魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫

文字の大きさ
9 / 38
幼少期

しおりを挟む
「ところでお姉さん。あなたはどこの誰なんでしょう?すみません。世間知らずなもので。伯爵家の長男である兄上にそこまで偉そうに言えるんですから、伯爵の上、侯爵かそのまた上の公爵の位をお持ちなのでしょう?」

「っ、なによ落ちこぼれのくせに。あたしを馬鹿にしてるの」
怒りで顔を歪める女に煽るように笑う。
「いえいえ、そんな。私はただ、あなたの爵位は何ですか、と聞いているだけです」
権力を笠に着るような真似はしたくないが、こういうプライドが高そうなやつには一番効果がある。

まあ、俺だって、この女が上の爵位だったらこんな博打に出ないさ。
本当にこの女が公爵とかだったらな。
が、俺はこの女が伯爵の友人である男爵の長女だって知っている。
引きこもりの情報網なめんなよ。使用人が言っているのを聞いたんだ。男爵のくせにリュカ様に酷いことを、と。

「僕、世間知らずなのでわからないのですが、ここでは随分と大きな顔をしているようで。父上はご存じなのかな?男爵の貴方が、伯爵の兄上に暴言を吐いていることを」

わざとらしく“男爵”を強調して、こてんと、首をかしげて見せる。
先ほどより顔が赤くなっている。
おお、おお、タコにでもなるつもりかよ。

「っ、話したいなら、話せばいいわ。あんたの言うことなんか伯爵様が聞いてくれるかしら。そもそも、リュカ様が悪いのよ。何度言っても理解しないのがね。伯爵様の息子のくせにどうしてここまで出来が悪いのかしら」

ふふん、と得意げに言っているが、誰も俺が言うなんて言ってねえよ?

「大丈夫です。お伝えするのは私ではなく、兄上なので」

リュカがえ、みたいな顔をしているが無視だ、無視。
「それに…あなたの大きな声を聞いている方も大勢いるみたいなので」
何のために扉を開けたままにしたと思ってるんだ。
ほら、と扉の外を指さす。

扉の向こうには使用人が5人ほどと…おおう伯爵までいらっしゃる。久しぶりに見たな。
「父上!」
「伯爵様!」

二人の声が同時に響き、使用人たちが慌てたように伯爵に道を開けた。
さすがに騒ぎすぎたらしい。

「リリア。君のお父上とは昔からの友達だったため、君を特別に買っていたが、どうやら間違いだったようだな」


「ま、お待ちください。伯爵様。これは、これは違うのです!その子供がっ!」

「黙れ、罪に問われたくなければすぐに出て行け」

さすが、伯爵。一瞬で解決したな。そもそもお前の見る目がないせいだけどな。
ぎゃあぎゃあ騒ぐ彼女を見もせず、使用人に連れていくよう命じている。
おお怖い。


さて、邪魔者の俺は退散しますかね。
唖然としたように俺を見るリュカを横目に、伯爵にスッと頭を下げ部屋を出た。
相変わらず、伯爵の目に俺は写っていないようだ。


いや~いいことしたわ!
これで、ちょっとは俺の待遇よくなんねえかな。

自室に戻りながら、はたと立ち止まる。
…そういや、何しに行ったんだっけ。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

平凡な俺が完璧なお兄様に執着されてます

クズねこ
BL
いつもは目も合わせてくれないのにある時だけ異様に甘えてくるお兄様と義理の弟の話。 『次期公爵家当主』『皇太子様の右腕』そんなふうに言われているのは俺の義理のお兄様である。 何をするにも完璧で、なんでも片手間にやってしまうそんなお兄様に執着されるお話。 BLでヤンデレものです。 第13回BL大賞に応募中です。ぜひ、応援よろしくお願いします! 週一 更新予定  ときどきプラスで更新します!

魔王様の執着から逃れたいっ!

クズねこ
BL
「孤独をわかってくれるのは君だけなんだ、死ぬまで一緒にいようね」 魔王様に執着されて俺の普通の生活は終わりを迎えた。いつからこの魔王城にいるかわからない。ずっと外に出させてもらってないんだよね 俺がいれば魔王様は安心して楽しく生活が送れる。俺さえ我慢すれば大丈夫なんだ‥‥‥でも、自由になりたい 魔王様に縛られず、また自由な生活がしたい。 他の人と話すだけでその人は罰を与えられ、生活も制限される。そんな生活は苦しい。心が壊れそう だから、心が壊れてしまう前に逃げ出さなくてはいけないの でも、最近思うんだよね。魔王様のことあんまり考えてなかったって。 あの頃は、魔王様から逃げ出すことしか考えてなかった。 ずっと、執着されて辛かったのは本当だけど、もう少し魔王様のこと考えられたんじゃないかな? はじめは、魔王様の愛を受け入れられず苦しんでいたユキ。自由を求めてある人の家にお世話になります。 魔王様と離れて自由を手に入れたユキは魔王様のことを思い返し、もう少し魔王様の気持ちをわかってあげればよかったかな? と言う気持ちが湧いてきます。 次に魔王様に会った時、ユキは魔王様の愛を受け入れるのでしょうか?  それとも受け入れずに他の人のところへ行ってしまうのでしょうか? 三角関係が繰り広げる執着BLストーリーをぜひ、お楽しみください。 誰と一緒になって欲しい など思ってくださりましたら、感想で待ってますっ 『面白い』『好きっ』と、思われましたら、♡やお気に入り登録をしていただけると嬉しいですっ 第一章 魔王様の執着から逃れたいっ 連載中❗️ 第二章 自由を求めてお世話になりますっ 第三章 魔王様に見つかりますっ 第四章 ハッピーエンドを目指しますっ 週一更新! 日曜日に更新しますっ!

