2 / 2
第2話 缶詰を開けたら周囲は海だった
しおりを挟む
私は缶詰を開けた。
目の前にはなぜか、海が広がっていた。
ザザザ……。潮の香り、音、完全な海だ。灰色の海が――青色と言いたいところだが――正面に広がっている。
砂浜には、ゴロゴロとしたゴミと、貝殻が落ちていた。
私はおもむろに貝殻を拾い上げた。
どんな貝殻だったかはご想像にお任せしたいが、美しい貝殻だった。
私は貝殻を耳に当てた。ゴー……という音がした。
記憶――ここは確かに記憶の中にある海だった。小さい頃来たことのある海だったのだろうか。
後ろを振り返ると、ぼろぼろの古いローブをまとった男が、フラフラと近づいてきた。彼の手にはたくさんの貝殻を入れた袋があった。彼は袋から貝殻を出すと、それを砂浜にまいているのだ。
私は不思議に思って彼に話しかけた。
「なぜ、そんなことをしているのですか?」
「なぜって?」
「貝殻をまいているじゃないですか」
「だって、砂浜には貝殻があるものだろう」
「それはそうですけど」
私は首を傾げながら質問を続けた。
「でも――じゃあ、この砂浜には貝殻がもともとなかったんですか」
「その通り。貝殻はおろか、魚もいやしないよ。この海は単なる海なんだ。海水。単に海水のたまっている海さ」
男は貝殻をまき続けている。
私は納得しながら、不思議がりながら、彼のその一所懸命な姿を見ていた。
砂浜を歩いていると、「おや」と思った。砂浜から離れた奥の方の場所に、木々や花など、緑が生い茂っている公園が見えたのだ。
私は嬉しくなった。自然を見ると落ち着く性分なのだ。
私は海岸から離れ、そちらに行ってみた。
公園には誰もいなかった。
その代わり、公園の奥には、大きい近代的な建物の美術館がある。
その美術館は全面ガラス張りで、中央の吹き抜けから巨木が突き抜けていた。
巨大なこんもりとした生い茂った葉が、建物を覆っていた。私はこの美術館を美しいと思った。
近づいて入場券の売店を探したが、それらしいものは見当たらない。
この美術館はどうも無料らしい。私は喜び勇んで、美術館に入っていった。
美術館の中には、たくさんの壷や、彫像、絵画、岩などが展示されていた。
絵画はどれも抽象的で、色彩は色とりどりで美しいが、つかみどころがない絵ばかりだ。
壺にいたっては、クネクネとしたいやらしい感じの不気味なものばかりで、とても花を飾ってはおけないだろうという代物だ。
彫像はまるで知らない人物をモデルにしたものばかり。
ひげを生やした人物、メガネをかけた人物、巨大な耳をした人物――。
無造作に展示されている岩は、そのまま山かどこかに落ちている岩を持ってきた感じだ。
しかし、その岩の一つには、誰かの手で文字が刻まれていた。
「夢 水 光」
私はしばしその文字に見とれていた。なんだか不思議に美しい文字列だったからだ。
さて、私は右横に地下一階の階段を見つけた。
そこには、まるでスフィンクスのような巨大な動物が寝そべっている像があった。その像はまばゆいくらい美しい金色だ。
どうやら、全身純金で出来ているらしい。
しかも、像の周囲はゆらゆらと動いて見える! スフィンクスらしき像は、私に語りかけた。
「どこへ行く、青年よ」
私はとっさに答えた。
「私の行きたいところまで」
「そうか、じゃあ、行くがいい」
スフィンクスらしき像は、正面の扉を指差した。私はさそわれるように、扉に近付いて、扉を開け、扉の奥を進んだ。
そこはもとの電気街の入り口だった。
静かな、静かな街だ。人の気配もない。
しかし、私は一つだけ前と違うことに気付いた。この街の街並みがずいぶん違っている。
建物の配置も前と違っていた。
私の探した電気店も無くなってしまったようだ。探しても見つからなかった。
しかし、私はどこかでその不思議な電気店を、また見つけるだろう。きっとどこかの街で――。
目の前にはなぜか、海が広がっていた。
ザザザ……。潮の香り、音、完全な海だ。灰色の海が――青色と言いたいところだが――正面に広がっている。
砂浜には、ゴロゴロとしたゴミと、貝殻が落ちていた。
私はおもむろに貝殻を拾い上げた。
どんな貝殻だったかはご想像にお任せしたいが、美しい貝殻だった。
私は貝殻を耳に当てた。ゴー……という音がした。
記憶――ここは確かに記憶の中にある海だった。小さい頃来たことのある海だったのだろうか。
後ろを振り返ると、ぼろぼろの古いローブをまとった男が、フラフラと近づいてきた。彼の手にはたくさんの貝殻を入れた袋があった。彼は袋から貝殻を出すと、それを砂浜にまいているのだ。
私は不思議に思って彼に話しかけた。
「なぜ、そんなことをしているのですか?」
「なぜって?」
「貝殻をまいているじゃないですか」
「だって、砂浜には貝殻があるものだろう」
