アラサー☆ピクニック ~婚活とソトメシと年下男子と~

葉嶋ナノハ

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4 おにぎりとウィンナーとブロッコリーと卵焼き(1)

「みんな素敵なピクニックしてるのねえ」

 カナコは写真がメインのSNSや、ショート動画を見ながら、ぶつぶつとひとりごとを言っていた。

 仕事が終わってマンションに帰り、湯船の中で一日の終わりを過ごすのは至福の時だ。

 今まではゆっくりのんびりお湯に浸かっているだけだったのだが、最近はこうしてスマホを持ち込み、ピクニックについての研究に余念がない。

「このVlogすごっ!! 何もかも美しすぎる……っ!!」

 綺麗な公園を歩いているところから、可愛らしいピクニックシートを敷いて、これまた可愛いお弁当を並べ、フォトジェニックなスイーツを楽しげに頬張っている様子が、短い動画の中に収まっていた。

 風景も音楽も美しく、ほうっとため息が漏れてしまう。

 しかしカナコはそこで動画を見るのを止め、ペットボトルの水をグイッと飲んだ。

「ま、すごい人と比べても仕方なし。っていうか、私のピクニックの目的はインフルエンサーになることじゃなくて婚活なわけですから、ここまでしなくても大丈夫」

 気を取り直したカナコは、再びスマホを手にした。

「次はどんなお弁当を作ろうかな~。どこでピクニックしようかな~。小さい公園はファミリーが多そうだから、大きいところを探そう。この前の公園は最高だったけど……」

 お隣のイケメン男子、大倉さんを思い出す。
 結局、このマンションで再会した夜から、一度も会ってはいない。

「さすがに同じ公園でまた会うことはないだろうけど、ね」

 もう一度行きたいが、それはまた今度にして、別の場所を開拓することにした。

「よし、ここに決ーめた!」


 二回目のピクニックは、ゴールデンウィーク前の日曜日。
 都内の公園に来てみた。今回は都心にある公園なので、アクセスが良いのが利点だ。

(とはいえ……、前回よりも人が多く感じるから、また恥ずかしくなってきた)

 周りはほとんどが若いファミリーばかり。あとは学生のグループが多かった。結構な混み具合なので、年配の人は平日に訪れるのだろう。

(ちょっとリサーチ不足だったかも。もっと奥に行って空いているところを探そう)

 芝生の間を縫うように通る歩道を歩いていく。

 周りは気になるが、自然の中にいるのは気持ちがいい。新緑が青々と茂り、手入れをされた花々が彩りを添えている。

(一瞬、来たことを後悔しそうになったけど、やっぱりいいな)

 カナコは散歩を楽しみながら、比較的空いている場所へ到着することができた。

 ちょうど良い大きさの木があったので、木陰に陣を取ることにした。

 シートを敷いて靴を脱ぐ。これは前回経験したばかりなので、もう恥ずかしくはない。

「お邪魔します……なーんてね」

 割と近くに人はいるが、それぞれ会話を楽しんでいるので、カナコのことなど気に留めていない。ひとりごとをつぶやいても、小声なら大丈夫そうだ。

 シートの上に座ったカナコは、トートバッグから水筒とランチバッグを取り出した。
 水筒のふたを開けて口に運び、緑茶を飲む。ふんわりとお茶のいい香りが鼻を抜けていった。

「は~~、美味しい……」

 周りの風景を堪能しながら人心地つく。
 ひとりでいることに多少そわそわするものの、前回よりはずっと落ち着いている。

 それにしても、とカナコは思った。

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