勇者パーティーから追放された最弱の俺は、20年間引きこもりました。え? 今の俺? 最強武闘家となり、トーナメント連勝でワクワク爆進中ですが?

武志

文字の大きさ
48 / 56

第48話 ミランダと大魔導士アレキダロス

しおりを挟む
 ゼント・ラージェントが大勇者ゲルドンの屋敷に行った次の日──。

 ここは「ミランダ武闘家ぶとうか養成所ライザーン本部」の社長室。

 応接室のソファに座ったミランダ社長の机の上には、山のような札束が積まれている。

 1億……いや、10億……、50億……? いやいや、もっとだ。

 ミランダの前のソファには、白い仮面を顔につけた大魔導士、アレキダロスが座っていた。その隣には、黒服の赤鬼族の巨漢きょかんが腕組みしてふんぞり返っている。

 白仮面の大魔導士アレキダロス──セバスチャンの助言者アドバイザーだ。ちなみに、セバスチャンは、18日後、ゼント・ラージェントと決勝戦で闘うことになる。

「なんなんですか、これは?」

 ミランダはキッ、とアレキダロスをにらみつけた。

「100億ルピーです。お受け取りください」

 アレキダロスは、白い仮面の下で笑って言った。不思議な声だ。大人とも子どもともつかない甲高い声だ。──「変声魔法へんせいまほう」だ──とミランダは直感した。

 アレキダロスは言った。

「あなた方、グランバーン王国の武闘家ぶとうかは全員、セバスチャン率いる、我が『G&Sトライアード』所属武闘家ぶとうかにならなくてはいけない。セバスチャン本人から、すでに聞いているはずですよ」
「バカ言わないで!」

 バーン!

 ミランダは机を叩いた。赤鬼がピクリと動こうとしたが、アレキダロスが手でとどめる。

「セバスチャンは、その世迷よまよいごとを、まだ実行しようとしているの? 自分の『武闘家ぶとうか連盟会長』の権限を利用して!」
「ミランダ先生よぉ」

 アレキダロスの左に座っていた赤鬼が、口を開いた。

 着ている黒スーツがはちきれんばかりの、太い腕、脚の筋肉だ。体格は、身長190センチ、体重は90キロ以上はあるだろう。どうやらアレキダロスのボディーガードのようだ。

「死にたくねえなら、さっさと、この金を受け取って、セバスチャン先生の支配下に入りな」
「誰に向かって口を利いてるのっ!」
「元国民的ヒロイン、ミランダ先生にだよ。ああ、センセイ?」

 ボキリ

 赤鬼が拳を鳴らし始めた。

「やめろ」

 アレキダロスは赤鬼に言い、ミランダを見つめた。

「では、もう100億上乗せしましょう。合計200億。セバスチャン先生の願い──武闘家ぶとうか統一の願いを叶えませんか。グランバーン王国の武闘家ぶとうかは、セバスチャンの支配下になるのです」
「断る!」

 ミランダはそう声を上げた。アレキダロスは仮面の奥で、また笑っている。

「すでにほとんどの武闘家ぶとうか養成所は、我々『G&Sトライアード』の支配下に入っております」
「そんなバカな!」
「証拠をお見せしましょう」

 アレキダロスは、持って来た契約書の写しを、20枚以上、机に並べてみせた。

「山鬼族蛇の穴」「グロモリー武闘家ぶとうか養成所」「ホビット族武闘家ぶとうか養成所」「バスダルダン闘技とうぎ研究所」「ザンブ拳闘士けんとうし育成会」……。

 ギリッ……

 ミランダは歯噛はがみした。

 全部、有名な武闘家ぶとうか養成所じゃないの……。
 どうなってるのよ、彼らは武闘家ぶとうかのプライドはないの? こんなヤツらに、金の力で乗っ取られてしまうというの?

「ご存知の通り、グランバーン王国全体は不況なのですよ」

 白仮面の大魔導士アレキダロスは、愉快ゆかいそうに言った。

武闘家ぶとうか養成所も、なかなか存続できない時代に入っています。人々の戦争の不安もあります。人々は、強力な剣や斧、頑丈がんじょうな鎧や盾などを買いに行きます。習うのも、昔のように武闘家ぶとうか養成所ではなく、剣術や槍術そうじゅつ訓練所です。──なぜか?」
「……武器なら、魔物を手っ取り早く殺傷さっしょうできる」
「ご名答です。人々は素手で闘う技術を教える、武闘家ぶとうか養成所には行きません。こんな時代だから我々、武闘家ぶとうか関係者は、一致団結しなければならないのです」

 ミランダは「くっ」と息をついた。

 魔物との大戦争が始まるらしい──。そんな噂が民衆の間に広がっているのだ。
 しかし、世間を不安におとしいれる陰謀論者いんぼうろんしゃが、そんな噂を流しているという話もある。