結婚初夜に相手が舌打ちして寝室出て行こうとした

BL
十数年間続いた王国と帝国の戦争の終結と和平の形として、元敵国の皇帝と結婚することになったカイル。 実家にはもう帰ってくるなと言われるし、結婚相手は心底嫌そうに舌打ちしてくるし、マジ最悪ってところから始まる話。 オメガバースでオメガの立場が低い世界 こんなあらすじとタイトルですが、主人公が可哀そうって感じは全然ないです 強くたくましくメンタルがオリハルコンな主人公です 主人公は耐える我慢する許す許容するということがあんまり出来ない人間です 倫理観もちょっと薄いです というか、他人の事を自分と同じ人間だと思ってない部分があります ※この主人公は受けです

うちの家族が過保護すぎるので不良になろうと思います。

春雨
BL
前世を思い出した俺。 外の世界を知りたい俺は過保護な親兄弟から自由を求めるために逃げまくるけど失敗しまくる話。 愛が重すぎて俺どうすればいい?? もう不良になっちゃおうか! 少しおばかな主人公とそれを溺愛する家族にお付き合い頂けたらと思います。 説明は初めの方に詰め込んでます。 えろは作者の気分…多分おいおい入ってきます。 初投稿ですので矛盾や誤字脱字見逃している所があると思いますが暖かい目で見守って頂けたら幸いです。 ※(ある日)が付いている話はサイドストーリーのようなもので作者がただ書いてみたかった話を書いていますので飛ばして頂いても大丈夫だと……思います(?) ※度々言い回しや誤字の修正などが入りますが内容に影響はないです。 もし内容に影響を及ぼす場合はその都度報告致します。 なるべく全ての感想に返信させていただいてます。 感想とてもとても嬉しいです、いつもありがとうございます! 5/25 お久しぶりです。 書ける環境になりそうなので少しずつ更新していきます。

ただのカフェ店員はカリスマ社長に執着される

クズねこ
BL
「他の客に笑うな。俺だけにして」 俺は、小さなカフェで店員をしている。そのには毎日常連客が訪れる。それはカリスマ社長である一ノ瀬玲央だ。玲央はなぜかただのカフェ店員の俺に執着してくる。 でも、だんだんとカフェ店員と客だけの関係じゃなくなっていって……? だんだんと距離が近くなっていく執着BL。 週一更新予定です。

モブなのに執着系ヤンデレ美形の友達にいつの間にか、なってしまっていた

マルン円
BL
執着系ヤンデレ美形×鈍感平凡主人公。全4話のサクッと読めるBL短編です(タイトルを変えました)。 主人公は妹がしていた乙女ゲームの世界に転生し、今はロニーとして地味な高校生活を送っている。内気なロニーが気軽に学校で話せる友達は同級生のエドだけで、ロニーとエドはいっしょにいることが多かった。 しかし、ロニーはある日、髪をばっさり切ってイメチェンしたエドを見て、エドがヒロインに執着しまくるメインキャラの一人だったことを思い出す。 平凡な生活を送りたいロニーは、これからヒロインのことを好きになるであろうエドとは距離を置こうと決意する。 タイトルを変えました。 前のタイトルは、「モブなのに、いつのまにかヒロインに執着しまくるキャラの友達になってしまっていた」です。 急に変えてしまい、すみません。  

推しの完璧超人お兄様になっちゃった

紫 もくれん
BL
『君の心臓にたどりつけたら』というゲーム。体が弱くて一生の大半をベットの上で過ごした僕が命を賭けてやり込んだゲーム。 そのクラウス・フォン・シルヴェスターという推しの大好きな完璧超人兄貴に成り代わってしまった。 ずっと好きで好きでたまらなかった推し。その推しに好かれるためならなんだってできるよ。 そんなBLゲーム世界で生きる僕のお話。

超絶美形な悪役として生まれ変わりました

みるきぃ
BL
転生したのは人気アニメの序盤で消える超絶美形の悪役でした。

処理中です...