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第49話 決勝戦の1時間前
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ゲルドン杯格闘トーナメントの決勝戦の日がやってきた。
色んなことがあったけど、俺──ゼント・ラージェントは、最強最大の敵、セバスチャンと闘う。
試合開始は15時30分。後1時間で試合開始だ。
花道の奥から、スタジアムをのぞいた。ライザーン中央スタジアムは満員の観客だ。今や、ゲルドン杯格闘トーナメント決勝戦は、国民的な大注目イベントとなっている。
全王国国民が注目し、全王国国民が話題にする……!
(すげえなあ……緊張してきた)
俺が控え室に帰ろうとした時、廊下で誰かとすれ違った。
ズウウンッ……。何か邪悪な雰囲気を感じる。……こ、この感じ! まさか!
俺は恐る恐る振り返った。
「おや? 君は……! ゼント君じゃないか」
──あっ! 俺は思わず声を上げてしまった。
セバスチャン!
彼はどうやら、スタジアムの外を軽く走ってきたらしい。少し汗をかいている。
「楽しみだなあ! 今日の決勝戦……ゼント君、君と闘えるなんて!」
うっ、うおおっ……! セバスチャンの全身を包む、灰色の禍々しいオーラに、俺は一歩後退した。邪悪……! まさにこの言葉でしか言い表せない!
シュッ
セバスチャンは腕を突き出してきた。パンチか!
俺はそれを片手で受け止めた。こ、この野郎……! 試合前だぞ……!
「セバスチャン……お前……やるのか……!」
「いやいや、武闘家がやる挨拶ですよ。拳と拳を合わせましょう」
セバスチャンは笑顔で言ったが、俺は拒否することにした。
「そんな挨拶はしないね。なぜなら、今から一時間後には、俺があんたを叩きのめしているからだ!」
「ほほう! 面白い!」
セバスチャンはまるで悪魔のように笑った。セバスチャンの不気味なオーラが、また大きくなりやがった……! 本当に悪魔に魂を売ってるんじゃないのか、こいつ!
「叩きのめす? 私をですか?」
セバスチャンは、「ハッハッハ」と高笑いした。
「ゼント君、冗談を言っちゃいけない。私に勝とうなど、10年早い。今の君の実力では」
挑発か? 心理戦か? それとも本音で言っているのか……?
「……どうでもいいけど、アシュリーに何かしたら、ただじゃすまさないぞ」
俺はそう言ってセバスチャンをにらみつけた。セバスチャンはニヤけ、拳をポキポキ鳴らしはじめた。
グッ……
俺は少しだけ身構えだ。重心を心持ち、前にかける。
「……アシュリー? 何のことやら?」
セバスチャンは薄ら笑いを浮かべている。
俺はゲルドンから聞いた言葉が忘れられなかった。
(セバスチャンとアレキダロスは、アシュリーに対して、何かを企んでいる気がしてならねえ)
ゲルドンの言葉を思い出している俺を見て、セバスチャンは言った。
「君は何か勘違いをしているようだ。私はアシュリーの実の父親だよ? 私が彼女に何をしたって構わない。そうでしょう? ゼント君」
「て……てめえ!」
俺は嫌な予感がした。こいつ……本気で、アシュリーに何かしようとしている?
「では、1時間後、リング上で会いましょう!」
セバスチャンは高笑いしながら行ってしまった。
俺は急いで控え室に戻った。ローフェン、ミランダさん、エルサがいてくれた。
「父親ならアシュリーに何をしてもいい──確かにセバスチャンはそう言ったのね?」
ミランダさんが神妙な顔で言った。
「ああ、言いましたよ! セバスチャン、あいつは危険だ!」
俺は声を荒げた。
「……私、アシュリーのことを王立警察に相談したのよ。だけど、取り合ってもらえなかったわ」
ミランダさんは神妙な顔でつぶやいた。
「ど、どうしてです?」とローフェンが聞いた。
「事件が実際に起こっていない、というせいもあるけど。セバスチャンは武闘家連盟会長であり、国王親衛隊長の息子であるということもあるわ。偉すぎて王立警察でも、彼に手出しできないのよ」
「お、俺たちでアシュリーを守るしかないってことか」
ローフェンはつぶやくように言った。
ミランダさんの話によると、セバスチャンの助言者のアレキダロスが、こんな不気味なことを言っていたという。
(セバスチャンと我々は、どんな手段を使ってでも勝ちにいきます。たとえば私たちは、あなたたちの大切な人に何をするか分かりません。──お気をつけくださいね──)
「大切な人」とは──今の時点では分からないが、サーガ族の血液成分を多く持つ、アシュリーが一番該当する。セバスチャンやアレキダロスたちが、アシュリーの身柄を狙っている可能性がある!