「それはそうですけど」
私は首を傾げながら質問を続けた。
「でも――じゃあ、この砂浜には貝殻がもともとなかったんですか」
「その通り。貝殻はおろか、魚もいやしないよ。この海は単なる海なんだ。海水。単に海水のたまっている海さ」
男は貝殻をまき続けている。
私は納得しながら、不思議がりながら、彼のその一所懸命な姿を見ていた。
砂浜を歩いていると、「おや」と思った。砂浜から離れた奥の方の場所に、木々や花など、緑が生い茂っている公園が見えたのだ。
私は嬉しくなった。自然を見ると落ち着く性分なのだ。
私は海岸から離れ、そちらに行ってみた。
公園には誰もいなかった。
その代わり、公園の奥には、大きい近代的な建物の美術館がある。
その美術館は全面ガラス張りで、中央の吹き抜けから巨木が突き抜けていた。
巨大なこんもりとした生い茂った葉が、建物を覆っていた。私はこの美術館を美しいと思った。
近づいて入場券の売店を探したが、それらしいものは見当たらない。
この美術館はどうも無料らしい。私は喜び勇んで、美術館に入っていった。
美術館の中には、たくさんの壷や、彫像、絵画、岩などが展示されていた。
絵画はどれも抽象的で、色彩は色とりどりで美しいが、つかみどころがない絵ばかりだ。
壺にいたっては、クネクネとしたいやらしい感じの不気味なものばかりで、とても花を飾ってはおけないだろうという代物だ。
彫像はまるで知らない人物をモデルにしたものばかり。
ひげを生やした人物、メガネをかけた人物、巨大な耳をした人物――。
無造作に展示されている岩は、そのまま山かどこかに落ちている岩を持ってきた感じだ。
しかし、その岩の一つには、誰かの手で文字が刻まれていた。
「夢 水 光」
私はしばしその文字に見とれていた。なんだか不思議に美しい文字列だったからだ。
さて、私は右横に地下一階の階段を見つけた。
そこには、まるでスフィンクスのような巨大な動物が寝そべっている像があった。その像はまばゆいくらい美しい金色だ。
どうやら、全身純金で出来ているらしい。
しかも、像の周囲はゆらゆらと動いて見える! スフィンクスらしき像は、私に語りかけた。
「どこへ行く、青年よ」
私はとっさに答えた。
「私の行きたいところまで」
「そうか、じゃあ、行くがいい」
スフィンクスらしき像は、正面の扉を指差した。私はさそわれるように、扉に近付いて、扉を開け、扉の奥を進んだ。
そこはもとの電気街の入り口だった。
静かな、静かな街だ。人の気配もない。
しかし、私は一つだけ前と違うことに気付いた。この街の街並みがずいぶん違っている。
建物の配置も前と違っていた。
私の探した電気店も無くなってしまったようだ。探しても見つからなかった。
しかし、私はどこかでその不思議な電気店を、また見つけるだろう。きっとどこかの街で――。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
三十年後に届いた白い手紙
RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。
彼は最後まで、何も語らなかった。
その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。
戴冠舞踏会の夜。
公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。
それは復讐でも、告発でもない。
三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、
「渡されなかった約束」のための手紙だった。
沈黙のまま命を捨てた男と、
三十年、ただ待ち続けた女。
そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。
これは、
遅れて届いた手紙が、
人生と運命を静かに書き換えていく物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
婚約者が聖女を選ぶことくらい分かっていたので、先に婚約破棄します。
黒蜜きな粉
恋愛
魔王討伐を終え、王都に凱旋した英雄たち。
その中心には、異世界から来た聖女と、彼女に寄り添う王太子の姿があった。
王太子の婚約者として壇上に立ちながらも、私は自分が選ばれない側だと理解していた。
だから、泣かない。縋らない。
私は自分から婚約破棄を願い出る。
選ばれなかった人生を終わらせるために。
そして、私自身の人生を始めるために。
短いお話です。
※第19回恋愛小説大賞にエントリーしております。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる