知数だ。だが、逃げられただけでも良かった。あのままなら大変になっていたのは確実だ。あの時香ったヒノキのような木の匂いを纏った人が、自分を救ってくれたのだろう『ありがたい』と紅は忘れられない匂いを思い出していた。
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