俺はアシュリーを心配して、エルサに言った。
「アシュリーは大丈夫なのか? 今日、スタジアムに観に来るっていってたけど」
エルサはうなずいた。
「だから今日は、アシュリーに護衛をつけたのよ。見に行く?」
アシュリーに護衛~? だ、誰だよ? 俺は首を傾げた。
俺たち四人は控え室から出て、アシュリーを探した。スタジアムの売店の前に、15歳くらいの少女が、周囲をキョロキョロしながら立っている。アシュリーだ。
「アシュリー!」
俺はアシュリーに声をかけた。
「もう! 困ります!」
アシュリーは叫んだ。二人の男を引き連れている。その二人が護衛ってヤツか? その二人は……ええ? まさか!
その二人の男とは……大勇者ゲルドン! そしてゲルドンの息子、ゼボールだった。
「俺に任せろ! アシュリーを守るぜ」
ゲルドンは息子と肩を組んで声を上げた。ゼボールも、「ゼントさん、お久しぶりッス」と頭を下げた。
アシュリーの護衛って……お、お前たちかよ~……!
アシュリーはぶんむくれていた。そして俺に小声で言った。
(も~……。ゲルドンさんって、ママの不倫相手でしょ? ゼボールさんは、その息子さん。何で私の護衛なの?)
俺はエルサを見た。エルサは、「大丈夫よ」と言った。うーん……。
「俺は考えを改めたんだ」
ゲルドンは頭をかきながらそう言った。
「信じてもらえないかもしれないが、これからは、人のために生きることにしたんだ」
俺はミランダさんを見た。ミランダさんはフフッと笑っている。まさかの了承済み!
──その時!
「どけや!」
後ろから太い声がした。後ろを振り返ると──。
(ううっ……こいつ!)
赤い肌に、頭に赤い一本角!
こいつが大魔導士アレキダロスとやらと一緒に、ミランダさんとの会談に来たという、赤鬼か! 黒いスーツを着ているから間違いない! で、でかい。ゲルドンよりでかいんじゃないか?
「お前がゼントか……やるのか? 俺と」
赤鬼はニヤリと笑い、拳を体の前にやり、身構えた。
ギチリ──そんな音が聞こえたようだった。
(くっ!)
俺もあわてて、身構える。こ、こいつと……ここで、一戦交えるのか? セバスチャンとの試合前に?
「やめなさい!」
ミランダさんが注意した。
「試合前に、無益な闘いはゆるさないわよ! ゼントも、拳を下ろしなさい!」
「そうだぜ~」
赤鬼はニヤニヤ笑って、俺を見やった。
「俺は、今からセバスチャン先生の控え室に行くだけだ。セバスチャン先生の関係者だからな。ああ、別にお前たちに何かをするってわけじゃないぜ? じゃーな」
赤鬼はすました顔で、俺たちの横を素通りした。
しかし! その時、赤鬼は──チラリとアシュリーの顔を見た! 間違いない、アシュリーの顔を確認したのだ!
赤鬼は素早くそのまま、向こうへ行ってしまった。
「ミ、ミランダさん、あいつ、ヤバいですよ! 嫌な予感がする」
俺は声を上げた。
「ミランダさん、どうしたらいいの? ゼントの言う通り、あの赤鬼……何か企んでる」
エルサがミランダさんに言うと、ミランダさんはうなずいた。
「あいつ、アシュリーの顔を確認してたわね」
ミランダさんもそれに気付いたようだった。
「……アシュリーは、決勝戦の試合前まで、関係者用個室で隔離──いいわね? ローフェン、ゲルドン、ゼボール、いいわね? ゼントは控え室で、セバスチャンの戦術のおさらいよ」
俺たちはうなずいた。エルサはアシュリーを抱き寄せた。
「大丈夫よ、皆が守ってくれる」
エルサが言うと、アシュリーは深くうなずいた。
「皆、力を合わせましょう! 右手を出しなさい!」
俺たちは、円陣を組んで、右手を出して合わせた。ミランダさんが声を上げる。
「さあ、今日はセバスチャンに勝ち、アシュリーを守り切るわよ!」
「おお!」
俺も、エルサも、ローフェン、ゲルドン、ゼボールも、皆、声を上げた。
俺たちは、アシュリーを守りつつ、最大最強の相手、セバスチャンに戦いをいどまなければならない!
