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5 初夏の鴨葱そば(2)
お椀に入れためんつゆの香りを堪能したあと、いよいよ蕎麦に箸をつける。
お弁当用の蕎麦の茹で方と持ち歩き方法については、ネットで調べていろいろ試してみた。
その中で一番美味しくできたものを採用したので間違いない。
「では、いただきます」
蕎麦をめんつゆに付けて、そっと啜る。
つるつるっと口に入っていくスムーズさは完璧だ。蕎麦は多少伸びているものの、麺同士がくっつくこともなく、初めてにしては上出来である。……が。
ふたくち目を口にして、カナコの手が止まった。
「ん? ……んんん?」
いや、美味しい。美味しいのだが。
「おつゆが、ぬるい……」
思ってたんと違う。
そう突っ込みたくなるほどに、微妙な、曖昧な、美味しさを感じられない、なんとも言えない温度なのである。
「なんでだろう……。スープジャーに入れたから、熱々とまではいかなくても結構温かいはずなのに。普段のスープとお味噌汁は、ちょうどいい熱さが保たれているわよね?」
カナコはめんつゆにネギと鴨を入れ、お蕎麦をつけてずるずると食べた。
焼いたネギは香ばしく柔らかい。厚切り鴨ローストと一緒に口にすると、なんちゃって鴨葱だが、とても美味しかった。
あとはめんつゆが熱ければ言うことなしなのだが……。
熱いものが冷めた、と言うにはぬるすぎるので、旨さが格段に落ちる気がする。
「って、お蕎麦が冷たいからぬるくなるのは当たり前じゃん……! それはそう、なんで作ってる時に気づかなかったのよ」
気づいたカナコは、ぶつぶつ言いながら鴨葱そばを食べた。
これはこれで美味しい。
しかし、熱いものを食べていて段々ぬるくなっていくのと、最初からぬるいものでは、感じる味が格段に違うことがよくわかったのだった。
「わかったのは、スープジャーでは限界があるってことだけか~……」
スマホで検索してみたが、なんの解決策も出てこない。
様々なスープジャーや水筒、保温タンブラーを調べてみたが、カナコが理想とするものがないのだ。
外で熱々の汁を食べることは無理なのか。
やはり通常のお弁当だけにしたほうが無難なのか。
「あ、そうだ! 大倉さんに聞けばいいんじゃない?」
ピクニックシートの上で寝そべっていたカナコは、思いつきとともに体を起こした。
彼は大手アウトドアメーカー、ナノハー・マウンテンに勤めている。
ということは、カナコの疑問など一瞬で解決してくれるに違いない。
「でも、ちょっと待って」
ナノハー・マウンテンのサイトから大倉のSNSをタップしたところで、手が止まる。
(SNSでつながりたくはないのよ。隣に住んでいてSNSも見られるのって、お互い監視されてるみたいでイヤじゃない?)
こちらからフォローするのは気が引ける。
自分のアカウントを知られるのもなんとなく嫌だ。
そもそも大倉が名刺を渡してきたのは社交辞令かもしれないし、何かを売りつけるつもりかもしれない――。
「とか、ウジウジ悩んでいる前に行動! 変に絡んでくるような人だったらブロックすれば良し! ……ん?」
何かの気配がしてふと顔を上げると、カナコの靴にモンシロチョウが止まっている。
その可愛らしい光景に肩の力が抜け、落ち着いた気持ちで大倉にメッセージを送ることができた。
お弁当用の蕎麦の茹で方と持ち歩き方法については、ネットで調べていろいろ試してみた。
その中で一番美味しくできたものを採用したので間違いない。
「では、いただきます」
蕎麦をめんつゆに付けて、そっと啜る。
つるつるっと口に入っていくスムーズさは完璧だ。蕎麦は多少伸びているものの、麺同士がくっつくこともなく、初めてにしては上出来である。……が。
ふたくち目を口にして、カナコの手が止まった。
「ん? ……んんん?」
いや、美味しい。美味しいのだが。
「おつゆが、ぬるい……」
思ってたんと違う。
そう突っ込みたくなるほどに、微妙な、曖昧な、美味しさを感じられない、なんとも言えない温度なのである。
「なんでだろう……。スープジャーに入れたから、熱々とまではいかなくても結構温かいはずなのに。普段のスープとお味噌汁は、ちょうどいい熱さが保たれているわよね?」
カナコはめんつゆにネギと鴨を入れ、お蕎麦をつけてずるずると食べた。
焼いたネギは香ばしく柔らかい。厚切り鴨ローストと一緒に口にすると、なんちゃって鴨葱だが、とても美味しかった。
あとはめんつゆが熱ければ言うことなしなのだが……。
熱いものが冷めた、と言うにはぬるすぎるので、旨さが格段に落ちる気がする。
「って、お蕎麦が冷たいからぬるくなるのは当たり前じゃん……! それはそう、なんで作ってる時に気づかなかったのよ」
気づいたカナコは、ぶつぶつ言いながら鴨葱そばを食べた。
これはこれで美味しい。
しかし、熱いものを食べていて段々ぬるくなっていくのと、最初からぬるいものでは、感じる味が格段に違うことがよくわかったのだった。
「わかったのは、スープジャーでは限界があるってことだけか~……」
スマホで検索してみたが、なんの解決策も出てこない。
様々なスープジャーや水筒、保温タンブラーを調べてみたが、カナコが理想とするものがないのだ。
外で熱々の汁を食べることは無理なのか。
やはり通常のお弁当だけにしたほうが無難なのか。
「あ、そうだ! 大倉さんに聞けばいいんじゃない?」
ピクニックシートの上で寝そべっていたカナコは、思いつきとともに体を起こした。
彼は大手アウトドアメーカー、ナノハー・マウンテンに勤めている。
ということは、カナコの疑問など一瞬で解決してくれるに違いない。
「でも、ちょっと待って」
ナノハー・マウンテンのサイトから大倉のSNSをタップしたところで、手が止まる。
(SNSでつながりたくはないのよ。隣に住んでいてSNSも見られるのって、お互い監視されてるみたいでイヤじゃない?)
こちらからフォローするのは気が引ける。
自分のアカウントを知られるのもなんとなく嫌だ。
そもそも大倉が名刺を渡してきたのは社交辞令かもしれないし、何かを売りつけるつもりかもしれない――。
「とか、ウジウジ悩んでいる前に行動! 変に絡んでくるような人だったらブロックすれば良し! ……ん?」
何かの気配がしてふと顔を上げると、カナコの靴にモンシロチョウが止まっている。
その可愛らしい光景に肩の力が抜け、落ち着いた気持ちで大倉にメッセージを送ることができた。
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