魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫

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幼少期

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次の日__

シェフたちの視線をよそに自分の朝ご飯をさっさと済ませてしまうとリュカの元へと向かった。
もちろんカチコミに行くためである。


怒りを込めて思い切りドアをノックしようと、こぶしを振り上げたそのとき…

「馬鹿なんじゃないの?こんなのもわからないなんて恥ずかしくないの?」

リュカの部屋から罵声が聞こえたのだ。

なんというか…リュカが俺に言う暴言と似ている。

初めて聞くその声にビビりながら野次馬根性でそっと中を覗くと、そこには机に向かい座るリュカの背中とその隣で金切り声をあげながら、暴言を吐く女がいた。茶髪の髪を後ろでひとくくりにしている。
年は20代後半くらいか?
リュカについている家庭教師だ。

とてもではないが子供に聞かせるような暴言の数々を叫ぶ女にさすがに可哀想になってきた。
大きな声に使用人たちも寄ってきて心配そうに見ているが誰も動こうとはしない。

チッ、と舌打ちして、薄く開いていた扉を開けた。
これでも中身は立派な大人。子供がいじめられてるとあっちゃあ黙ってはいられない。


リュカの部屋に入り、内側からドアをゴンゴンと鳴らしてやった。
手が痛い。

俺の存在に気づいていなかった二人はそろってこちらを向いた。
二人は目を丸くして固まっていたが、すぐに女の方が動いた。

「あなた!どこの子!何よその髪は!出来損ないのクズね!ここがどこだか分かっているの?!さっさと出ていきなさい」

なんて叫んできた。
おい、まさかの俺の事知らんのかい。
だが、ヘイトがこちらに向いたようだ。

「シ、シルヴァ?」

おお、初めてリュカの口から俺の名前が。
今までは、「おい」だの「お前」だの呼ばれていたので、てっきり名前を知らないのかと思っていたのだけど…どうやら違うようだ。

「昨日ぶりですね、兄上。あまりにも大きな声が聞こえたものですから」
にっこり笑って存外に外まで声が漏れてるぞ、と非難の目を女に向ける。

「シルヴァ!…私が間違えたんだ」

俺を一睨みした後、自分の非だというリュカに呆れてしまう。いつもの威勢はどうしたんだ。
まるで借りてきた猫である。
そういう態度だから、相手がつけあがるのだ。

問題を大きくしたくないのだろうな。
だが、残念だったな。俺はリュカに怒っているし嫌いである。
あんたの思い通りに動いてやるもんか。


それに…子供同士の喧嘩ならまだしもこの女は教師の立場を利用して、リュカをいじめていると見た。
13歳の兄でも俺からしてみればまだまだ子供。
そんな子供にこの女は何をしているんだ。

「はっ、兄上ですって?そう、あんたが落ちこぼれのシルヴァね。伯爵様もおかわいそうに、リュカ様がいるとしても次男がこれではねぇ。伯爵様も苦労なさるわ」


先ほどの威勢はどこへやら、猫なで声でリュカの肩を触る女に俺はうへと舌を出す。

おい、それセクハラだぞ。
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