色んなことがあったけど、俺──ゼント・ラージェントは、最強最大の敵、セバスチャンと闘う。
試合開始は15時30分。後1時間で試合開始だ。
花道の奥から、スタジアムをのぞいた。ライザーン中央スタジアムは満員の観客だ。今や、ゲルドン杯格闘トーナメント決勝戦は、国民的な大注目イベントとなっている。
全王国国民が注目し、全王国国民が話題にする……!
(すげえなあ……緊張してきた)
俺が控え室に帰ろうとした時、廊下で誰かとすれ違った。
ズウウンッ……。何か邪悪な雰囲気を感じる。……こ、この感じ! まさか!
俺は恐る恐る振り返った。
「おや? 君は……! ゼント君じゃないか」
──あっ! 俺は思わず声を上げてしまった。
セバスチャン!
彼はどうやら、スタジアムの外を軽く走ってきたらしい。少し汗をかいている。
「楽しみだなあ! 今日の決勝戦……ゼント君、君と闘えるなんて!」
うっ、うおおっ……! セバスチャンの全身を包む、灰色の禍々しいオーラに、俺は一歩後退した。邪悪……! まさにこの言葉でしか言い表せない!
シュッ
セバスチャンは腕を突き出してきた。パンチか!
俺はそれを片手で受け止めた。こ、この野郎……! 試合前だぞ……!
「セバスチャン……お前……やるのか……!」
「いやいや、武闘家がやる挨拶ですよ。拳と拳を合わせましょう」
セバスチャンは笑顔で言ったが、俺は拒否することにした。
「そんな挨拶はしないね。なぜなら、今から一時間後には、俺があんたを叩きのめしているからだ!」
「ほほう! 面白い!」
セバスチャンはまるで悪魔のように笑った。セバスチャンの不気味なオーラが、また大きくなりやがった……! 本当に悪魔に魂を売ってるんじゃないのか、こいつ!
「叩きのめす? 私をですか?」
セバスチャンは、「ハッハッハ」と高笑いした。
「ゼント君、冗談を言っちゃいけない。私に勝とうなど、10年早い。今の君の実力では」
挑発か? 心理戦か? それとも本音で言っているのか……?
「……どうでもいいけど、アシュリーに何かしたら、ただじゃすまさないぞ」
俺はそう言ってセバスチャンをにらみつけた。セバスチャンはニヤけ、拳をポキポキ鳴らしはじめた。
グッ……
俺は少しだけ身構えだ。重心を心持ち、前にかける。
「……アシュリー? 何のことやら?」
セバスチャンは薄ら笑いを浮かべている。
俺はゲルドンから聞いた言葉が忘れられなかった。
(セバスチャンとアレキダロスは、アシュリーに対して、何かを企んでいる気がしてならねえ)
ゲルドンの言葉を思い出している俺を見て、セバスチャンは言った。
「君は何か勘違いをしているようだ。私はアシュリーの実の父親だよ? 私が彼女に何をしたって構わない。そうでしょう? ゼント君」
「て……てめえ!」
俺は嫌な予感がした。こいつ……本気で、アシュリーに何かしようとしている?
「では、1時間後、リング上で会いましょう!」
セバスチャンは高笑いしながら行ってしまった。
俺は急いで控え室に戻った。ローフェン、ミランダさん、エルサがいてくれた。
「父親ならアシュリーに何をしてもいい──確かにセバスチャンはそう言ったのね?」
ミランダさんが神妙な顔で言った。
「ああ、言いましたよ! セバスチャン、あいつは危険だ!」
俺は声を荒げた。
「……私、アシュリーのことを王立警察に相談したのよ。だけど、取り合ってもらえなかったわ」
ミランダさんは神妙な顔でつぶやいた。
「ど、どうしてです?」とローフェンが聞いた。
「事件が実際に起こっていない、というせいもあるけど。セバスチャンは武闘家連盟会長であり、国王親衛隊長の息子であるということもあるわ。偉すぎて王立警察でも、彼に手出しできないのよ」
「お、俺たちでアシュリーを守るしかないってことか」
ローフェンはつぶやくように言った。
ミランダさんの話によると、セバスチャンの助言者のアレキダロスが、こんな不気味なことを言っていたという。
(セバスチャンと我々は、どんな手段を使ってでも勝ちにいきます。たとえば私たちは、あなたたちの大切な人に何をするか分かりません。──お気をつけくださいね──)
「大切な人」とは──今の時点では分からないが、サーガ族の血液成分を多く持つ、アシュリーが一番該当する。セバスチャンやアレキダロスたちが、アシュリーの身柄を狙っている可能性がある!
俺はアシュリーを心配して、エルサに言った。
「アシュリーは大丈夫なのか? 今日、スタジアムに観に来るっていってたけど」
エルサはうなずいた。
「だから今日は、アシュリーに護衛をつけたのよ。見に行く?」
アシュリーに護衛~? だ、誰だよ? 俺は首を傾げた。
俺たち四人は控え室から出て、アシュリーを探した。スタジアムの売店の前に、15歳くらいの少女が、周囲をキョロキョロしながら立っている。アシュリーだ。
「アシュリー!」
俺はアシュリーに声をかけた。
「もう! 困ります!」
アシュリーは叫んだ。二人の男を引き連れている。その二人が護衛ってヤツか? その二人は……ええ? まさか!
その二人の男とは……大勇者ゲルドン! そしてゲルドンの息子、ゼボールだった。
「俺に任せろ! アシュリーを守るぜ」
ゲルドンは息子と肩を組んで声を上げた。ゼボールも、「ゼントさん、お久しぶりッス」と頭を下げた。
アシュリーの護衛って……お、お前たちかよ~……!
アシュリーはぶんむくれていた。そして俺に小声で言った。
(も~……。ゲルドンさんって、ママの不倫相手でしょ? ゼボールさんは、その息子さん。何で私の護衛なの?)
俺はエルサを見た。エルサは、「大丈夫よ」と言った。うーん……。
「俺は考えを改めたんだ」
ゲルドンは頭をかきながらそう言った。
「信じてもらえないかもしれないが、これからは、人のために生きることにしたんだ」
俺はミランダさんを見た。ミランダさんはフフッと笑っている。まさかの了承済み!
──その時!
「どけや!」
後ろから太い声がした。後ろを振り返ると──。
(ううっ……こいつ!)
赤い肌に、頭に赤い一本角!
こいつが大魔導士アレキダロスとやらと一緒に、ミランダさんとの会談に来たという、赤鬼か! 黒いスーツを着ているから間違いない! で、でかい。ゲルドンよりでかいんじゃないか?
「お前がゼントか……やるのか? 俺と」
赤鬼はニヤリと笑い、拳を体の前にやり、身構えた。
ギチリ──そんな音が聞こえたようだった。
(くっ!)
俺もあわてて、身構える。こ、こいつと……ここで、一戦交えるのか? セバスチャンとの試合前に?
「やめなさい!」
ミランダさんが注意した。
「試合前に、無益な闘いはゆるさないわよ! ゼントも、拳を下ろしなさい!」
「そうだぜ~」
赤鬼はニヤニヤ笑って、俺を見やった。
「俺は、今からセバスチャン先生の控え室に行くだけだ。セバスチャン先生の関係者だからな。ああ、別にお前たちに何かをするってわけじゃないぜ? じゃーな」
赤鬼はすました顔で、俺たちの横を素通りした。
しかし! その時、赤鬼は──チラリとアシュリーの顔を見た! 間違いない、アシュリーの顔を確認したのだ!
赤鬼は素早くそのまま、向こうへ行ってしまった。
「ミ、ミランダさん、あいつ、ヤバいですよ! 嫌な予感がする」
俺は声を上げた。
「ミランダさん、どうしたらいいの? ゼントの言う通り、あの赤鬼……何か企んでる」
エルサがミランダさんに言うと、ミランダさんはうなずいた。
「あいつ、アシュリーの顔を確認してたわね」
ミランダさんもそれに気付いたようだった。
「……アシュリーは、決勝戦の試合前まで、関係者用個室で隔離──いいわね? ローフェン、ゲルドン、ゼボール、いいわね? ゼントは控え室で、セバスチャンの戦術のおさらいよ」
俺たちはうなずいた。エルサはアシュリーを抱き寄せた。
「大丈夫よ、皆が守ってくれる」
エルサが言うと、アシュリーは深くうなずいた。
「皆、力を合わせましょう! 右手を出しなさい!」
俺たちは、円陣を組んで、右手を出して合わせた。ミランダさんが声を上げる。
「さあ、今日はセバスチャンに勝ち、アシュリーを守り切るわよ!」
「おお!」
俺も、エルサも、ローフェン、ゲルドン、ゼボールも、皆、声を上げた。
俺たちは、アシュリーを守りつつ、最大最強の相手、セバスチャンに戦いをいどまなければならない!
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