魔王の息子を育てることになった俺の話

お鮫

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青年期

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――8年後
結果的に俺はステラのお願いを聞いた。

18歳になった俺は、今日家を出る。
すがすがしい晴天の中、荷物を持って玄関に立つ。
「今までお世話になりました。母上、兄上、ステラ。それとロット君も」
4人に向かってペコリと頭を下げる。

「シルヴァちゃんっ!寂しくなったら帰ってきてもいいのよ」

嬉しいけど、無理だろ。
抱き着いてきそうな勢いに笑いながら「母上も、お元気で」と返す。
ハグできないのが残念だな。

「シルヴァ、僕ももっと一緒にいたかったよ。行くところは決まっていると母上に聞いたが教えてはくれないのか?」
「僕も教えたいところですが諸事情でちょっと…会えたら会いましょう、いつか」
行けたら行く、みたいなもんである。

「シルヴァ様、よろしくお願いしますね」
任せとけ!一度引き受けたのだから約束を違えることはしないさ。

「シルヴァ様、やっとお別れ…寂しいです」
嘘つけ。満面の笑みで言いやがって。
ロット君に関してはどうせ会えるので言いたいことは後程、な。

そうして、伯爵家…のすぐ横の別荘を後にした。

伯爵家じゃないのかって?
実は、俺はあの後、そのまま母上と過ごすことになった。
数日後に伯爵が乗り込んできたが母上がぴしゃりと言い返すと、しずしず帰っていった。
なんて言ったのかとても気になる。

俺が伯爵家にいなくなるとなぜかリュカがこっちに来た。
そうなると必然的にロット君もついてくる。
誰かにここに来ることを見られていたんだろうか。


リュカが来たときは大騒ぎだった。

母上との何年かぶりの再会だったからな。
ずっと床に伏せていたと思っていた母上が元気に出迎えてきたのだからそりゃあ驚くだろう。
泣く兄上を見てそっとロット君に目配せを…おい感動して泣いてんじゃねえよ。
ロット君にドン引きながらそっと近づく。
そっと同じだけ離れるロット君。
それを繰り返すこと数回。やっと二人の感動シーンの見えないところまでロット君を移動させることに成功した。

ロット君が何か文句を言っていた気がしたが無視である。


伯爵家はほとんど、伯爵がただ仕事から帰って一夜を過ごすだけの家になっており使用人たちも手持ち無沙汰な様子らしい。
ざまあ。


あっちにいた方が長かったのに、ここの方が断然充実していてあっという間だった。

だって、俺にきつく当たる人はいないし。
ロット君を除いて。

俺を馬鹿にするやつもいないし。
ロット君を除いて。

とても快適な8年間だった。


勘違いしないでほしいのだが、俺は別にロット君のことは嫌いではない。
からかい要員だからな。
陰口をたたくなら目の前で言ってくれよ、と思うタイプなのでロット君のように真正面から言ってくれるのはありがたいのだ。
なんたって、返り討ちにできるし。

さすがに長年、俺へのイラつきを出しているとリュカにもバレたのか、俺に「大丈夫か?後で言っておくから」などと心配されたのだが、笑って大丈夫だと返しておいた。

仕返しは欠かさないのである。
何か言われたときには屋敷の中をロット君と追いかけっこしていた。
もちろん、鬼は常に俺である。
俺にタッチされればたちまち魔力を取られるのだからロット君も必死だ。

お互い手は抜かないので何度か俺が勝ったこともある。
その時には、遠慮なくタッチした。
一瞬だけどな。倒れたりでもしたら面倒だし。

だというのに、今日までやめないのだから俺をいじめないと死ぬ呪いにでもかかっているのだろう。

まあ、おかげで体力はついたし、身長も昔より伸びた。
今では160センチある。170には届かないが、まだ諦めてはいないぞ。これから伸びる予定なのだ。


ちなみにあの日のロット君と兄上の記憶は本当に書き換えられているようで二人の関係性は依然と全く変わらない。
だが、俺の記憶にはしっかりと残っている。
8年前、ロット君が二人に魔法をかけ、裏切ったことを。
ああ、伯爵はどうでもいいけど。

ロット君、君笑っていたけど今生の別れじゃないからな。
後で、しっかりお話しような?

「ロット君、また会える時が楽しみだよ」
そう別れ際にいうと、不思議そうな顔をされた。
哀れ、ロット君。
ステラに事前情報は聞いているのでロット君のプライバシーなどすでにないも同然なのだ。



最後だというのに、伯爵の姿はなかった。

今日で親子の縁は完全に切れるのだから見納めしたかったのだが…まあいいか。

というわけで…
「お世話になりました!!」

屋敷に向かってもう一度頭を下げる。

さあ、新しい人生の幕開けだ!
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