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4 おにぎりとウィンナーとブロッコリーと卵焼き(2)
日曜日の公園というものは、こんなにもファミリーが来ているのだと、改めて気づかされた。カップルも予想よりたくさんいる。
(若者が結婚しないとか、そもそも恋人ができないとか、ネットニュースやSNSでいろいろ言われてるけど、本当か?)
あっちを見ても、こっちを見ても、ファミリーやカップルがたくさんいる状態だ。先週行った公園に比べて、その比率がずっと高く見える。
いや、先週の公園は巨大な広さだったから、人が分散していて気づかなかっただけなのだろう。
元カレと一緒にいた時は、その環境にすっかり安心しきって、自分は結婚できるから大丈夫などと、脳内お花畑状態だったことを思い知らされる。
「ヤバい。なんか急に焦ってきた」
元カレに振られて傷ついた心は、初のピクニックでかなり癒やされた。
あんなやつのことはどうでもいい。見返してやるんだという気持ちも薄らいだのだが、こういう現実を目の前にすると、萎えていた結婚願望が再び湧いてくる。
お茶が入った水筒を横に置き、スマホを手にする。
(婚活サイトの他にマチアプも覗いてみたけど、その気になれなくて何もしてなかった。でも目の前の光景を見て気合いが入ったわ。やっぱり結婚はしたい……!)
趣味を作って婚活に乗り込む。そのためにピクニックを始めたのではなかったか……!?
カナコは動画を撮り始めた。
最近作った、ピクニック用のSNSアカウントに載せるためだ。
シートに座る自分の足、周りの景色、手に持ったランチバッグと水筒。ほんの十秒くらいだが、これでいい。
「次はお弁当を撮ろう」
ランチバッグのファスナーを開けて中身を取り出す。
今日はおにぎり二種類、皮なしウィンナー、ブロッコリーのマヨネーズ和え、甘い卵焼き。どれも定番のおかずだ。
会社へたまにお弁当を持って行くときは、たいてい夕飯の残り物のおかずを詰めているので、こういった「ザ・お弁当」を作ったのは久しぶりだった。
購入したばかりのお弁当用ナフキンの上に、おにぎりやおかずを並べていく。
「結構いいじゃん。うん、美味しそうに見える。かわいい、かわいい」
ぶつぶつ言いながら動画を撮っているが、どうせ後から曲を被せるので構わない。
あれこれと構図や光の加減を考え、何度も夢中で動画を撮った。そんなことをしているうちに、先ほどまでの焦りは消えてしまう。
何より、楽しかった。
人がさらに増えてきて、お昼ご飯の用意を始めている。カナコもいったん動画を止めて、食べることにした。
「よし、では……いただきまーす」
ラップでくるんだおにぎりをひとつ、手に取った。中身は焼きたらこだ。海苔は巻かず、シンプルなおにぎりである。
はむっとひとくち、お米の部分を口に入れた。ごはんと粗塩が絶妙にマッチしている。
「おお……、塩加減が完璧ではないか……!」
カナコはおにぎりの出来に満足し、周りに聞こえない声量で語り始めた。
(若者が結婚しないとか、そもそも恋人ができないとか、ネットニュースやSNSでいろいろ言われてるけど、本当か?)
あっちを見ても、こっちを見ても、ファミリーやカップルがたくさんいる状態だ。先週行った公園に比べて、その比率がずっと高く見える。
いや、先週の公園は巨大な広さだったから、人が分散していて気づかなかっただけなのだろう。
元カレと一緒にいた時は、その環境にすっかり安心しきって、自分は結婚できるから大丈夫などと、脳内お花畑状態だったことを思い知らされる。
「ヤバい。なんか急に焦ってきた」
元カレに振られて傷ついた心は、初のピクニックでかなり癒やされた。
あんなやつのことはどうでもいい。見返してやるんだという気持ちも薄らいだのだが、こういう現実を目の前にすると、萎えていた結婚願望が再び湧いてくる。
お茶が入った水筒を横に置き、スマホを手にする。
(婚活サイトの他にマチアプも覗いてみたけど、その気になれなくて何もしてなかった。でも目の前の光景を見て気合いが入ったわ。やっぱり結婚はしたい……!)
趣味を作って婚活に乗り込む。そのためにピクニックを始めたのではなかったか……!?
カナコは動画を撮り始めた。
最近作った、ピクニック用のSNSアカウントに載せるためだ。
シートに座る自分の足、周りの景色、手に持ったランチバッグと水筒。ほんの十秒くらいだが、これでいい。
「次はお弁当を撮ろう」
ランチバッグのファスナーを開けて中身を取り出す。
今日はおにぎり二種類、皮なしウィンナー、ブロッコリーのマヨネーズ和え、甘い卵焼き。どれも定番のおかずだ。
会社へたまにお弁当を持って行くときは、たいてい夕飯の残り物のおかずを詰めているので、こういった「ザ・お弁当」を作ったのは久しぶりだった。
購入したばかりのお弁当用ナフキンの上に、おにぎりやおかずを並べていく。
「結構いいじゃん。うん、美味しそうに見える。かわいい、かわいい」
ぶつぶつ言いながら動画を撮っているが、どうせ後から曲を被せるので構わない。
あれこれと構図や光の加減を考え、何度も夢中で動画を撮った。そんなことをしているうちに、先ほどまでの焦りは消えてしまう。
何より、楽しかった。
人がさらに増えてきて、お昼ご飯の用意を始めている。カナコもいったん動画を止めて、食べることにした。
「よし、では……いただきまーす」
ラップでくるんだおにぎりをひとつ、手に取った。中身は焼きたらこだ。海苔は巻かず、シンプルなおにぎりである。
はむっとひとくち、お米の部分を口に入れた。ごはんと粗塩が絶妙にマッチしている。
「おお……、塩加減が完璧ではないか……!」
カナコはおにぎりの出来に満足し、周りに聞こえない声量で語り始めた。
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