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6 海を見ながらピクニック!(3)
半信半疑で紙コップに口を付ける。半分の量に注がれたスープを口に入れようとして、ハッとした。
(あぶな~……! 本能で飲むのを止めたけど、このスープ絶対に熱い!)
カナコは口をすぼめ、ふーふーとスープに息をかけて冷ます。そして少しずつ口に入れた。
「……美味しい。甘くて美味しくて、それで……熱かったです!」
とろみのついた黄色いスープは、冷ましたから飲めたのだが、熱々だったことはわかる。
驚くカナコに、大倉はニッと笑って右手をサムズアップした。後ろに見える海が光って、彼の姿まで輝いて見える。
(い、いや、違うの。輝いているのって逆光だからよ。変な意味はないので……!)
ほぼ初対面のカナコにわざわざ自分の時間を割いてくれているのだ。よこしまな気持ちをこれっぽっちも持っては失礼である。たとえ、年下の爽やかイケメンを相手にしていても。
(それにしても本当に肌が綺麗ね。私より三つ以上は絶対に年下だ。私なんて三十になったとたん、急に肌つやと張りがなくなってきたんだから、毎日が恐怖だわ)
見てはいけないと思いつつ、大倉の手や頬、首筋などに目が行ってしまう。
「次はこれですね」
そんなカナコには気づかず、大倉は水筒を手にした。カナコもそちらへ集中する。
「この中では一番大きいものですね」
「ええ、そうなんです。この中には熱湯を入れてきました。良かったら一緒に食べましょう」
大倉はリュックの中から、誰もが知っている定番のカップラーメンをふたつ取り出した。
「どっちがいいですか?」
「ええと、じゃあ、おしょうゆ味で」
「OKです。で、このお湯を入れてみます。保温ジャーに入れておいたお湯でカップラーメンは作れなくはないです。ですが、熱湯ではないので、家で作るよりぬるくなって美味しさが落ちます」
「私が持っていっためんつゆが、飲むにはちょうどいい温度だけど、麺を入れるとぬるくなってしまったのと同じ……、ってそれは違うのかな……」
「冷やした麺を入れるわけではありませんが、カップラーメンを作るのには時間がかかります。そこでさらにお湯がぬるくなるので、渋谷さんの鴨葱そばと状況は違いますが、同じくらいの温度になるんだと思います」
「なるほど……」
「ですが、この水筒ののお湯はちょっと違います。早速作ってみましょうか」
大倉は自分のカップラーメンのビニール包装を破った。カナコも同じように破り、カップラーメンのフタを所定の位置まで開ける。
「渋谷さんが使ったスープジャーと同じメーカーの水筒も用意しました。こっちにもお湯を入れてきたので比較してみましょう」
「はい」
「あ、ちなみに。水筒やスープジャーに熱湯を入れると開かなくなることもあるんですが、今日持ってきた物は大丈夫ですので」
大倉はカナコのカップラーメンに大きな水筒のお湯を注いだ。そして自分のカップラーメン(カレー味)には、カナコが使ったものと同じメーカーの水筒でお湯を注ぐ。
「三分待っている間に……」
大倉はまたリュックに手を入れて何かを探している。
「これ、食べませんか? ベジファーストってことで」
彼が差し出してきたのは、タッパーに入った野菜スティックだった。
「あ、ありがとうございます。実は私も作ってきたんです、少しだけですが」
「マジすか? え、嬉しい」
しばらく「スンッ」という表情を変えなかった大倉が、突然目を輝かせてカナコをじっと見つめた。
ごちそうになってばかりでは申し訳ないと思い、若い男子が好きそうなものを作ってみたのだ。
「ーーめちゃくちゃうまいっ!! ですっ!!」
カナコが持ってきた小エビと玉ねぎとにんじんのマリネを、大倉は美味しそうに頬張りながら絶賛した。
「ほんとに? 良かったです……!」
ふたり分をそれぞれタッパーに入れてきたのだが、彼はあっという間にペロリと食べてしまった。
「ごちそうさまでした! マジで美味かったっす!!」
(あぶな~……! 本能で飲むのを止めたけど、このスープ絶対に熱い!)