「50の武闘家ぶとうか養成所が、100億を我々から受け取り、我々の支配下に入ると契約しました。あとはこの老舗しにせ武闘家ぶとうか養成所である、この『ミランダ武闘家ぶとうか養成所』だけ」
「うるさい! 帰りなさい!」
「フッフッフ……」

 ギシリ

 赤鬼がゆっくりと、ソファから立ち上がった。

「女だからって容赦ようしゃしねえぜええ! があああっ!」

 赤鬼は、丸太棒まるたんぼうのような足で、100億ルピーが乗った机を踏みつけようとした。

 しかし! ミランダは素早くその机の上に飛び乗ると──。

 ドガアアッ

 素早い上段横蹴りを、赤鬼のアゴに叩きつけていた。

「がはっ!」

 赤鬼はソファの上に崩れ落ちる。完全にアゴに決まった。

 赤鬼は、目を丸くして、ミランダを見上げた。ソファから立ち上がれない。ミランダの上段横蹴りは、赤鬼のアゴの急所に完全に決まっていた。

 しかし、大魔導士アレキダロスは笑っていた。机の上の100億の札束の山は、砂のように消え去った。……なるほど、魔法による模造品イミテーションだったのか。

 ミランダは叫んだ。

「私の所属の選手、ゼント・ラージェントは、トーナメント決勝戦でセバスチャンを叩きのめすわ!」
「ほほう?」
「それならば、このバカバカしい、あなたたちの武闘家ぶとうか界乗っ取り計画は、白紙になるでしょうね!」

 しかし、アレキダロスは首を横に振った。

「バカな。今、セバスチャンは、グランバーン最高の武闘家ぶとうかひょうされつつあるのですよ。ゼント? そんな元引きこもりの男に負けるわけがない」
「私の予想では、その元引きこもりの男が、グランバーン最高の武闘家ぶとうかに勝つわ」

 ミランダは声を上げた。

「ゼントは真の困難から立ち上がってきた! 彼こそ本物の『武闘王ぶとうおう』よ!」
「『武闘王ぶとうおう』ですって? あの伝説の? ハハハ。見た目も貧弱、まぐれで勝ち上がってきたようなあのゼント・ラージェントが、『武闘王ぶとうおう』? 冗談もほどほどに。──決勝戦までに、我々の支配下に入る用意をしておいてください。まあ、今日は帰りましょう」

 アレキダロスは立ち上がった。ソファに倒れ込んでいた赤鬼も、あわてて立ち上がった。

「一つ言っておきますとね」

 アレキダロスは社長室の扉に向かう途中、言った。

「セバスチャンと我々は、どんな手段を使ってでも勝ちにいきます。たとえば私たちは、あなたたちの大切な人に何をするか分かりません。──お気をつけくださいね──」
「あ、あなた、何を言っているの?」

 ミランダは驚いて言ったが、アレキダロスと赤鬼は部屋を出ていってしまった後だった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

職業・遊び人となったら追放されたけれど、追放先で覚醒し無双しちゃいました!

よっしぃ
ファンタジー
この物語は、通常1つの職業を選定する所を、一つ目で遊び人を選定してしまい何とか別の職業を、と思い3つとも遊び人を選定してしまったデルクが、成長して無双する話。 10歳を過ぎると皆教会へ赴き、自身の職業を選定してもらうが、デルク・コーネインはここでまさかの遊び人になってしまう。最高3つの職業を選べるが、その分成長速度が遅くなるも、2つ目を選定。 ここでも前代未聞の遊び人。止められるも3度目の正直で挑むも結果は遊び人。 同年代の連中は皆良い職業を選定してもらい、どんどん成長していく。 皆に馬鹿にされ、蔑まれ、馬鹿にされ、それでも何とかレベル上げを行うデルク。 こんな中2年ほど経って、12歳になった頃、1歳年下の11歳の1人の少女セシル・ヴァウテルスと出会う。凄い職業を得たが、成長が遅すぎると見捨てられた彼女。そんな2人がダンジョンで出会い、脱出不可能といわれているダンジョン下層からの脱出を、2人で成長していく事で不可能を可能にしていく。 そんな中2人を馬鹿にし、死地に追い込んだ同年代の連中や年上の冒険者は、中層への攻略を急ぐあまり、成長速度の遅い上位職を得たデルクの幼馴染の2人をダンジョンの大穴に突き落とし排除してしまう。 しかし奇跡的にもデルクはこの2人の命を救う事ができ、セシルを含めた4人で辛うじてダンジョンを脱出。 その後自分達をこんな所に追い込んだ連中と対峙する事になるが、ダンジョン下層で成長した4人にかなう冒険者はおらず、自らの愚かな行為に自滅してしまう。 そして、成長した遊び人の職業、実は成長すればどんな職業へもジョブチェンジできる最高の職業でした! 更に未だかつて同じ職業を3つ引いた人物がいなかったために、その結果がどうなるかわかっていなかった事もあり、その結果がとんでもない事になる。 これはのちに伝説となる4人を中心とする成長物語。 ダンジョン脱出までは辛抱の連続ですが、その後はざまぁな展開が待っています。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

