アラサー☆ピクニック ~婚活とソトメシと年下男子と~

葉嶋ナノハ

文字の大きさ
3 / 3

1 はじめては卵サンド(3)

しおりを挟む
 フラれたショックと、あまりの慌ただしさで涙が出るヒマもなく、その勢いのままに婚活アプリをインストールする。

 落ち込んでいても時間の無駄だ。あんな男、すぐに忘れてやる。もっともっとイイ男を捕まえて、すぐに結婚して、カナコを振ったのがもったいなかったと後悔させてやるのだ……!

 そう意気込んで、ある婚活イベントに参加しようとしたところ、登録する段階で手が止まってしまった。

 登録する項目のうち、どうしても「趣味」や「好きなこと」が記入できない。必須ではないのだが、カナコは自問した。

 趣味がない、好きなことがない人間に、誰が興味を持つだろうか、と。

 どうにか趣味と呼べそうなものがないかと、カナコは必死に考えてみた。
 とりあえず、いつも休日にしていたことを思い浮かべてみる。

 その1。ショート動画アプリで結婚、式場、披露宴などのタグを使って検索しまくる。

 その2。SNSでプロポーズの言葉、プロポーズの場所などのタグを使って検索しまくる。

 その3。結婚費用を調べまくり、専用のアプリを使い、さらにアナログのノートにも細かく書き込んでいく。

 その4。新婚旅行をするなら、どこに行ってどのホテルに宿泊するか調べまくる。これはSNSだけではなく、書店で雑誌も買ってきて、家でゆっくり読んだ。

 その5。お互いの両親に挨拶するタイミングを調べ――。

 と、そこまで考えて、カナコは頭を抱えた。

 全部、結婚に関することじゃないか!! と。

 料理も、掃除も、読書も、映画やドラマを見るのも、ショッピングも、そして仕事だって、嫌いなわけではないが、特に好きでも得意でもない。
 ここのところ、カナコは結婚以外に興味が湧いていなかった自分を、その時になってようやく自覚したのである。

 フラれて絶望していたうえに、自分自身にも落胆する……。

 最悪の気分になったカナコは、淹れたばかりのコーヒーが入ったカップを持ち、新居のベランダに出た。
 春先とはいえまだ寒い時期ではあったが、空は青く、風もなく、日当たりの良いベランダは暖かい。
 熱いコーヒーをひとくち飲んだその時、カナコは突然ひらめいた。

「好きなこと、あった……!」

 もうひとくちコーヒーを飲み、改めて考える。

 カナコはホッとしたい時、こんなふうに自然とベランダに出ることがあった。それも、必ず手には飲み物や食べ物を持って。

 それはコーヒーだけではなく、時にビールだったり、ジュースだったり、青汁だったりした。
 つまみとしてコンビニのチキンを持ち出す、肉まんをほおばる、焼き鳥やおでん、アイスにケーキというスイーツの時もあった。

 外を眺めながら飲食するのは、カナコにとって最高のひとときだったのである。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

なんども濡れ衣で責められるので、いい加減諦めて崖から身を投げてみた

下菊みこと
恋愛
悪役令嬢の最後の抵抗は吉と出るか凶と出るか。 ご都合主義のハッピーエンドのSSです。 でも周りは全くハッピーじゃないです。 小説家になろう様でも投稿しています。

骸骨と呼ばれ、生贄になった王妃のカタの付け方

ウサギテイマーTK
恋愛
骸骨娘と揶揄され、家で酷い扱いを受けていたマリーヌは、国王の正妃として嫁いだ。だが結婚後、国王に愛されることなく、ここでも幽閉に近い扱いを受ける。側妃はマリーヌの義姉で、公式行事も側妃が請け負っている。マリーヌに与えられた最後の役割は、海の神への生贄だった。 注意:地震や津波の描写があります。ご注意を。やや残酷な描写もあります。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、孤独な陛下を癒したら、執着されて離してくれません!

花瀬ゆらぎ
恋愛
「おまえには、国王陛下の側妃になってもらう」 婚約者と親友に裏切られ、傷心の伯爵令嬢イリア。 追い打ちをかけるように父から命じられたのは、若き国王フェイランの側妃になることだった。 しかし、王宮で待っていたのは、「世継ぎを産んだら離縁」という非情な条件。 夫となったフェイランは冷たく、侍女からは蔑まれ、王妃からは「用が済んだら去れ」と突き放される。 けれど、イリアは知ってしまう。 彼が兄の死と誤解に苦しみ、誰よりも孤独の中にいることを──。 「私は、陛下の幸せを願っております。だから……離縁してください」 フェイランを想い、身を引こうとしたイリア。 しかし、無関心だったはずの陛下が、イリアを強く抱きしめて……!? 「離縁する気か?  許さない。私の心を乱しておいて、逃げられると思うな」 凍てついた王の心を溶かしたのは、売られた側妃の純真な愛。 孤独な陛下に執着され、正妃へと昇り詰める逆転ラブロマンス! ※ 以下のタイトルにて、ベリーズカフェでも公開中。 【側妃の条件は「子を産んだら離縁」でしたが、陛下は私を離してくれません】

病弱な彼女は、外科医の先生に静かに愛されています 〜穏やかな執着に、逃げ場はない〜

来栖れいな
恋愛
――穏やかな微笑みの裏に、逃げられない愛があった。 望んでいたわけじゃない。 けれど、逃げられなかった。 生まれつき弱い心臓を抱える彼女に、政略結婚の話が持ち上がった。 親が決めた未来なんて、受け入れられるはずがない。 無表情な彼の穏やかさが、余計に腹立たしかった。 それでも――彼だけは違った。 優しさの奥に、私の知らない熱を隠していた。 形式だけのはずだった関係は、少しずつ形を変えていく。 これは束縛? それとも、本当の愛? 穏やかな外科医に包まれていく、静かで深い恋の物語。 ※この物語はフィクションです。 登場する人物・団体・名称・出来事などはすべて架空であり、実在のものとは一切関係ありません。

暴君幼なじみは逃がしてくれない~囚われ愛は深く濃く

なかな悠桃
恋愛
暴君な溺愛幼なじみに振り回される女の子のお話。 ※誤字脱字はご了承くださいm(__)m

旦那様の愛が重い

おきょう
恋愛
マリーナの旦那様は愛情表現がはげしい。 毎朝毎晩「愛してる」と耳元でささやき、隣にいれば腰を抱き寄せてくる。 他人は大切にされていて羨ましいと言うけれど、マリーナには怖いばかり。 甘いばかりの言葉も、優しい視線も、どうにも嘘くさいと思ってしまう。 本心の分からない人の心を、一体どうやって信じればいいのだろう。

処理中です...