カナコは口をすぼめ、ふーふーとスープに息をかけて冷ます。そして少しずつ口に入れた。
「……美味しい。甘くて美味しくて、それで……熱かったです!」
とろみのついた黄色いスープは、冷ましたから飲めたのだが、熱々だったことはわかる。
驚くカナコに、大倉はニッと笑って右手をサムズアップした。後ろに見える海が光って、彼の姿まで輝いて見える。
(い、いや、違うの。輝いているのって逆光だからよ。変な意味はないので……!)
ほぼ初対面のカナコにわざわざ自分の時間を割いてくれているのだ。よこしまな気持ちをこれっぽっちも持っては失礼である。たとえ、年下の爽やかイケメンを相手にしていても。
(それにしても本当に肌が綺麗ね。私より三つ以上は絶対に年下だ。私なんて三十になったとたん、急に肌つやと張りがなくなってきたんだから、毎日が恐怖だわ)
見てはいけないと思いつつ、大倉の手や頬、首筋などに目が行ってしまう。
「次はこれですね」
そんなカナコには気づかず、大倉は水筒を手にした。カナコもそちらへ集中する。
「この中では一番大きいものですね」
「ええ、そうなんです。この中には熱湯を入れてきました。良かったら一緒に食べましょう」
大倉はリュックの中から、誰もが知っている定番のカップラーメンをふたつ取り出した。
「どっちがいいですか?」
「ええと、じゃあ、おしょうゆ味で」
「OKです。で、このお湯を入れてみます。保温ジャーに入れておいたお湯でカップラーメンは作れなくはないです。ですが、熱湯ではないので、家で作るよりぬるくなって美味しさが落ちます」
「私が持っていっためんつゆが、飲むにはちょうどいい温度だけど、麺を入れるとぬるくなってしまったのと同じ……、ってそれは違うのかな……」
「冷やした麺を入れるわけではありませんが、カップラーメンを作るのには時間がかかります。そこでさらにお湯がぬるくなるので、渋谷さんの鴨葱そばと状況は違いますが、同じくらいの温度になるんだと思います」
「なるほど……」
「ですが、この水筒ののお湯はちょっと違います。早速作ってみましょうか」
大倉は自分のカップラーメンのビニール包装を破った。カナコも同じように破り、カップラーメンのフタを所定の位置まで開ける。
「渋谷さんが使ったスープジャーと同じメーカーの水筒も用意しました。こっちにもお湯を入れてきたので比較してみましょう」
「はい」
「あ、ちなみに。水筒やスープジャーに熱湯を入れると開かなくなることもあるんですが、今日持ってきた物は大丈夫ですので」
大倉はカナコのカップラーメンに大きな水筒のお湯を注いだ。そして自分のカップラーメン(カレー味)には、カナコが使ったものと同じメーカーの水筒でお湯を注ぐ。
「三分待っている間に……」
大倉はまたリュックに手を入れて何かを探している。
「これ、食べませんか? ベジファーストってことで」
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「あ、ありがとうございます。実は私も作ってきたんです、少しだけですが」
「マジすか? え、嬉しい」
しばらく「スンッ」という表情を変えなかった大倉が、突然目を輝かせてカナコをじっと見つめた。
ごちそうになってばかりでは申し訳ないと思い、若い男子が好きそうなものを作ってみたのだ。
「ーーめちゃくちゃうまいっ!! ですっ!!」
カナコが持ってきた小エビと玉ねぎとにんじんのマリネを、大倉は美味しそうに頬張りながら絶賛した。
「ほんとに? 良かったです……!」
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「ごちそうさまでした! マジで美味かったっす!!」
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