スキルで最強神を召喚して、無双してしまうんだが〜パーティーを追放された勇者は、召喚した神達と共に無双する。神達が強すぎて困ってます〜

東雲ハヤブサ
ファンタジー
勇者に選ばれたライ・サーベルズは、他にも選ばれた五人の勇者とパーティーを組んでいた。 ところが、勇者達の実略は凄まじく、ライでは到底敵う相手ではなかった。 「おい雑魚、これを持っていけ」 ライがそう言われるのは日常茶飯事であり、荷物持ちや雑用などをさせられる始末だ。 ある日、洞窟に六人でいると、ライがきっかけで他の勇者の怒りを買ってしまう。  怒りが頂点に達した他の勇者は、胸ぐらを掴まれた後壁に投げつけた。 いつものことだと、流して終わりにしようと思っていた。  だがなんと、邪魔なライを始末してしまおうと話が進んでしまい、次々に攻撃を仕掛けられることとなった。 ハーシュはライを守ろうとするが、他の勇者に気絶させられてしまう。 勇者達は、ただ痛ぶるように攻撃を加えていき、瀕死の状態で洞窟に置いていってしまった。 自分の弱さを呪い、本当に死を覚悟した瞬間、視界に突如文字が現れてスキル《神族召喚》と書かれていた。 今頃そんなスキル手を入れてどうするんだと、心の中でつぶやくライ。 だが、死ぬ記念に使ってやろうじゃないかと考え、スキルを発動した。 その時だった。 目の前が眩く光り出し、気付けば一人の女が立っていた。 その女は、瀕死状態のライを最も簡単に回復させ、ライの命を救って。 ライはそのあと、その女が神達を統一する三大神の一人であることを知った。 そして、このスキルを発動すれば神を自由に召喚出来るらしく、他の三大神も召喚するがうまく進むわけもなく......。 これは、雑魚と呼ばれ続けた勇者が、強き勇者へとなる物語である。 ※小説家になろうにて掲載中

~唯一王の成り上がり~ 外れスキル「精霊王」の俺、パーティーを首になった瞬間スキルが開花、Sランク冒険者へと成り上がり、英雄となる

静内燕
ファンタジー
【カクヨムコン最終選考進出】 【複数サイトでランキング入り】 追放された主人公フライがその能力を覚醒させ、成り上がりっていく物語 主人公フライ。 仲間たちがスキルを開花させ、パーティーがSランクまで昇華していく中、彼が与えられたスキルは「精霊王」という伝説上の生き物にしか対象にできない使用用途が限られた外れスキルだった。 フライはダンジョンの案内役や、料理、周囲の加護、荷物持ちなど、あらゆる雑用を喜んでこなしていた。 外れスキルの自分でも、仲間達の役に立てるからと。 しかしその奮闘ぶりは、恵まれたスキルを持つ仲間たちからは認められず、毎日のように不当な扱いを受ける日々。 そしてとうとうダンジョンの中でパーティーからの追放を宣告されてしまう。 「お前みたいなゴミの変わりはいくらでもいる」 最後のクエストのダンジョンの主は、今までと比較にならないほど強く、歯が立たない敵だった。 仲間たちは我先に逃亡、残ったのはフライ一人だけ。 そこでダンジョンの主は告げる、あなたのスキルを待っていた。と──。 そして不遇だったスキルがようやく開花し、最強の冒険者へとのし上がっていく。 一方、裏方で支えていたフライがいなくなったパーティーたちが没落していく物語。 イラスト 卯月凪沙様より

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

大器晩成エンチャンター~Sランク冒険者パーティから追放されてしまったが、追放後の成長度合いが凄くて世界最強になる

遠野紫
ファンタジー
「な、なんでだよ……今まで一緒に頑張って来たろ……?」 「頑張って来たのは俺たちだよ……お前はお荷物だ。サザン、お前にはパーティから抜けてもらう」 S級冒険者パーティのエンチャンターであるサザンは或る時、パーティリーダーから追放を言い渡されてしまう。 村の仲良し四人で結成したパーティだったが、サザンだけはなぜか実力が伸びなかったのだ。他のメンバーに追いつくために日々努力を重ねたサザンだったが結局報われることは無く追放されてしまった。 しかしサザンはレアスキル『大器晩成』を持っていたため、ある時突然その強さが解放されたのだった。 とてつもない成長率を手にしたサザンの最強エンチャンターへの道が今始まる。

(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います

しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。

外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~

空月そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」 「何てことなの……」 「全く期待はずれだ」 私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。 このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。 そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。 だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。 そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。 そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど? 私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。 私は最高の仲間と最強を目指すから。

処理中です...